WetMarchen 第12.6夜 白雪姫 「ふふふ……うふふふふ……あははははっ!! 翌日――魔女はこみ上げてくる笑いを抑えきれずにいました。秘密の部屋に向かう足取りも軽く、鼻歌まで飛び出します。 なんといっても、白雪姫を二度と出てくることのできない深い森の奥に置き去りにしてやった... 2009.08.02 WetMarchen
WetMarchen 第12.3夜 白雪姫 その部屋は、お城の中でも一番高い塔にある秘密の場所でした。滅多に人の立ち入ることのないそこに、小さな足音が響いていきます。「……さあ。……鏡よ、鏡」 こつ、こつ、こつ、と石畳の床を鳴らして響く、かかとの高い靴の足音。それに答えるように、部屋... 2009.08.02 WetMarchen
小説 雨の日のバスの話 降り続く雨は、このまま夜まで止みそうにない。 薄黄色のレインコートの裾を揺らし、長靴がちゃぷ、と脚元の水たまりを跳ねさせ、結局憂鬱なお天気のまま終わってしまった日曜日に、茜は小さく口を尖らせる。手にぶら下がった傘はデパートを出てきたときのま... 2009.08.02 小説
小説 買い物帰りの話。 賑やかな大通りから一本、道を入ると、たちまち喧騒は遠ざかってゆく。 植え込みと赤レンガで舗装された歩道は途切れ、真新しいアスファルトが規則正しく碁盤目のように続く清潔な佇まいの一角は、まだ開発の続く新興の住宅地だ。 昨今の不景気で開発が遅れ... 2009.07.27 小説
小説 プールと水着の話。 梅雨明けの青空、燦々と降り注ぐ陽射しをいっぱいに浴びて、賑やかな声が揺れる水面に響き、歓声とともに水飛沫が上がる。夏休みを目前にして最後のプールの授業は、2時間続きの大盤振る舞いとなっていた。 騒がしいクラスメイトたちの笑顔につられて、残念... 2009.07.27 小説
永久我慢 永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜11 いまは3時間目の授業だろうか。もう、ほとんど何も聞こえていない。 膨らんだ尿意が静菜の体の全部を占領して、頭の中まで膨らみきってしまったかのようで、まともな思考能力は追い出されてしまっている。耳元でちゃぷちゃぷと揺れる水音の幻聴すら響く。 ... 2009.06.13 永久我慢
小説 車の後部座席の話。 どこまでも続く終わらない渋滞の中、車内にはけだるい空気が満ちていた。3回目のリピートを繰り返すCDアルバムの歌声は、初めの頃に比べてかなり色あせて聞えてしまう。 連休最終日の帰郷ラッシュによって、高架の上の3車線を何十キロ先までも続くテール... 2009.06.13 小説
小説 ビアホール?のお話 某特区の「今日の○○」の“おかわりのジョッキ3杯ぐらいならもう溜まってる”というフレーズに触発されて書いたもの。「ねー、もうこっち空っぽだよー、はやく追加おねがーい」 空になったジョッキを掲げて、8番テーブルから声が上がる。とはいえそれに答... 2009.05.09 小説
小説 テストのお話・6 『――以上で リスニングの 問題の 放送を 終わります』 ぷつ、と切れるスピーカー。 それと同時に、サツキは震える手を上げていた。オシッコに濡れた手のひらは、スカートにぐりぐりとねじつけて拭いている。 『おんなのこ』を覆うじゅぅんと湿った下... 2009.05.07 小説
小説 テストのお話・5 答案用紙が配られ、チャイムと共に一斉に問題用紙をめくる音が響く。クラスメイトたちが悩みながら解答欄を埋めてゆく中、サツキはひとり、問題用紙を伏せたままだった。 やや前傾になった上半身は机の上にかぶさり、放り出されたままのシャープペンシルと消... 2009.05.07 小説