小説

テストのお話・4

無常にも時計の針は、それまでと変わらない速度で進み、淡々と時刻を刻む。 2時間目の試験終了を告げるチャイムが鳴り響き、監督の教師が重々しく宣言すると、クラスの何人かから大きな溜息や悲鳴が上がった。 予想よりも問題は難しく、最後まできちんと問...
WetMarchen

第11夜 赤ずきん

「じゃあママ、行ってくるわね」 お気に入りの赤いフードつきのコートを羽織り、手には大きなバスケット。とんとんと靴のかかとを叩いて、赤ずきんは元気に言いました。「ええ、いってらっしゃい。森の中ではオオカミには気をつけるのよ」「平気よ、オオカミ...
小説

テストのお話・3

(ほーんと、ちゃんと全部飲んでるなんて、馬鹿ねぇサツキってば) 立ち尽くしていたところを教師に注意され、のろのろと自分の席に戻るサツキの背中を見ながら、チエリはほくそ笑む。 あんなにごくごく飲んだら、あっというまにおなかの中はたぷたぷだろう...
小説

テストのお話・2

しんと静かな教室に響くのは、シャーペンが跳ねる音。消しゴムが踊る音、熱の篭った溜息、がりがりと頭を掻く音、かつかつと答案用紙を叩くペン尻の音。 期末試験最難関と噂される3日目の一時限目、その敵陣の先鋒となった現国のテストは、常よりもさらに増...
小説

テストのお話・1

時計の針は8時14分。いつもと変わらぬクラスメイトが集う教室は、まもなく始まる朝のホームルームを前に、いつにないざわめきをみせていた。 いつも時間ぎりぎりまで練習をしているソフトボール部も、遅刻常習犯の最前列の生徒たちも。普段なら見ない顔ぶ...
小ネタ

謎の競技の話。

最初は女の子たちが謎の状況でくじ引きでトイレの順番待ちをしてるってだけの妙なシチュエーションを書くだけの予定が,だんだん変な方向に。 そこは大きな、まるで体育館のような部屋だった。 屋外ではないことは、空を覆う天井と、小さな窓から夜空が覗い...
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春休みの話

暦の上では春とは言っても、まだ幾分寒さの残る風が吹き付け、商店街を行く人々の間を駆け抜けて行く。あいにくと曇り空の下、雨の気配を感じた店の人が傘立てや雨除けを引き出し、夕方からの下り坂の天気に備えていた。 そんな雑踏の中を進む、ポニーテール...
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倉庫とビニール袋の話・4

「まだなの……!? もうっ……どこ、行っちゃったのよぉ……っ」 苛立ちながら、美智佳は赤くなった顔をごしごしと擦る。 少年が立ち去ってから、どれくらい経ったのだろう。もう何時間も前のように感じられていたが、相変わらず日は高く、地面に落ちる影...
小説

倉庫とビニール袋の話・3

とうとう、倉庫の真ん中で我慢しきれずにおしっこをしてしまい、美智佳はその事実にすっかり打ちのめされてしまった。 女の子としてありえない行いに、美智佳は情けなさと恥かしさでばらばらになりそうで、唇をぎゅっと噛み締めて涙をこらえる。 と、不意に...
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倉庫とビニール袋の話・2

(はぁ……っ) アキの足音が遠く響く子供達の喧騒に紛れて聞こえなくなり、美智佳は大きく息を吐く。 一時はどうなることかと思っていたおチビリはどうにか止まっていた。……いや、あるいは我慢できない分を、全部漏らしてしまったのかもしれない。オモラ...