小説 倉庫とビニール袋の話・1 「もーぉいーぃかーいっ!?」「まーだだよぉーっ!!」 はしゃぐ子供達の小さな声が、窓の向こうへ遠ざかってゆく。汗ばんだTシャツの裾をつまんでぱたぱたと風を送りながら、美智佳はぽすんと積み重ねられた園芸肥料の袋の上に腰掛ける。 目鼻立ちの整っ... 2009.03.25 小説
永久我慢 永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜10 チャイムが鳴った。 二つ目の授業が終わり、休み時間の始まりとなる。 時刻は10時過ぎ――静菜が登校して2時間が経過していた。 教師がドアを閉め退室すると、教室は一気に騒がしくなる。持ってきた雑誌を広げて放課後の予定を立てる者、携帯を広げてメ... 2009.03.15 永久我慢
小説 公爵令嬢のお話・4 (が、我慢――がまん、しなきゃ――) 御者の青年に従いながら、もどかしい足取りでよちよちと歩く公爵令嬢が抱えていたのは、哀れにも、悲壮な決意だった。 見えない敵から、乙女の貞操を守るために、緊張に強張る足は大きく内股となり、腰はアヒルのよう... 2009.03.15 小説
小説 公爵令嬢のお話・3 (な――なに、これ) 呆然と、リミエルは声にならない声でつぶやく。 そこは、おおよそリミエルの考えられ得るどんな汚い場所よりも、醜悪に汚れていた。 四方を粗末な板で囲まれ、藁をふいただけの屋根の下は、恐ろしいほどの悪臭に満ちていた。地面はむ... 2009.03.15 小説
小説 公爵令嬢のお話・2 ふらふらと当てもなくさ迷っていたリミエルが、森の中に小さな広場を見つけたのはそのすぐ後だった。力の入らない足を引きずって馬車に戻ろうとしていたとき、少女の耳は調子はずれな歌を聞きつけたのである。「あ、あれは……?」 そこは、木々を切り倒して... 2009.03.15 小説
小説 トイレの多い子の話。 事故による渋滞に巻き込まれ、高速の料金所の前でうごけなくなったワンボックスの中。羽田霧香は、3人の友人達と共にかつてない窮地に立たされていた。 ワンボックスには霧香の友人である4人のクラスメイトと、運転手兼保護者役の親友の姉、三佳子が乗って... 2009.01.01 小説
WetMarchen 第10夜 ピーター・パン 「よぉーしウェンディ、今日は何をして遊ぼうか。かくれんぼはこのまえやったし、鬼ごっこも飽きたなぁ。またフック船長でもからかってこようか?」 満天輝く星空の下、今日もピーターはご機嫌でした。今日は一体どんな楽しい遊びをしてやろうかと、いたずら... 2008.12.31 WetMarchen
ノーション 霧沢学院・3 『オシッコをしない女の子』――ノーションの楽園である霧沢学院の3年生が活気付き始めるのは、夏休みも過ぎた9月半ば。暑い盛りが過ぎて空が澄み渡り、夕焼けが空に映える秋口の頃だ。 夏季休暇を終え、学期末試験の終わった学院では、中等部の3年間を通... 2008.12.31 ノーション
小説 サンタクロースの話。 「っ、つ、次は……っ」 白くて大きな袋が、雪の積もった煙突からにゅいっと突き出した。深い夜空の下に、白い息がほうっと吐き出され、続いてほんのり赤く染まったほっぺたの少女が屋根の上に姿を現す。 屋根の上の新雪を踏みながら、赤と白の衣装をまとっ... 2008.12.31 小説
小説 みんなのお手洗い:バケツ編 「……っ、その、ごめん、私、……トイレっ!!」 少女の小さな、けれど我慢の限界をまざまざと知らせる切羽詰った叫びは、締めきられたバスの中に響く。 足元を庇うようなふらふらとおぼつかない足取りで、バスの後部座席を覆うカーテンへと向かう彼女を、... 2008.12.12 小説