小説

夏休みの我慢の話。(塾帰り編)

8月の陽射しは、正午を回ってよりいっそう鋭い。肌を差すようにかあっと照りつけるぎらぎらの太陽に、焼けたアスファルトからはうっすらと陽炎が立ち昇っている。 まるで、鉄板焼きの具になった気分。 塾の玄関を出た途端、ぶわっと汗が吹き出てくる。とた...
永久我慢

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜7

「…………」 ごろん、と寝返りを打ち、静菜はすっかり暖まってしまった枕に頬を押しつける。 できるだけ下腹部に負担が掛からない仰向けの姿勢から、身体を横にしたせいで、ぞわぞわっとお尻の上あたりを鈍い痺れが通り抜けてゆく。(ぅ……) ちらり、と...
永久我慢

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜6

当初の予定の帰り道を大きく迂回し、二つ先の交差点と歩道橋を回って、静菜はどうにか大通り側の公園へと辿り着く。 この公園は前の学校通学路の帰り道だったこともあり、静菜も昔はよく遊びに来ていたものだ。ジャングルジム、砂場、鉄棒、シーソー、滑り台...
小ネタ

プールの日の順番待ち。

我慢の仕草のバリエーションを工夫してみる試み。「うぁ……すっごい並んでるっ……」 トイレの前にずらりと並ぶ紺色の水着姿に、ミノリは思わずつぶやいてしまった。 給食の用意をはじめる、4時間目終了のチャイムまであと3分という時間、更衣室横のトイ...
小説

夏休みの我慢の話。(図書館編)

「……暑い……」 言ってみたところで仕方がないが、それでも口にせずにはいられない。図書館を出てほんの数分で、冷房に慣れていた身体はあっという間に悲鳴を上げていた。 夏休みに入ったばかりの通学路は、いつものような賑わいとは無縁に、通りがかる人...
小説

なかなかできない料理店

雲よりも高い山の上、険しい山道。 ひんやりと霧の深くたちこめた岩だらけの道を、ふたり連れの女の子が歩いていました。ふんわりとしたつややかな髪に、曇りのない目をした、整った顔立ちの女の子たちでした。透けるように白い肌や柔らかそうな手のひら、ふ...
小説

携帯を買う話。

従姉妹のお姉さんであるエリさんと、その話になったのは単なる偶然みたいなものだった。テレビのニュースで、最近の若者のマナーを問う内容が放送され、その中で往来での携帯端末を使うことの問題が取り上げられていた。 私がたまたま、携帯を持っていないこ...
WetMarchen

第8夜 ジェニーと豆の木

昔々、あるところにジェニーという女の子がいました。 ジェニーは両親の顔を知りません。ふたりともジェニーが産まれてすぐに死んでしまったのです。お父さんとお母さんの代わりに、親戚の夫婦がジェニーを引きとって育ててくれていたのですが、この夫婦はた...
永久我慢

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜5

「あら、どうしたの、静菜?」「あ、うん……その、ちょっと……」 玄関に下りて靴を履こうとしていた静菜を見とがめて、母親がリビングから顔を出した。最初は10時過ぎの時計の文字盤を見上げ夜遊びとは何事かと表情を厳しくしていたものの、そわそわと落...
永久我慢

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜4

トイレが使えない。 オシッコが、できない。 その二つは普通、等号で結ばれるものではない。けれど家のトイレ以外でオシッコをすることのできない静菜は、世界でたったひとつのトイレ=“オシッコのできる場所”を失い、年頃の少女にとってあまりにも過酷な...