第13夜 白雪姫

「――大変だ、スノウの様子がおかしいよ!」
「どうしたんだいスノウ、息も荒いし、顔も真っ赤じゃないか!!」
 小人たちの声が、森の中に響き渡ります。
 ここは、お城からも離れた森の奥深く。七人の小人と白雪姫が仲良く暮らす、小さな小さな一軒家です。
「ねえスノウ、大丈夫かい? いったいなにがあったんだい!?」
「スノウ、苦しいの? ねえ、返事をしておくれよ!!」
「ねえ、スノウ、スノウったら!! ああ、しっかりしてくれ、スノウ!!」
 俯いたまま座り込み、いくら呼びかけても答えてくれず、じっと動かなくなってしまった白雪姫の周りで、小人たちはおろおろと慌て、右往左往してめったやたらにあたりを走り回ります。
 『――鏡よ鏡、この世で一番うつくしい女の子はだあれ?』
 『それは魔女様、あなたさまにございます』
 だれよりも高慢で、尊大で、ことあるごとに自分の美しさを誇っていた悪い魔女は、当然のようにこの国のお姫様には自分がなるべきだと思っていました。
 魔法と謀略によってお城を乗っ取り、女王となった後も、魔女は毎日のように魔法の鏡に“この世で一番うつくしい女の子”は誰なのかを訪ねては、返ってくる答えに悦に入っていたのです。
 けれど、白雪姫が12歳の誕生日を迎え、立派なお姫様の仲間入りをしたことで、魔法の鏡は魔女の問いかけに白雪姫の名前を挙げるようになりました。
 嘘をつかない魔法の鏡の答えに激怒した魔女は、狩人に命じて白雪姫を森の中に連れ込み、殺すように言いつけたのです。
 『――鏡よ鏡、この世で一番うつくしい女の子はだあれ?』
 『それは、白雪姫様にございます』
 悪い魔女の企みによってお城を追われた白雪姫ですが、狩人の情けで命までは奪われず、森をさまよっていたところを運良く七人の小人たちに助けらることになりました。白雪姫は、それ以来この一軒家で、賑やかな小人たちと慎ましくもささやかな暮らしをしていたのでした。
 けれど、魔女は、いつまで経っても魔法の鏡の答えが変わらないことに、白雪姫が生きていることに気付いてしまったのでした。
 お城から追放されてなお、優しく、うつくしく、気品あるお姫様でいつづける白雪姫に激しい嫉妬を抱いた魔女は、リンゴ売りのおばあさんに化け、白雪姫の前に現れたのでした。
「スノウ、ねえスノウったら、どうしたんだい!! どこか苦しいのかい!? ねえお願いだ、返事をしてスノウ!!」
「熱があるのかい? 寒いのかい? そんなに汗をびっしょりかいて……震えているじゃないか!!」
「スノウ、だれかがきたのかい? あの狩人かい? ほんとうになにがあったんだい……!!」
 小人たちの住む一軒家の近くの広場で、うずくまり、動かなくなってしまった白雪姫を囲んで、七人の小人たちは必死に彼女を案じていました。
 くちぐちに声を上げ、せわしなく飛び回っては白雪姫のドレスの裾や腕をひっぱって名前を呼ぶ小人たちですが、白雪姫はそれに答えてやることはできませんでした。ただただ、か細くも荒い息を繰り返しながら、手足を小さく丸めて震えるばかりです。
 すべては、魔女が盛った秘薬のせいなのです。
「ん……? なあみんな、ちょっと見てくれ、こいつをどう思う!!」
 小人の一人が、白雪姫の足元に転がっていた空のコップを見つけて叫びました。そのコップは、小人たちが食事に使っている木のコップとはまるで違う、美しい銀細工のほどこされた高価そうな品でした。
 まるで、お城の食卓に並ぶのがふさわしい見たこともないコップに、小人たちは揃って首を傾げます。
「おかしいじゃないか!! ぼくたちが見たこともない、こんな立派なものがなんでここに落ちているんだい? 誰か知っているのはいないか?」
 小人たちのなかに、それに答えられるものは居ませんでした。
 それもそのはず、このコップはもともとお城にあったもので、魔女が持ち出してきたものなのです。
 小人たちの一人が言いました。
「……なあ、これはひょっとして、あの魔女がやってきたんじゃないのか?」
「そうか、スノウをねらってきたんだな?」
「ああそうだ、きっとこれは魔女の仕業だよ。この前の脱げない下帯みたいに、スノウに悪さをしたに違いない!!」
 ぐるっと輪になって空のコップを抱え、小人たちはもったいぶって中を覗き込みます。
「そうだ、きっとこのコップに毒が入っていたんだ。そのせいでスノウは動けなくなってしまったんだ!!」
「そんな。それっておおごとじゃないか!!」
「どうしよう、スノウは死んでしまうのかい!?」
「なんてこった、こんな森まで魔女が来ることなんてないと思ってたのに!!」
 小人たちは口々に不安がり、いまなお動かない白雪姫の周りで騒ぎ続けます。
 そんな中、白雪姫はただじっと、白い頬を赤く染め、深く俯いてぎゅっと歯を噛み締めて、はあ、ふぅ、と荒い息をついていました。
「スノウ、ねえスノウったら!! しっかりするんだ!!」
(あぁ……っ)
 忙しく周りを走り回る小人たちの真ん中で、白雪姫は小さく身を縮こまらせます。形の良い桜色のくちびるはきゅっ、と閉じられ、長いまつげの青い瞳は伏せられ、美しい黒髪は汗の浮かぶうなじに張り付いています。
「スノウ、毒なんかに負けるんじゃない!! 気をしっかり持つんだ!!」
(っ、だ、だめ!! ゆ、揺すらないでっ……)
 身を案じ、肩を掴んで強く揺する小人たちを、白雪姫は肩を振ってはね退けようとしてしまいます。
 小人たちが心配してくれることは嬉しいのですが、いまの白雪姫にはそうやって騒がれること自体が、あまりにありがた迷惑でした。
(お、お願いですから、放っておいて……ください……ぃっ)
「スノウ、ああスノウ……くそう魔女め、本当にひどいことをするもんだ!!」
「まったくだよ、ああスノウ、死んじゃあだめだ、答えておくれスノウ!!」
 騒ぎ回る小人たちに、白雪姫はやはり答えられません。
 口を開くこともできないほど真っ赤になって、白雪姫は小さく身をよじります。
 ドレスの手袋に包まれたちいさな手のひらはぎゅうっとスカートの間に挟まれ、寄せ合わされた膝の奥、脚の付け根を押さえこんでいます。荒い息とともにその手のひらにはぎゅうっ、ぎゅうっと力が篭められ、地面の上でもじもじと擦り合わされる膝が、ぴくんぴくんと硬直を繰り返します。
 ただでさえお姫様失格の恥ずかしい格好をしているのに、その上さらに周りを囲まれてはしゃぎたてられては、声をあげることも難しいほどでした。
「スノウ、死んだりしちゃだめだ!! ねえ、スノウったら!!」
 白雪姫が毒のせいで息もできなくなっていると信じ込んでいる小人たちは、涙ながらに訴えます。けれど小人たちがそうすればするほど、白雪姫はますます小さく縮こまるばかりでした。
(ち、違うの……っ、違うんですっ……)
 ぎゅっと脚を閉じあわせ、ぷるぷると俯いたまま、白雪姫は一歩も動けません。すこしでも身じろぎしようものなら、なんとか保たれている均衡がたちまち破れ、身体の内側からの圧力に屈しててしまいそうなのです。
 そう、白雪姫のおなかの中の秘密のティーポットには、まるで音を立てんばかりにこぽこぽと、後から後から激しい勢いで恥ずかしいホット・レモンティーが注ぎ込まれているのでした。
(ぅ、あぅ……っ、だ、だめ……お、お手洗いにっ……はやくっ……)
 すでにティーポットをいっぱいにして、なお溢れんばかりに湧き上がってくるホット・レモンティーは、白雪姫の下腹部にずっしりと重くのしかかり、いまやドレスの上からでも分かるほどに小さなおなかを膨らませています。
 もうとっくに限界を超えていると言うのに、いまなおどんどんとその量を増しているのでした。
 これもすべて、魔女が差し出した特製のリンゴジュースの効き目によるものでした。魔女が大釜で三日三晩煮込んでつくった秘薬は、ほんの一口で何度もトイレに往復しなければならないほどの、恐ろしいまでのもの効果を持っていたのです。
(あ、あ、ぁ、あっ)
 ぎゅうぅ、と握り締めたスカートの奥で、いけないところがじわ、じわと緩み、白い下着に黄色い染みがひろがっていきます。同時にじぃんと響く甘い痺れに、白雪姫は目の前が真っ白になってしまいます。
 脚の付け根にじんわり広がる熱い感触。下着の布地をたっぷりと濡らし、おしりの方へと広がるほどにおチビリはもう何度も繰り返されており、白雪姫のドレスの下はすっかりお姫様失格のぐしゃぐしゃに濡れていました。
 『――鏡よ鏡、この世で一番うつくしい女の子はだあれ?』
 そうです。魔女が思いついたのは、白雪姫にオモラシをさせ、女の子失格にしてしまうことなのでした。きちんとお手洗いにもいけないようなみっともない女の子が、この世で一番うつくしい女の子であるはずがない、というわけでした。
 魔女の特性リンゴジュースの効き目はすさまじく、必死の我慢にもかかわらず、白雪姫の身体は、もう何度も何度もおチビリを繰り返し、勝手にこのままおしっこを出し始めようとしています。
 それでもなんとか、白雪姫は、人前でのオモラシという最大の辱めを避けるため、最後の最後で懸命に押し寄せるおしっこを押しとどめていました。
(は、はやく……お手洗いに……っ)
 ふつうの村娘ならばともかく、お姫様がこんなお外で、気軽におしっこを済ませてしまうというわけには、もちろんいきません。一刻も早くトイレに駆け込んで用を済ませなければなりませんでした。
(お願い……ちょっとだけ、ちょっとだけでいいんです、お、おさまって……ください……っ!!)
 もはや白雪姫には、そうやって祈るほかありません。
 けれど、押し寄せる尿意の波はすさまじく、一時たりとておさまる様子もありません。震える脚はうずくまって身体を支えているのが精一杯で、歩くことはおろか立つことすらとても無理なのです。
「スノウ!! 苦しいのかい、辛いのかい!? しっかりするんだスノウっ!!」
(っ……だ、だめっ、離して、お願いですからぁ……っ)
 白雪姫は、自分の身を案じてすがりつく小人たちが、いまは邪魔で邪魔で、鬱陶しくて仕方がありません。
 本当は思う存分腰を揺すっておしりをモジ付かせ、ありったけの力でぎゅうぎゅうと脚の付け根、おしっこの出口を握り締めてしまいたいのです。
 そうしなければ我慢できないほどの熱い液体が、今もおなかの中で渦巻いてるのですが、白雪姫にはそれを訴えて小人たちを追い払うこともできませんでした。我慢のための意識を抜いて、少しでも余計なことをすれば、そのままおしっこが出始めてしまいそうです。
(いやぁ……っ!!)
 また、閉じ合わせた脚の奥に、じわ、じわ、と熱い滴が広がる気配を感じ、白雪姫は小さくしゃくりあげました。
 もはや下着だけに留まらず、染みはドレスのスカートまであふれ出していました。押さえ込んだ手のひらの下、足の間に挟みこんだ部分から、ゆっくりと黄色い染みが濡れ広がりだしています。
 スカートをびちゃびちゃに汚し、脚に濡れ透けて張り付かせる、恥ずかしい熱水の奔流が、じゅん、じゅぅん、しゅるるっ、と音を響かせるたび、ぎゅうっと押さえ込んだ場所がぷくりと熱く膨らみ、手のひらに熱い湿り気が溢れてこぼれてゆきます。
 繊細なこころをずたずたにされてしまいながら、白雪姫はぎゅっと閉じていた目を小さく開け、そっと辺りを窺います。
「うぅ、スノウ……スノウ……っ」
 あまりにも深い絶望の中、唯一の救いは、騒ぎ疲れたのか、いくらやっても白雪姫が答えないことに諦めてしまったのか、小人たちはみな下を向いてしくしくと泣いていたことでしょうか。
 まだ、白雪姫の様子に気付いている小人はいないようでした。
 千載一遇のチャンスです。
(い、っ、今のうちに、お、お手洗い……っ!!)
 トイレは小人たちのすむ一軒家にしかないのですが、困ったことに、もともと小人たちが暮らすために建てられたものです。小人たちの身体に合わせて何もかもが小さく、それはトイレも例外ではありませんでした。いくら身体の小さな白雪姫でも、周りを汚さずに使うのはとても苦労するのです。
 けれど、贅沢は言っていられません。
 下を向いて肩を抱き、おいおいと泣いている小人たちに気付かれないよう、白雪姫は形振り構わずの我慢でなんとかおしっこをせき止めながら、そっと腰を持ち上げました。
(っ、は、っ、……んんぅうっ……っ!!)
 とたん、隙間なく、びりびりと猛烈な衝撃が下腹部に襲い掛かります。圧迫されたおなかが激しく震え、せり出したおしっこの容れ物が大きく膨らんで出口へと殺到しそうになります。ぐらぐらと沸き立つ秘密のティーポットが吹きこぼれそうに揺れ、またじゅぅ、じゅじゅっ、と脚の付け根にいけない水音が響きます。
 顔を赤くし、歯を食いしばり、荒い息で小鼻を膨らませ、白雪姫は猛烈なおしっこを必死に食い止めます。勝手にその場足踏みがはじまり、内腿はぎゅぎゅうっと交差をして、おしっこを塞き止めようとしました。
(っあ、ま、待ってっ、だ、だめ。出ちゃダメっ、だめえ!!)
 へっぴり腰の前傾姿勢、おまけにぎゅうっと両手で深くおしっこの出口を押さえ込んで、脚を広げたがに股。その姿は、両手で必死にぱんぱんに膨らんだおしっこの水風船を抱え込んでいるようなものです。
 それはとても人前に見せられるようなものではない、恥も外聞もないみっともない格好でした。足を上げることもままならず、ずずっ、ずずっとすり足で、白雪姫はどうにか小人たちの家に近付こうとします。
(うぁ、あっ、あ、あとちょっと、っちょっとだけっ!!)
 すり足になって内腿をびくびくと痙攣させ、おしりをくねくねと振りながら、白雪姫はまっすぐに小人たちの家を目指しました。
 耳まで赤くなりながら、激しく股間を握り締め揉みしだくその姿といったら、とてもではありませんが魔法の鏡が言ったようなこの世で一番うつくしい女の子のものとは思えません。
(っあ、あっあ、でるっ、でちゃう、オシッコでるぅううっ!!)
 またも押し寄せるおしっこの波が白雪姫を襲います。たまらず硬直する白雪姫は、じゅううぅ、と立ったままおチビリをしてしまいました。
 立ち尽くす白雪姫の脚を、つうぅ、つうっ、と黄色い水流が伝い、さらに地面にはぽたぽたと雫が飛び散ります。すでにすっかりお尻まで拡がる大きな染みを作っていた下着の奥では、小さなオシッコの出口がぷしゅ、ぷしゅと先走りを滲ませていました。
「……一体なんの騒ぎだい、これは」
 ふいに、聞き覚えのない声が、白雪姫の耳に聞こえたのは、まさにその時でした。
 どこからか現れた、白馬にまたがった立派な服の少年が、目を泣き腫らした小人の一人に話しかけていたのでした。
「ぐすっ……そういう、あんたは誰だい?」
「ああ、ボクは隣の国の王子さ。君たちは森の小人たちかい?」
「そうだとも。ぼくたちは七人の小人さ。……はっ、ねえ王子様、そんなことよりも聞いておくれよ! スノウが、白雪姫が大変なんだ!!」
「……白雪姫だって?」
 小人たちに促され、隣の国の王子は怪訝そうに声を上げて、辺りを見回します。
 白雪姫は、あまりのことに全身をかたく強張らせ、硬直させたままでいました。そう、まさに両脚の付け根を硬く握り締め、おしりを突き出し、まるで見せ付けるように王子様に背中を向けながら、じわ、じゅわ、とオモラシを始めているその格好のままで。
 首だけを震わせた白雪姫と、隣の国の王子様の、ぽかんとして丸くなった目が、ばっちりと合ってしまいます。
「し、白雪姫……?」
 まだ幼いながら、雪のようにうつくしいと評判の、この国のお姫様。女王の不敬をかって行方知れずになっているという、その白雪姫の、あられもない姿を目の当たりにして、隣の国の王子は、ぽかーんと口を明けてしまいます。
 なにしろ、ドレスのスカートの大半をオシッコで汚し、いまなおその場にしゃがみ込んでオモラシの続きをしようとしている、まさにその瞬間の格好なのです。
「っっ……!?!?」
 一方の白雪姫は、心臓が口から飛び出しそうになるほど驚いていました。
(な、なんでこんなところにっ……お、王子様がっ!?)
 顔は知らなくても、名前は知っています。男の子の目の前で、絶対にしてはならない格好でいる自分に気付くや否や、白雪姫はほとんど反射的に、下着をぐいぃぃっ、と結び紐が伸びきれてはちきれそうになるまで引っ張り上げ、あわてて気を付けをするように立ち上がります。
 けれど、出かけたおしっこはそんなことで止まるわけもありません。出口のすぐそこまでやってきていた熱い雫は、そのままじゅわ、じゅわわぁと、溢れだしてしまいます。
(ぁ、あっあ、あぁっ、いやぁ!!)
 脚の間を伝う熱い雫が水流となり、ひとすじふたすじと増え、下着を湿らせてあふれ出し、身をよじらせる白雪姫の足元にぱちゃぱちゃじゃばじゃばと音を立て始めます。
 白雪姫が身をよじって、たまらず駆け出そうとしたときでした。
 そのスカートが、脚が、肩が。小人たちに掴まれます。
 泣きはらしてぼやけた目のせいでそんな有様の白雪姫には気付けずに、小人たちは白雪姫を取り囲むようにして、王子様に訴えようとしたのでした。
「王子様、みてやっておくれ!! スノウは悪い魔女にジュースに混ぜた毒を飲まされて、動けなくなっちゃったんだ!!」
「ぼく達じゃどうやっても目を覚ましてくれなかったんだ!!」
「ねえお願いだよ、王子様!! スノウを助けておくれ!!」
 すっかり白雪姫が毒で動けなくなっているのだと信じ込んでいる小人たちは、中腰になってくねくねと我慢のダンスをはじめてしまったオモラシ寸前の白雪姫にはまるで気付かす、王子様のほうを見て、口々に叫びます。
「……え、ええと……」
 けれど王子様の目には、白雪姫はそんな小人たちの真ん中で、とうとう間に合わず、おしっこを漏らし始めてしまった女の子としか映りません。
「や、やぁあ……っみ、見ないでっ、ち、違うの、違うんですっ……」
 赤くなった目に涙を滲ませ、必死に首を振って身体をよじり、少しでも王子の視線から逃れようとして叫ぶ儚い少女。白雪姫は今にも消え入ってしまいそうに、白い肌を朱く染めて、か細い叫びを漏らします。
「ちょ、ちょっと、君!!」
「い、嫌っ、来ないでぇ!!」
 思わず一歩前に踏み出しかけた王子様に、白雪姫は声を張り上げます。
 そんなことをしたものですから、白雪姫の我慢の糸はぷつりと途切れてしまいました。
 白雪姫のドレスの内側から大きく広がった染みが、あっというまにスカートを重そうに濡れ湿らせて裾をぐしゅりと垂れさせ、足元に大きな水溜りが広がってゆきます。
 たっぷりとおしっこを吸って白い脚に張り付いたドレスのスカートのその奥。脚の付け根から吹き出した激しい水流が、たちまちのうちに白雪姫の下半身をずぶぬれにしてゆきました。
「ああ!! スノウっ!!」
「やった!! スノウが目を覚ましたぞ!!」
「すごい、すごいよ王子様!! ほら見てごらん、スノウの身体からどんどん毒が出て行くじゃないか!!」
 白雪姫の叫びを聞いて、小人たちは舞い上がって叫びました。小人たちは王子様がなにかをして、白雪姫が目を覚ましたと思ったのです。
 白雪姫のおしっこにひっかかり、身体がびちゃびちゃと濡れるのにもかかわらず、小人たちはくちぐちに喜びをあらわに、白雪姫を取り囲みます。
「はっ、離してっ、お願い小人さんっ、離してぇ……!!」
「スノウ、我慢しちゃダメだ、それは悪い毒なんだよ!! 残らず全部出してしまわなきゃ!!」
「そうだそうだ、身体に残っていると悪いことがあるかもしれないよ!!」
「魔女の飲ました毒なんて、全部絞り出してしまわなけりゃ!!」
「や、やぁあ!! だめ、やめてぇ!! っ、さ、触っちゃダメえ、ぜ、全部出ちゃう、ほんとに全部、でちゃうぅ!!」
 小人たちは大喜びしながら、白雪姫の身体に飛びついて、そこらじゅうをぐいぐいと押します。おなかを圧迫され、本当の勢いで始まったオシッコは、たちまちの内に白雪姫の下半身をドレスごとずぶ濡れに変え、さらに足元の地面を色濃く変えてゆきます。
「え、ええと……」
 王子様はすっかり置いてきぼりにされながら、この世で一番綺麗な女の子のオモラシから、ずっと目を離せずに居たのでした。
 この後、泣き出す白雪姫をなぐさめ、手を取り合って隣の国のお城へと戻った王子様は、悪い魔女をお仕置きするためにいろいろと奔走することになるのですが、それはまた別のお話。
 ……とりあえずは、めでたし、めでたし。
 (初出:おもらし特区 2009/08/01)

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