受験の朝の話

 空は、あいにくと薄曇り。お陽さまも雲の向こうに顔を隠し、冬の寒さをいっそう際立たせているかのよう。
 学校指定の制服の上から、コートとマフラー、黒のタイツ、それに親指以外がひとまとまりになったミトンの手袋を着け、真新しい雪の降り積もった白い道路の端を、河野未希は慎重に歩いていた。
「はぁ……っ」
 わずかに荒い息が、少女の口元を白く染める。
 昨夜のうちに降り止んだ雪は、塀の上にも5センチほど積もっている。もともと温暖で雪の少ないこの市では、雪なんて降ってもすぐ溶けてしまい、せいぜいが校庭や空き地をうっすらと覆う程度の泥混じりのものがほとんどだというのに、どういう具合か今年は珍しく2回も積雪が観測されていた。
 未希も、こんな雪はまるで記憶にない。
 まるで粉砂糖を振りかけたようにデコレーションされた町並みは、穢れなき純白に染まり、見慣れた光景をいつもの数倍は美しく彩っている。滅多にない冬の贈り物を実感しながら、晴れ間を待ってその雪景色を堪能するのもいいのかもしれない。
 しかし、それも時間の余裕があればのこと。外に出かけなければならない用事があれば、どんなに綺麗だろうと雪など邪魔なものでしかないし、それが一生を左右しかねない受験の当日ともなれば、事態はさらに深刻だった。
「…………もぅっ」
 積もった雪に足を取られそうになり、未希は思わず文句をこぼす。コートに手袋の重装備は、いつも使っている鞄をやけに重く感じさせた。
 受験生が滑るだなんて、縁起でもない。一面真っ白の道路を苦々しく眺め、未希はぐっと奥歯を噛み締める。
 朝からの雪になんとなく落ち込みそうになる心を奮い立たせ、未希は電車が運休になってはいないことを確認し、いつもより三十分ほど早く家を出た。
 だが。
 受験会場まではバスと電車を乗り継ぐ予定だったのだが、まず最初に辿り着いたバス停では10分待っても一向にバスがやって来ず、ようやく到着した車内はもう誰も乗れないくらいにぎゅうぎゅう詰めで、乗車待ちの列にいた人たちはは半分以上、次のバスを待たされる羽目になってしまったのだ。
「……なんなのよ、本当に……っ」
 半年以上も準備を続けてきた今日この日が、まさか会場にたどり着くのにも困難な一日になるなんて、不運にもほどがある。星占いなんか信じたこともない未希だが、今日ばかりは神頼みだってしたい気分った。
 とうとう痺れを切らした未希は、何人かの乗客たちと共にそのまま駅まで歩くことを決めた。駅までは15分も歩けば着くはずだが、しかし、馴染まない雪道は駅へ向かおうとする未希の足取りを重くするばかり。
「っ……」
 マフラーを巻いた首元にもしっかりと凍み込んでくる寒さに、吐き出した息は蒸気機関車のように白く冬の気配を染める。
 何年か前にスキーに行った時の雪用のブーツを引っ張り出してきたはいいものの、そもそもロクに雪の中を歩いた経験のない未希には、転ばないようにするので精一杯。いつもならほんの十数分で辿り付けるはずの駅前の大通りまでの道程がやたらに遠い。
 焦る気持ちとは裏腹に歩みははかどらず、時間は恐ろしく早く過ぎ去ってゆく。
(うそ、もうこんな時間……っ)
 腕時計の文字盤では、たっぷりあったはずの時間の余裕がかちかちと進む秒針に根こそぎ刻み取られ、いまや乗るつもりだった快速にも間に合うかどうかぎりぎり、といった状況だった。
 まあ、仮に快速を乗り過ごしたとしても、まだ即・遅刻ということにはならないはずだが――ニュースになってはいなくとも雪の朝の電車が本当に時間通り動いているかの確証はない。そして、なによりも大事な受験当日に時間ぎりぎりに会場に駆け込むのは、さまざまな意味で避けたいことだった。
 じゃり、とブーツの底がまだ真新しい雪を踏む。
 もともと雪の少ない地域だけに、町内会にも道路の雪かきなどの習慣や分担もない。地面に落ちた雪はそのまま溶け消えるに任せるのが常だった。それゆえ、未希の歩く道もまっさらなまま、降り積もった雪が覆っている。
「っ、ぅ……」
 雪国の出身者にしてみれば、どうということのない積雪。
 しかし、雪道を歩き慣れていない少女にとっては、たかだか数センチの雪でも想像以上の障害となる。足元を取られながらの道行きはいつもの倍以上の時間をかけて進む必要があった。
 ただでさえ制限時間つきの駅までの旅路は、悪路によってさらに少女の心を焦らせる。
 ……そして、未希の焦燥感を煽り立てている理由はそれだけではない。
 また踏み出したブーツの靴底が、ずる、と雪の上を滑る。
「きゃ、っ!?」
 慌てて踏ん張ったタイツの足が、車の轍に踏まれて半分溶けかかったシャーベット状の雪を跳ねあげ、ふくらはぎに泥染みをつくる。
 内股になった少女の腰を震わせ、未希の頬にかあっ、と朱を含ませる。
 息を詰め、手袋の指先で鞄の持ち手を何度もこするように握りしめ、空いた方の手のひらはスカートの上から太腿を押さえる。防寒のために穿いた黒のタイツの膝は、膝丈のスカートの下でこまかく震えていた。
(は、はやくしなきゃ……っ)
 ちら、ともう一度時計の文字盤を見下ろし、徐々にふくらはぎに広がってゆ雪解けの冷たさに口元を引き絞り、可愛らしい眉をきゅっと寄せて、未希は先を急ぐ。
 しかし、その太腿は忙しなくすり合わされ、膝から上はまるでぴったりと閉じ合わされたように不安定だ。
(……ぉ、おしっこ……っ)
 昨夜から、未希は体調を崩していた。試験前日の緊張や、ここ数週間の追い込みで十分な睡眠時間を取れていないことも理由だろう。わけもなく小さなほうのトイレが近くなり、昨日、一昨日は1時間に何度もおしっこをしにトイレを往復するようなこともあった。特に紅茶やコーヒーなどを飲んでいるわけでもないのに、形にならない緊張感が下腹部に澱み、胃袋が内側から圧迫されているかのよう。
 何もしていなくとも、身体が勝手に水分を絞り出してゆくような感覚は、今もなお続いていた。
 まだ日も昇らない――どころか、半分深夜といってもいいような時間に目が覚めてしまったのも、トイレに起きたためだ。幸いにしておねしょなんてことはなかったものの、かなり際どいものだったのも確かだ。朝からそんな事が続いていたため、未希はすっかり疲れはててしまっている。
 それから眠れないままベッドに横になり、ごろごろと寝返りをうってぼんやりと朝まで過ごし――暖房の効いた部屋で朝食を取るころにはいくぶん落ち着いたかに思えたのだが、家を出、雪道を歩いているうちに、その寒さを呼び水にしてか、またもごろごろと下腹部に尿意が膨らみはじめたのだった。
(あ、っ、だめ……っ、と、トイレ、トイレっ、はやく…っ)
 家を出て少しのところでそれに気付きはしたものの、バス停を前に引き返す気にもなれず(その時はまだあんなに待たされるなんと思いもしなかった)、そのまま進んだのがいけなかった。
 ほんの十数分で加速度的に膨らんだ尿意は、いまや少女の最優先事項になるまでにその勢力を拡大していた。まるでこぽこぽと音をたてるように、未希の下腹部にはおしっこが注ぎ込まれている。
 コートは着ているものの、下半身は制服のスカートにタイツだけ。ポケットのカイロはわずかな熱を発してくれてはいるものの、思うように下腹部でうねる切羽詰った感覚を和らげるのには不十分だった。
 ここから駅までの道程にトイレはない。コンビニがあるのは丁度線路を挟んで反対側で、そこまで回り道をしていると、おそらく確実に電車を乗り過ごしてしまう。駅の構内にも確か公衆トイレはあったはずだが、この時間は清掃をしているはずで、入れるのかどうかはよく分からない。
「は……っ」
 しかし、そんな事情などお構いなしに、未希の身体は早急な尿意の解放を訴え続けている。深々と染み入る寒さでますます下半身の事情が切迫し、その欲求はさらに苛烈なものになっていた。
 不安定な足元が雪を踏むたび、不用意に力の篭った腰骨にじんと疼きが響き、少女の体内に閉じ込められた熱い液体がくつくつと沸騰する。
 慣れない雪道を内股で、膝を擦りあわせながらでは急ぐこともままならない。下半身を占領した尿意は、いつダムを押し破ってもおかしくないほどに猛烈なものとなっていた。早くトイレを済ませないと、駅までだって保たないかもしれない。
 ――人一倍、羞恥心の強い年頃の少女にそう思わせるほどに。
(ど、どうしよう……トイレ……本当に、我慢できない……っ)
 すでに未希の身体は音を上げ、限界を訴え続けている。数歩進んでは立ち止まって、ゴム鞠のように身体を縮め、伸びあがっては腰をねじる未希の様子からもありありと窺えるほどだ。
 タイツの腿が忙しなく擦り合わされ、硬く張り詰めた下腹部は一刻も早くトイレに駆け込むことを要求していた。
 しかし、この近くにそれを叶える場所はまったく見当たらないのだ。
「ぁっ……」
 どうしていいか分からないまま、焦るばかりの未希に、容赦なく尿意の波が襲いかかる。
 押し寄せてきたおしっこの波が、一気に少女の足首からふくらはぎを乗り越え、腿の上まで水位を増す。ちりちりと脚の付け根が疼き、膨らむ尿意は下腹部からその底の部分、股間の先端まで駆け下ってゆく。
「あ、っ、ま、待って、えっ」
 たまらず前かがみになった未希は、ぎゅっと揃えた脚の付け根を手袋の手で押さえ込んでしまう。スカートの後ろが持ち上がり、身体を前傾にして背中を丸めた少女の肩が、ぷるぷると小刻みに震える。
 ぐるぐると渦を巻く下腹部の水圧に対して、出口を締め付ける力は頼りなく、少し気を抜けばそのまま脚の付け根に熱い雫を吹き出してしまいそうだ。閉じ合わせた太腿の奥には、いまもじわりと熱を感じる。
 指先を大きく制限された手袋では、微妙な力加減のコントロールすら難しい。
(だ、だめ、でちゃう……っ)
 閉ざされた出口をこじ開けるべく、未希の身体の内側から執拗にノックを繰り返す恥ずかしい液体。少女の体内で煮詰められたおしっこはさらにその尿意を増し、おぼつかない足元を責めなぶる。
 懸命に耐える未希の抵抗もむなしく、ぷくり、と膨らむ尿意はそのまま押さえ込んだ手のひらの奥にあふれ出した。じわぁ、と一気に下着に熱い感触が広がってゆく。
「ぁ、あっあっ!!」
 タイツの外まで滲みかねないおチビりに、息を荒くし、腰を前後に揺らして、未希は声を上げた。それ以上の崩壊をなんとか食い止める。
 脚の間に手を押し入れ、激しく揉みしだく――年端もいかない少女が路上で見せるには、あまりにもはしたない姿。
「ぁ、あっ、、あっ」
 小さく開かれた桜色の唇が、悲痛な声を響かせる。
 もはや少女の限界は時間の問題だった。
(と、トイレ。おしっこ、おしっこ……っ、だめ、でちゃう、我慢できないっ!!)
 とうとう音をあげ、未希はさっと辺りを見回すと、近くの交差点からこれまでの進行方向とは90度離れた場所に見える駐車場へと方向転換する。
 すでにちゃんとしたトイレを探している暇もないことは、未希の身体が一番理解していた。わずかな足元の刺激にも反応して、何度もじわ、じわ、と下着に熱い雫を吹き上げる下半身は、駅どころか一番近い商店までも間に合いそうにない。
 寄り道をしていれば電車に乗り遅れる、などというレベルはとっくに過ぎていた。
 オモラシかどうかの瀬戸際が、少女のプライドと羞恥心を打ち負かす。
 未希は必死に歯を食いしばり、まだ誰も踏み荒らしていない道路の端を進み、古びた駐車場の入り口を目指す。
 駐車場――そう。少しでも人目につかないところを――スカートをたくし上げ、下着を下ろして、女の子のの大切な場所を露にするための、排泄場所の最低条件として、他者の視線を遮るのに路上よりもほんの少しだけマシだというそれだけで、もう未希には十分だったのだ。
 前かがみの前押さえ、その姿勢を崩すことはとっくにできなくなっていた。スカートの上から、手袋で脚の付け根を握り締めたその姿勢のまま、鞄すら取り落としそうな有様で、未希は駐車場の敷地の中へと足を踏み入れた。
「は、ぁ、、あぅ……んくゥ……っ」
 “そこ”に辿り着いたそれだけで、瞬間的に、ぶるぶると、寒さに震える小さな身体が不要な水分を残らず絞り出してしまおうとする。塞き止めていなければならない水門は、勝手に緩み、黒いタイツの隙間にはすでにはっきりと、あふれ出した熱水の痕跡が流れ始めていた。
 ここに来て下腹部をさらに膨らませる尿意が、未希から冷静な思考を――こんな場所で、女の子がしてはいけないはずの行為に及ぼうとしていることへの警鐘を掻き消してしまう。
 じゃり、じゃり、と摺り足のブーツが雪を掻き分ける。内股になった足を上げることもできず、未希の足跡はソリが走ったように等間隔の溝を新雪に深々と刻んでいた。
 それも、まっすぐ滑るのではなく、少し進んでは停止し、その場で立ち止まってぐりぐりと地面に両脚をねじりつける、その仕草までをはっきりと記録したような有様だ。
「ぁ、ぁっ、ぁ、だめ、、ぁ、まだっ、ダメっ……!!」
 じゅ、じゅぅう、しゅるるるぅっ、
 また未希の命令を無視して勝手に開き始めた出口が、タイツの内側にじわあっと、大きな染みを広げる。最初は駐車場の一番奥――壁際の物陰を目指していた未希だが、すでに少女の下半身はそこにたどり着くための余裕すら残していなかった。
「ぁ、あゥ、ぁっ、あっ」
 初めに、激しい尿意を感じてからわずか十五分。かつて経験したことすらない異常な排泄欲求が、この上ないほどの加速度で一気に少女の下半身を侵略した。
 じぅ、じゅうじゅっ、じゅうぅぅぅっ
 股間のタイツの合わせ目を震わせ、ぬるぬると熱い水流が一気に噴き上がる。熱のこもった水流が股間から脚の付け根、お尻にまで広がり、さらに太腿から膝裏まで侵食してゆく。
 前を押さえ込んだスカートに色濃い染みが広がり、手袋にもじんと熱いものが染み込み、お尻のほうまでもが水溜りの上に転んだような水浸しとなってゆく。
 脚を伝ういくすじもの水路はあっという間にブーツまで到達し、さらにぽた、ぽた、と白い雪の上に黄色い雫が散った。
「いや、あぁあっ」
 悲痛な声を絞り出して、未希はまさにオモラシをはじめてしまった下半身を引きずり、そのまま一番手近に駐車してあった二台の乗用車の隙間に倒れこむようにして身体を丸めた。
(も、もうダメ、っ、我慢できない、こ、ここでっ、!!)
 もう選択肢は残されていなかった。どうしようもない。そう思い、未希は鞄が汚れるのも構わずに放り出し、スカートを引っ張り上げて下着を下ろそうとする。
 が、親指以外がひとまとまりになった毛糸の手袋では、細かい作業をすることは叶わない。物を挟むことくらいしかできない手袋の指では、ずぶ濡れで肌に張り付くタイツをうまくひき下ろすことができなかった。
 じゅ、じゅぅぅう、じゅじゅじゅじゅじゅぅ……っ
 焦る間にも、未希の下半身は、ますます熱い水流でずぶ濡れになってゆく。
「ぁ、ああ、いや、だめ、だめ……っ」
 意味のない拒絶の言葉がむなしく響く。下着とスカートの保水力を超え、タイツ越しに吹き出した水流が、勢いもないまま雪の上に溢れ落ちてゆく。新雪を色濃く染める少女のおしっこは、無垢な雪の上にいくつも孔を穿ち、湯気を立てて駐車場の雪を溶かしはじめていた。
 無理やり引っ張ったタイツに不均一な力がかかり、伝線して少女の肌を薄く覗かせる。ほとんど半狂乱になった未希が、すでにびしょ濡れのタイツをようやく膝上まで引き下ろしたころには、足元どころかブーツの中までもぐっしょりとおしっこが染み渡っていた。
「ぁ……っ」
 露になった股間が、濡れたまま外気にさらされ、ひんやりとした寒さにきゅうと収縮する。それと同時、ようやく遮るものが全てなくなった少女の出口、細いたてすじを覗かせる白い股間から、激しい勢いで水流がほとばしる。
 布地越しのそれとはまるで勢いの違う琥珀色の水流は、雪の上にほぼまっすぐ、直線状に叩きつけられて、一気に湯気を吹き上げた。
 激しい水音と主にじゅじゅじゅっじゅぅ、と積もる雪には深く穴が開き、その縁を薄黄色に染めながら足元の雪を溶かしてゆく。
 少女の体内温度と同じ……およそ40℃弱の熱水にかかっては、薄く積もった雪などあっという間に消えうせ、未希の足元はほどなく地面のアスファルトを覗かせた。
 溶け出した雪はそのまま傾いた路面を流れ、ますます地面の孔を大きなものへと変えてゆく。
 むき出しになったアスファルトを叩く水流はぴちぴちと泥交じりのしぶきを跳ね上げ、未希のブーツやタイツ、スカートにまでをも汚し、跳ね染みを散らしてゆく。
「はぁあああ……っ」
 しかし、当の未希はそんな悲惨な状況を拡大してゆく下半身には意識を回せる余裕もないまま、排泄の甘美な開放感に夢中になっていた。最後にトイレに行ってからまだ数時間も経っていないというのに、未希のおしっこは量、勢い共に標準的な少女のものをはるかに上回っている。
 駐車場の外からも半分丸見え――どころか、車の間からむき出しのお尻を覗かせて、盛大におしっこをしているその姿を、幸いなことに目にする者はいない。
 未希はそのまま、雪の上で心ゆくまでおしっこを続けてしまう。
「ぁ……ぅ」
 遠くから見ても目につくほど大げさな湯気を立て、なおも激しくじょばじょばと地面に撒き散らされては白い処女雪を陵辱するおしっこは、まったく止まる気配がない。身体じゅうの水分がそのまま流れ出してしまっているかのようだ。
 ぶる、ぶる、と小さく腰を波打たせながら、未希のおしっこは激しくアスファルトの上を打ち、いよいよ広く雪を溶かして一面に広がってゆく。
 駐車場の一角で長い長いおしっこが終わり、積もっていた雪をすっかり溶かされてあらわになったアスファルトの上で。
 ようやく我に帰り、未希が濡れたタイツと汚れたスカート、水浸しの鞄の中でぐちゃぐちゃになった受験票、さらに台無しになった手袋とブーツの冷たさにを呆然と見下ろす頃には。
 冬の朝の時刻はさらに進み、快速に間に合う最終リミットをとっくに通り過ぎていた。
 (初出:書き下ろし)
 ……駐車場の展開が某所に似てしまったかもしれない。

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