習作・1

 「宇宙ヤバイ」のコピペが元ネタ。
 というかまったく原型がない。


(……やばい、と、トイレ……本当にやばいかも……っ)
 こみあげてくる尿意はいよいよ凄まじいものとなり、刻一刻と限界へ近づいていた。
 ほとんど余裕のなくなった下腹部の欲求をを必死にかばいながら、憂は焦る心を抑えつけ先を急ぐ。
 もう十分近く歩いているはずなのに、記念館の灰色の屋根は相変わらず遠く、一向に近づいてきたようにすら感じられない。
 市営のグラウンドを二十倍したところではるかに及ばない広大な敷地の中には、のどかな風景が広がっており、本当にここが都内なのか疑いたくなるほどだ。
 これが鬱蒼と茂る森の中でなら迷った可能性を疑うこともできるが、見晴らしのいい草原と高い空、どこまでも続くサイクリングロードが、少女に厳然たる事実――最も近い建物まで、まだ1キロ近く距離があるということを突き付けてくる。
(っ……ぅあ……だ、ダメっ、やば……やばい、って…)
 スパッツの上からぐいっと引っ張った体操着の前側を、両手で足の付け根に押しつけるようにして、人目憚らぬ“オシッコ我慢”の姿勢のまま、憂はおぼつかない足取りでサイクリングロードを進んでゆく。
 一体何坪あるのか数えるのも馬鹿らしくなりそうなほど広大な敷地は、へっぴり腰のよちよち歩きではもはや無限に等しい広さにすら感じられた。
「んぁんんっ……」
 ぶるぶる、と少女の腰が震える。石のように張り詰めた下腹部で尿意が膨らみ、閉じ合わせた太股が激しく擦り合わされる。ちりちりと焦げるようにむず痒い“イケナイ感覚”は、今にもぷくりと花開きそうな足の付け根の少女の秘所のすぐ傍まで押し寄せてきていた。
「はぁ、はぁ……っ、はあっ……っくう……んんぅ……っ」
 股間にきつく重ね当てられた手のひらが、ぎゅうぎゅうと大切な場所を握りしめる。
(な、なんで……っ、こん…なに、トイレっ、と、遠いの、よ……っ)
 女の子にとって、野外での試合でのトイレは死活問題だ。まして普通の選手よりも雑務の多い憂は、ほぼ丸一日試合会場を離れられないことだってある。恥を忍んでチームメイトにお願いし、なんとか抜け出したトイレ休憩だというのに――この絶望的なまでの距離に、憂のこころはすでに挫けかけていた。
 最初は10分もあれば戻ってこれる位置にある事務棟のトイレを使うつもりが、故障していたためさらに公園の反対側の記念館まで遠回りを強いられてしまったことも想定外だった。
「んぅ……んああっ…ぁあぅ……っ」
 思わず力の籠る両手の指に引っ張られ、体操着の背中側が持ち上がり、わずかに白い背中が覗いていた。
 限界に近いオシッコをぱんぱんに溜め込んだ憂のおなかは、硬い手ごたえとともに身体の外側にせり出していた。スパッツのゴムが下腹部に食い込み、“おあずけ”を食わされたままなお激しく高まり膨らむ尿意をさらに加速させる。
 足の付け根を押し揉むように撫でながら、猛る尿意の大波を必死になだめ、少女は身体を硬直させ、はあはあと荒い息を繰り返していた。際限なく高まるオシッコの波は、膀胱の許容量や憂の意志など無関係に膨張を続けている。
 また大きな波を一つ乗り越え、のろのろと進み始める憂。
 しかし、どれだけ必死に我慢していたところで、少女の身体が堰き止めておける恥骨上のダムの容積には限界がある。有限のそれを超えた瞬間、限界まで伸び切った少女の体内の水風船は、溜まりに溜まった中身を残らず絞り出してしまうだろう。
 そんな想像によってまたきゅんと疼き始めた下腹部をさすりながら、憂はサイクリングロードの分かれ道に差し掛かる。
「……っ、フェンスの外側って……ど、どこなのよっ? ……そんなの、全然見えないじゃないっ……」
 先ほど受けた説明では、記念館まではフェンスに沿って進まないとさらに遠回りになるということだった。しかしそんなものはどこを見渡しても目に入らない。
 本当にこっちでいいのか、もしかしてやっぱり迷ってるんじゃ――いくつもの逡巡が、少女の脳裏を占めてゆく。しかし他に尋ねる相手すらなく、憂はただ一人、諦めて進むことしかできなかった。
「……く……ぁぅ……んんぅ……」
 ぶる、と足元がすくむ。
 まだ春先、薄曇りの今日は北風も冷たく、気温は15℃前後。半袖の体操着とスパッツだけではいささか心許なく、また汗に湿った服は容赦なく憂の体温を奪い、身体を冷やしていった。
 きつく押さえ込んだ身体の中心にも、その寒さはゆっくりと染み込んで、ますます限界を近づかせてゆく。
 ひとけのない公園――そしてあまりにも遠いトイレまでの道のり。
(も、もう……やっぱり、ここで……? ……っ……だ、だめ……そんなの……でも……っ)
 憂の心の中では、このままどこかに腰をかがめてスパッツを引き下ろし、オシッコをしてしまおうとする本能に忠実な自分と、女の子の羞恥心が激しく綱引きを繰り返していた。
(こんなの、我慢できない……やばい……よぉっ)
 限界を訴える下半身の欲求に従おうとしてしまう身体を支え、太腿を何度もこすり合わせながら、ここでトイレを済ませることの言い訳を探しては、何度もそれを打ち消して、少女は激しい葛藤を繰り返す。
 何も気にせずこのままここで堂々とおしっこができるくらい、小さな子なら良かったのに――
(だめ、そんなこと考えちゃ……もうちょっと、あと少しなんだから……我慢、頑張らなきゃ……っ)
 そんな事を考えてしまいながらも、憂はくじけそうになる自分の心を必死に励まして、よろよろとサイクリングロードの先へと進んでいった。
 (初出:書き下ろし)


■宇宙ヤバイ■
ヤバイ。宇宙ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
宇宙ヤバイ。
まず広い。もう広いなんてもんじゃない。超広い。
広いとかっても
「東京ドーム20個ぶんくらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ無限。スゲェ!なんか単位とか無いの。何坪とか何?fとかを超越してる。無限だし超広い。
しかも膨張してるらしい。ヤバイよ、膨張だよ。
だって普通は地球とか膨張しないじゃん。だって自分の部屋の廊下がだんだん伸びてったら困るじゃん。トイレとか超遠いとか困るっしょ。
通学路が伸びて、一年のときは徒歩10分だったのに、三年のときは自転車で二時間とか泣くっしょ。
だから地球とか膨張しない。話のわかるヤツだ。
けど宇宙はヤバイ。そんなの気にしない。膨張しまくり。最も遠くから到達する光とか観測してもよくわかんないくらい遠い。ヤバすぎ。
無限っていたけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると
「じゃあ、宇宙の端の外側ってナニよ?」
って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
あと超寒い。約1ケルビン。摂氏で言うと-272℃。ヤバイ。寒すぎ。バナナで釘打つ暇もなく死ぬ。怖い。
それに超何も無い。超ガラガラ。それに超のんびり。億年とか平気で出てくる。億年て。小学生でも言わねぇよ、最近。
なんつっても宇宙は馬力が凄い。無限とか平気だし。
うちらなんて無限とかたかだか積分計算で出てきただけで上手く扱えないから有限にしたり、fと置いてみたり、演算子使ったりするのに、
宇宙は全然平気。無限を無限のまま扱ってる。凄い。ヤバイ。
とにかく貴様ら、宇宙のヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイ宇宙に出て行ったハッブルとか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。

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