2010-03

小説

新学期のお話。

穏やかな街並みは、出会いの季節に満ちていた。 ほんの数週間前までは蕾だった桜も満開となり、そこかしこの枝から花吹雪を散らせている。 脚元に降り積もる花片を踏みしめ、真新しい革靴が、アスファルトの上に不規則なリズムを刻む。「は……っ」 北村千...