募金のお話。

「募金にご協力をお願いしまーす!」
 雑踏の途切れぬ駅前で声をそろえるのは、市内でも有名な私立の進学校の生徒たちだ。濃灰の制服の襟元に輝く銀の刺繍は、内外に示される彼女達の誇りの証。
 戦前、華族のご令嬢を育成することを目的に設立されたその学院では、創設者の方針を今日も受け継ぎ、ただ学業優秀なだけでなく、品行方正な子女育成することを旨としていた。
 そのため生徒達には在学期間を通じて年に一定時間のボランティアや自主的な奉仕活動をすることが慣例となっていた。あくまで生徒の自主的な活動、とされてはいるものの、免除を受けるには正当な理由と許可が必要なため、実質的には義務と呼んで差し支えない。
 そのため、休日、祭日ともなれば市内のあちこちで、活動に勤しむ少女たちの姿を見ることができた。
「ご、ごきょうりょく、おねがいします……っ」
 村瀬千尋も、そんな生徒の一人。駅前からは少し離れた交差点で、募金箱を抱えている。 飾り気のない、肩の上で額の下でまっすぐ揃えられた髪。寸分の乱れもなく身につけた制服の上からも分かる華奢な体格。
 あまり人前で中止を浴びる事に慣れてはいないのだろう。本人は精一杯声を出しているのだろうが、小さな声は歳末の雑踏にまぎれてほとんど聞こえない。
 そのためか、ほとんどの通行人は忙しい足取りで千尋の前を素通りしてゆく。
 ――少女が先程から、小さく足踏みを繰り返し、もじもじと落ち着きなく身体を揺すっているのにも気づかずに。
 薄曇りの空の下、制服の上に指定のコートだけではとても12月も末の寒さは凌ぎきれない。吐く息も白い中、もう1時間以上もこうして駅前に立ったままだ。吹き付ける風と日陰の冷え切ったアスファルトの上、千尋の脚はすっかり冷え切っていた。
(あ、あっ、あっ)
 声にならない声を喉の奥に押し込みながら、千尋はタイツの脚をすり合わせてしまう。
 さっきから頻りに気にしている駅前の時計は、いまだ9時を少し過ぎたところ。まだ指定された時間の半分も過ぎていない。
 しかし、下腹部を満たす黄色い熱水は、少女の膀胱をいまや限界までぱんぱんに膨らませていた。
(と……トイレ……っ)
 いま、何よりも身体が希求しているものを、必死に訴えながら。千尋は何度もタイツの腿を擦り合わせる。
 駅の北口はちょうど背の高い駅ビルに遮られ、午後になるまで日が照らない。日陰の中では一層風は冷たく、昨夜は零度以下まで落ち込んだ冷気の名残が足元からじわじわと這い上り、タイツ一枚を素通りしてスカートの中にまで侵入してくる。
 スカートの下、少女らしい下着の股布部が、ぎゅっと寄せられた内腿に挟まれ、まだ幼いつくりの股間に食い込む。もぞもぞと揺すられる腰は明らかに落ち着きなく動き、革靴の爪先がタイルの上を左右交互に叩く。
「……ん、ぁっ……」
 ぎゅ、とくっついた膝だけでは足りなくなり、千尋はとうとう募金箱の下に右手を伸ばし、そこからスカートの布地を掴んでしまう。
 ぐいっと下に向けて引っ張ったスカートの下、砂でも詰まっているみたいに硬く張り詰めた下腹の奥で、ぱんぱんに膨らんだ膀胱がざわりと震え、背中を這い上る甘い電流のような尿意のむず痒さが、きゅうんっと千尋を襲う。
「ぁう……っ」
 オシッコの出口を内側からひっかかれ、小さな喘ぎ声が飛び出してしまう。はあ、はあ、と息が荒くなり、十二月の街並みに白い吐息の跡が溶けてゆく。
(は、はやく……っ、はやく、トイレ……っ)
 ただでさえ厳しい尿意は、寒さによってますます加速されてゆく。もはや一刻の猶予もなく、身体は溜まりに溜まった黄色い熱水の放水を促していた。
「ぼ、ぼきんに、ごきょうりょく、っ……」
 ぞわあっ、と背中をはい上がる尿意に、思わず言葉が途切れる。
 ぴたり、と動きを静止して、荒れ狂う波をなんとかやり過ごしてから、千尋はぎゅっと唇を噛み締める。
「ご、ごきょうりょく、おねがい、します……っ」
 恵まれない子供たちに、愛の手を。
 いま、誰にも負けないくらい、周りの人の手助けを必要としている千尋の、ほとんど棒読みの台詞が、とぎれとぎれに雑踏の中に響く。
(あ、あ、ぁっ、あ……っ、)
 これ以上の我慢は不可能で、このままここに居続けたら、遠からず決定的な事態が訪れてしまう。それが解って居ながら、しかし千尋はここを離れることができずにいた。
 そもそも、歳末の募金活動は千尋一人がしているわけではない。駅を中心にした数か所に、生徒がグループになって行うことになっていた。千尋も今朝、他の少女たち3人と共にこの場所を割り当てられたのだ。
 けれど、およそ千人近い学内の生徒全員が全員、学院の理念を理解し、慈愛に満ちた聖女のような毎日を送っているわけでがない。むしろ生徒の多くはこうした活動に懐疑的で、普段から積極的な参加などしていないかった。
 そうした事態を嘆いた生徒会によって企画されたこの募金活動も、参加を強制された生徒たちには不満が高まる一方だったのだ。
『ってことで、私達ちょっと用事があるから。じゃね?』
『ごめんねぇ~。頑張ってね!』
『先生には上手く言っておいてね。あ、これあげる。温まるよー』
 千尋を除く3人は、監督の教師が持ち場を離れたのをいいことに、活動開始から早々に募金箱を千尋に押し付け、どこかへ行ってしまったのである。
(…………っ)
 引っ込み思案な千尋には、去ってゆく彼女たちを呼びとめることもできなかった。
 持ち場を離れて探そうにも、いつ教師が戻ってくるとも解らない状況で、自分までいなくなっていればさらに問題が大きくなるし、下手をするとサボりの仲間にされかねない。
 どうしようかと困惑したまま、千尋はその場に取り残され――現在に至るのだった。
「は……ふ…。…く…ぅ」
 すっかり冷たくなったコーヒーの缶が、足元でカランと音を立てる。
 寒さに耐えかねて、つい口にしてしまったホットコーヒーは、カフェインに免疫のない少女の身体の利尿作用をかきたて、凄まじいまでもの勢いで膀胱に恥ずかしい液体を注ぎ込み続けている。
 間断的にじんじんっとお腹の奥で鈍い痛みが走り、はち切れんばかりにぱんぱんに膨らんだおしっこの袋が圧迫されて、勝手に出口が開いてしまいそうになる。
(あ、あっ、あ……)
 ぐうっと押し寄せてくるような強い波が、千尋を襲う。
 足踏みが強まり、腰がくねくねと左右に揺すられる。募金箱の下で、片手がきつくスカートの上から脚の付け根を押さえこむ。
 我慢と尿意を左右に乗せた天秤が、片方に傾いてゆく。
 カフェインの暴力的なまでの利尿作用で急速に抽出された蓄積されたおしっこが、寒さに収縮するおなかの中に注ぎ込まれ、おしっこの袋は水風船みたいにぱんぱんに膨らんでゆく。
「あ、あっあぁっ……っ」
 とうとう千尋は声をあげてしまった。すりすりと交互に擦り合わせていた、黒タイツの太腿がさらに激しく動き、バランスを崩したままアスファルトの上をかつかつと足音が刻む。
「ぁ、あっ、ぁ」
 ふらふらと頼りない脚は、仮に自由になったところで、トイレまで行く余裕を残しているのか、果てしなく疑問に思えた。
 おしっこを我慢する以外の目的で足を動かせば、すぐそのままお漏らしが始まってしまう。近くのガードレールに身体を預け、募金箱を握り締めながら、荒く息を繰り返しては身を強張らせる。
「ぼ、ぼきんに、ごきょうりょくっ……お、おねが、おねがいっ。し、しますっ……」
 まるで学芸会のセリフめいて繰り返されるフレーズ。募金箱を握る手に力が籠り、じっとしていることのできない爪がかりかりと小さい音を響かせる。
 下腹部を圧迫する水圧が胸の中まで押し上げて、息が詰まり、声が掠れる。
 寒さ以外の理由で震え続けている足の隙間から、いまにもじわりじわりと熱い雫が滲み出しそうになる。
 タイツの奥、下着にぽつり、と小さな染みが浮かぶ。
 ぷくりと股布を盛り上がらせた熱い雫は、すぐに外気に触れながら冷え、薄黄色く濡れた布地の面積を広げてゆく。最初の一滴が無垢だった布地を侵略すれば、あとはもう歯止めは利かなくなる。
「ご、ごきょうりょ、く、あっ、ぁ」
 意味のつながらない言葉を喉の奥に引き攣らせながら、千尋は壊れたオルゴールみたいに同じ言葉を繰り返していた。けれど千尋の頭の中を占めているのは募金への崇高な理念や慈愛の心などでは断じてなく、それらに対する不平不満でもなく、膨らみ続ける尿意と、それに抗わなければいけない、という意識だけだった。
 溜まりに溜まったおしっこは、膀胱だけではなく出口と膀胱の間のおしっこの通る管にまで流れ込んでいる。
 女の子特有の短い通り道の中までが、黄色い熱湯にぷっくりと占領され、千尋は辛うじて自由になるおしっこの管の出口の側だけを必死になって締め付ける。
「ぁ、あっ、ああっ」
 けれど、脚の付け根に力を込めて強張らせるたび、ぷくりと膨らんだ排泄孔からはおしっこが少しずつ漏れ出して、ぷちゅるるぅと熱い雫が噴き出して下着を湿らせる。
 擦り合わせた太腿の奥で、食い込んだ下着の股布はおしっこで湿り、不快感を催させた。
 千尋の努力を嘲笑うかのように、まるで焼けた砂の塊を飲み込んだようにずしりと重いおしっこの貯水池は、少しずつ少しずつ決壊へと向かっている。
「うぁ、あ、あぅ、あっ……」
 サイダーか何かがおなかの奥でしゅわしゅわ弾けているようだった。少女のおなかの中でおしっこの袋がびくん!と段階的に膨らもうとする。
 いよいよ牙をむいたカフェインの魔力が、さらに少女の尿意を加速させる。
「っ……ぁあああぅ……っ」
 とうとう耐え切れずに、千尋はだんだんだん、と左右の脚を行進のように踏みならしてしまう。恥も外聞もなくスカートの前から足の付け根を抑え込み、溢れそうなものをぐうっと押し上げる。
 尿意と一緒に鈍い痛みまでおなかの上、胃のあたりの裏側に、ぐうっと重苦しいものが詰まってゆく。けれど、そうやって手を使っていなければ、いつダムが決壊してもおかしくない。恥骨の上にせり出した膀胱を無理矢理おなかの中に押し込めようとするたびに、千尋の脚の付け根で腰骨までが軋むようだ。
(あ、あっ、やぁ、でちゃう、でちゃうっ……、でちゃう……っ!!)
 まっすぐに立てない千尋の足が地面を擦るたび、じんっ、と下腹部に響く刺激が腰を震わせる。スカートを揺らし、タイツの膝を不自然なくらいにくっつけて、お尻を真後ろに突き出した不格好な姿勢で、けれど千尋は必死になって歯を食いしばる。
 身体の振動は尿意を加速させ、それを紛らわせるために爪先は小刻みに地面をたたく。ざわ、ざわと堤防に押し寄せる高波が出口を内側からひっかく感覚が、耐えがたいほどに甘美な排泄の誘惑をもたらしてくる。
「ぼ、ぼきん、にっ……あぅ、んぁっ……」
(おしっこ、おしっこ、おしっこおしっこおしっこっ……!!)
 こんなところで醜態を晒すわけにはいかない。けれど限界を超えて膨らんだ尿意にまともな思考はできないまま、千尋は身悶えしながらいまにも弾けそうなおしっこの出口を堰き止め、噴き出とうとする恥ずかしい熱湯を押しとどめるだけで精一杯。
 じわ、じわ、と濡れてゆく下着を押さえこみ、千尋が路上で披露するおしっこ我慢のダンスは、どんどん大胆になってゆく。
「あ、あぅ、あっ……は、っ、く、あ、っ」
 駅前の交差点で激しく脚の付け根を押さえる制服姿の少女に、雑踏の中にも足を止める人が出始めていた。
 その奥は千尋よりも年上の男性であった。
 寒空の中、募金箱を抱えたまま必死になっておしっこを我慢して悶えている少女に、何気ない様子を装いながら、淫らなものを期待する視線が絡み付いてゆく。
(い、いや、見ないで、見ないで、くださいっ……)
 内気な少女の頬が紅潮する。身体を捻って身を隠そうにも、往来にそんなスペースはない。いまからトイレに向かおうにも、尿意の波が落ち着いてくれなければまっすぐ歩くことも難しいのだ。
 千尋はいまや衆人環視の中でおしっこを我慢しなければならなくなっていた。小さな身悶えや足踏みひとつ、揺すられる腰の一動作も、いやらしい視線にさらされねばならない。
「あ、あっあ……っ」
(い、嫌、っ、いやぁ……っ)
 そんな千尋の前に、一人の男性が進みでてきた。
「た、大変だね。頑張って」
 野暮ったい眼鏡に小太り気味の身体を揺する、二十歳半ばほどの男は、いくらか上擦った声でそう言って、財布のなかから10円硬貨を出し、募金箱に入れる。
 ちゃりん。募金箱の底を叩く金属音。年上の異性を目の前にして、緊張を募らせた千尋の身体は強い尿意を呼び起こし、少女はぶるっと背筋を震わせ、声を詰めてしまう。
「ふぁ……っ」
 スカートの上から、脚の付け根を握りしめる手に力が篭る。きゅうん、とおなかの奥で切ないほどのおしっこの波が出口に押し寄せる。
(あ、だ、だめ、、お、お礼、いわなきゃ……っ)
 反射的にそう思い至り、千尋は慌てて身体を折り曲げた。
 ぎゅっと歯を食いしばり、千尋はどうにか喉の奥から声を絞り出す。
「あ、ありが、とう、ございま……っ あ、あぅ……っ」
 もちろん、パンパンに張りつめたおなかでそんな事をすれば、圧迫されて膨らむ下腹部の水圧に、か弱い出口が耐えられるわけがない。我慢を強いられ続けて少し赤くなった股間の先端、女の子の大事な場所から、じゅわ、とはっきり音をたてて下着の中に熱いおチビリが染み出してゆく。
(ぁ、あっあ、っ、んあぁ…ぅっ)
 小さな割れ目を溢れ出した黄色い熱湯は、既にたっぷリと湿った下着の股布には吸収しきれず、スカートの内側、タイツに包まれた腿の合わせ目にまで広がってゆく。
 そのまま熱い雫は幾筋かに分かれて足を伝い、膝の裏側からふくらはぎにまで、黒いタイツの上に染み出して、黒い布地をさらに色濃く変えてゆく。
 タイツが白地ではなかったこともあって、ぱっと見、遠目には分からないが、布地を抑えた手のひらのすぐ下で、じゅわぁと吹きあがる熱い雫は、千尋を激しく動揺させた。
 思わずクネらせた足もとに、まただらしなくじゅわぁっとおしっこの雫を噴き出させてしまい、アスファルトの上にぱたたっ、と小さな水滴が散る。
「うはぁ……すげぇ……」
 千尋が漏らしたおしっこが地面に染みを作るをの見て、男は、満足そうに口の端を歪め、眼鏡が曇りそうになるくらいだらしなく息を荒げる。
(!!……い、いや……ぁあっ!!!)
 間近でオモラシを見られたことに、千尋は悲鳴をあげそうになった。
 もともと内気で、しかも年上の男性など、ほとんど父親くらいしか知らない少女だ。異性への免疫などないに等しい。
 下卑た欲望を隠す様子もなく、じっと見下ろす男の視線に耐えきれず、歯ががちがちと震え出してしまう。
 ほとんど、心臓を掴まれたような気分だった。
 そう、さっきの励ましの言葉も、募金箱に入れられたお金も、恵まれない子供たちや、募金活動に向けられたものではない。
(あ、あっあ、や、やだ、やだぁ……っ、)
 いまの10円は、千尋が披露していたオシッコ我慢のダンスへの代金なのだ。
 恐怖と羞恥に動けなくなった千尋を、容赦なく尿意が責め立てる。じっとしていることができずにクネクネと揺すられる腰と共に、タイツの間をじゅぅ、じゅぅ、とおしっこの雫が滑り降りてゆく。
「あ、あっ、あ……」
 強張った脚を震わせるばかりの千尋の傍に、別の男性が近寄って来て、また募金箱に腕を伸ばす。
 今度は50円硬貨。
「ふぁ、あぁ、あっ……ッッ」
 ちゃりん、という音に合わせて緊張を高めた千尋は、たまらず腰をクネらせてしまった。
 まるでパブロフの犬のような条件反射。
 少女のスカートの奥から、水道にハンカチをかぶせて蛇口をひねったような、くぐもった水音が響く。
 過敏になっていた下腹部は過剰に反応し、膨らみかけていたおしっこの出口がまた開いてしまったのだ。千尋の排泄孔はさっきの出来事を思い出すようにそっくりそのまま、けれどもっと激しくおしっこをチビる。
「ぁ、あっ、あ、あぁっ」
 ぱくりと丸い円を描いた少女の唇が、湿った吐息をこぼし熱い喘ぎを繰り返す。
 意図せずじゅぅうっ、と噴き出す熱い水流。溜まりに溜まったおしっこの解放。背筋を這い昇る微弱な電流は、むず痒いような心地いいような筆舌に尽くしがたい刺激になって、おしっこの出口を何度も何度も痙攣させる。
「んぁ……ぁふっ」
 寒さでかじかんだ手のひらを暖房にかざした時のような、痛さと痒さの混じった感覚にも似たものが大事な部分を貫き、今度はさっきよりもはっきりと勢いよく噴き出したおしっこが、スカートの布地を染みだし、股間を握りしめる千尋の手のひらに触れた。
 黒い布地を握りしめた手指の格好に、熱い染みが広がってゆく。
「あ、や、も、もう、やめ……」
 震える唇から、掠れた声を上げる千尋。しかしそんな少女の行く手を塞ぐように、さらに二人の男性が近寄り、立て続けに放り込まれる100円硬貨。
 逃げ出すこともできず、ちゃりんと音を響かせる金属音に誘発されて、じゅ、じゅぅっとおチビリで下着を熱く濡らしてしまう。
「んぁぁあ……っあ、あぁっ……」
 色づいた唇には唾液の糸を引いて。喘ぎながら身をくねらせる少女の足元へ、びちゃびちゃとおしっこが滴り落ちる。遠くから見ても色が解るほどに濃い黄色のそれは、千尋がどれだけおしっこを我慢していたのかを知らせるものだ。
 括約筋をありったけの力で締め付けているのにも関わらず、漏れだすおしっこの量は増えるばかり。掴んだスカートの下では水分をたっぷりと吸って色を変えた下着から、タイツに溢れだしたおしっこが、とうとう革靴にまで染み込んで、ほんのりと湯気を上げ始めた。
 ちゃりん、ちゃりん。
「あ、あっ…ぁっあ、あぁ、あっ」
 まるで、自動販売機のよう。
 募金箱にお金が落とされるたび、千尋はパンツの中におしっこをチビリ続ける。歯止めのきかなくなった出口は徐々に緩み、些細なことでもだらしなく湯気の立つ水流を激しく吹き上げる。
 じゅぶ、じゅぅ、じゅじゅぅっ、もはや足もとまでずぶ濡れになった千尋の靴は、水溜りに突っ込んだみたいにおしっこをたっぷりと染みさせていた。足元だけ水浴びをしたような有様になって、なおも千尋はじゅうぅ、じゅじゅじゅっ、とみっともない水音を繰り返す。
 ずっとおなかの中に留まることを余儀なくされていたおしっこが、細切れになって千尋の足元を濡らしてゆく。
「だ、だめ、でちゃう、っ、お、おしこ、でちゃう、っから……ぁっ」
 断続的な排泄、しかも我慢をしながらのおチビりの連続だ。満足のいく排泄には程遠く、長時間の我慢に酷使された排泄器官は鈍い痛みを残し、漏らした以上の尿意を呼び起こしてしまう。一度出始めた女の子のおしっこが、途中で止まる訳がないのだ。
 収縮を始めた膀胱はなお過敏になり、千尋の足元にはばちゃばちゃと激しく黄色い滝が溢れ、地面に恥ずかしい水たまりを広げてゆく。
 また一人、足を止めていた人の中から、背広姿の男の人が千尋に近づいて、お財布から100円を募金箱の中に落とす。男の人の鼻は幾分か膨らみ、荒い息も聞こえる。
 こうしていれば正当な名目で、必死におしっこを我慢している女の子の仕草を息遣いを、すぐ間近で見ることができる。募金箱の中に落ちるお金は、千尋のおしっこ我慢&お漏らしショーの、特等席での見物料だ。
「あッ……!!」
 ごぽり、とまだなみなみと残る千尋のおしっこが、波立ち泡立つようにせり上がってくる。予兆もなく膨らんだ尿意がもろい出口めがけてせり出すのを感じ、千尋の背中に鳥肌が立つ。
 まるで、おなかの中に棒を突っ込まれたような――そんな衝撃と激痛。風船みたいに膨らんでいた膀胱がぶるんとふるえ、緊張に強張った下腹部の収縮に耐えかねて出口を緩ませる。
「あ、あっあ、あ、あーっ、あ、あーっ……」
 辛うじて持ちこたえていた最後の糸がぷつんと途切れ、とうとうダムが決壊した。
 痙攣とともに、じゅじゅじゅじゅぅう!! とこれまでとは比べ物にならない激しい水音が響いた。
 喉の奥が渇き、ひきつる。
 まるで鋭い針金に突かれるように細い出口がこじ開けられてゆく。足の付け根を覆っていた布地と肌の間に渦を巻くようにほとばしった熱水が、ぶじゃあああああああ、と、羞恥の放水音を撒き散らす。
 前屈みになった千尋のスカートの間から、冗談のように激しい奔流が噴き出した。
 あっという間にお尻までがびしょ濡れになり、まだ辛うじて残されていた、下着の無事な部分は完全に蹂躙されてゆく。タイツはすぶ濡れになり、靴にもいっぱいまで黄色い熱湯が注ぎ込まれてしまう。
 足元には大きく水たまりが広がり、アスファルトの隙間を伝って広がってゆく。
 じゅじゅじゅぅうぅうぅう……
 激しい放水音はいまだ続き、残るおしっこの全てを噴き出さんばかりに波打ちながら、アスファルトの上を直撃する。
 お尻やタイツの腿にまわった雫がぱちゃぱちゃと伏流水を滴らせ、がくがくと震える膝から力が抜けおちる。自分の作ったおしっこの水たまりの水面に、さらに激しく恥ずかしい熱湯をじょぼじょぼと注ぎながら、千尋は募金箱を抱えたまましゃがみ込んでしまった。
 おなかの中を占領していた熱の塊が噴き出して、代わりにブラックホールみたいな空洞ができあがってゆくようだった。
「っっ~~~……」
 ごっそりと熱の抜け落ちた身体を震わせ、千尋は息を荒げ、小さな唸り声をあげていた。
 きちんとおしっこをする姿勢になった少女の身体は、これまで自分を散々苦しめてきたおしっこを、一滴残らず絞り出さんとするように、全く勢いを弱めないまま、排泄を続けていた。
 本来、トイレの個室の中でしか行われないような、大胆で躊躇ない猛烈な水流がなおも数十秒に渡って続く。
 いつしか千尋の抱え込んでいた募金箱には、ずしりと重く感じられるほどの金額が注ぎ込まれていたのだった。
 
 (初出:書き下ろし)
 

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