小公女サラ【プリンセス転落編】

 ある趣味@JBBSの往年の名スレよりネタを拝借。


 重く硬いドアは、何度引いても開くことはなかった。
 力なくドアを叩いていたサラの手は、縋りつくように木肌に指先を立てる。いまにもへたり込んでしまいそうに力を失った脚を小さく震わせて、サラは部屋の中へと振り返った。
「ああ…っ、…おねがい、ゆ、許して……クリス……」
 まなじりを下げ、両手をエプロンの上からぎゅっと挟み込むようにして、身悶えをしながら、かつてのクラスメイトに赦しを請う。
「あら、なにを許すのかしら。まるで私があなたにいけないことをしているみたいだわ。ねえ?」
 白々しく空とぼけてみせるクリスに、後ろのエリカとシャーロットがくすくすと笑う。
「それにサラ? あなたはもう公女じゃないのよ。メイドならメイドらしく、言葉づかいに気をつけなさい。そもそも使用人風情が、そんな風に親しげに私に話しかけることが無礼なのよ?」
「っ……」
 ほんの数日前まで、同じように授業を受けていたクラスメイトを、無碍に扱うクリスの言葉に、サラは衝撃を受ける。
 サラとクリスは取り立てて仲が良かったという訳ではない。むしろあの大富豪クリフォード卿の一人娘として学院でも注目を集めていたサラを、クリスが快く思っていなかったことは確かだろう。
 けれど、ここまでされるほど憎まれているとは、お人好しで優等生なサラには想像もつかないことだった。
「で、でも……」
「でもじゃないわ! クリスお嬢様の言ってることが聞こえないの!?」
「そうよ。余計なおしゃべりはしないで、早く掃除を始めなさい!!」
 抗弁しようとしたサラを遮って、シャーロット。
 さらにエリカが地面に転がっていたバケツとモップをサラに向けて投げつける。
 クリスの取り巻きである彼女達は、より直接的にサラをいたぶることにためらいを持たなかった。先週まで公女ともてはやされていたサラが、汚れたメイド服を着せられて哀れに身体をよじっているのが面白くして仕方がないのだろう。
「あ、あっ……」
 あまりの仕打ちに俯いてぎゅっとエプロンの前を押さえ、床に座り込んでしまうサラ。それでもなお足りず、少女の脚はスカートの下ですりすりと擦り合わされ、腰は強く左右に揺すられる。
「や、やめて…!! ねえ、お願いっ、クリス……意地悪しないで……」
「もの分かりの悪い子ねえ。あなたはもうプリンセスなんかじゃないのよ?」
 クリスに強く床を踏みならして恫喝され、サラは体を縮こまらせる。こんな横暴にへこたれるサラではないはずなのだが、この数日、朝から晩まで働き通しで疲れた身体はすっかり反抗する気力を失っていた。
 なにより、間断なく下腹部に込み上げてくる熱い衝動を堪えながらでは、強気に出ることもできない。メイドに落ちぶれた公女は、顔を赤くし震える声で、クリスに許しを請う。
「お、お願い……お願いします、も、もう、私……っ」
 情けなさに込み上げてくる涙をこらえながら、サラは恥をかなぐり捨てて口を開いた。
「クリス様……ど、どうか、お手洗いに行かせてください……っ」
 羞恥に染まった頬が引きつり、スカートはエプロンの上からくしゃくしゃに握り締められる。女の子の大事なところをぎゅっと押さえ、サラははあはあと息を荒げて身悶えを繰り返した。
「ふうん……お手洗い? メイドのくせに、仕事もしないでわがままばっかり言うのね、サラ。いつまでも公女のつもりじゃ困るのよ」
「そうよ。ちゃんと仕事もできないくせに、さぼることばかり考えてるんだから」
「そんなの後にして、早くクリスお嬢様のお部屋を掃除しなさい」
「そ、そんな……っ、お願い……もう、本当に我慢できないの……朝から、ずっとお手洗いに行かせてもらえなくて……」
 そう言っている間にも、サラはみっともなくくねくねと腰を揺すってしまう。両手は脚の付け根の出口を押さえこむのに精いっぱいで、片時もそこを離れる余裕なんてない。
 少しでも気を抜けば溢れだしてしまいそうな、恥ずかしい衝動を懸命に堪えるサラに、クリス達は無慈悲な言葉をぶつける。
「ふふっ……」
「……クリス?」
 はあはあと息を荒げ、惨めにオシッコ我慢の仕草を続けるサラに、クリスは更に何かを思いついたのか、意地の悪い笑みを覗かせる。
「あらそう。でもサラ、あなたはメイドなんだから、手が汚れるくらい当たり前でしょう? そのたびに『お手洗い』なんかに行ってたりしたら、仕事にならないじゃないの」
「えっ?」
 一瞬、意味が分からずにぽかんと口を開けてしまうサラを余所に、クリスはエリカとシャーロットに目配せをする。
「そうでしょう? そんなに『お手洗い』に行きたいなんて、よっぽど綺麗好きなのねえ、サラってば」
「そうね! もう公女様でもなんでもないのに、メイドが手が汚れたくらいで何を言ってるのかしら」
「ええ。本当よ! ほら、早く立って!!」
 素早くクリスの意図を察した二人は、サラの腕を無理やり掴んで立ちあがらせると、その手にモップとバケツを押し付けた。
「あ、ああっ……だめえ…っ」
 しかし、左右の手で大事なところを握り締めているサラがそんなものを受け取ることができるはずもなく、バケツは床に転がり、モップもまともに握ることもできない。迫りくる尿意にきちんと立っていることすらできず、その場で太腿を強く擦り合わせてしまうサラ。
「ち、違うの……そ、そうじゃないの……っ」
「ほら! ちゃんとしなさい!! サボろうったってそうはいかないわよ!」
「はぁうぅ……っ、あ、あっあ……」
「うふふ。いいザマだわ!! 言っておくけど、あたしの部屋を汚したりなんかしたらどうなるか分かってるわよね?」
 もとはサラの部屋だった寄宿舎の特等室で、惨めにスカートを握り締めるサラを見下ろして、クリスはにんまりと微笑む。コーネリア女学院で一番上等なこの部屋は、公女の転落と共に、クリスのものとなっていた。
 それだけではない。いまやこの学院にはサラの持ち物は何一つ残っていなかった。お気に入りのレターセットも、何着もあったドレスも、大きな勉強机も、百科事典も全て取り上げられて、サラに与えられているのは粗末な屋根裏部屋と、古びて綻びだらけの使用人服だけだ。
 自分の惨めさを噛み締め、サラは高まる尿意に耐えきれず、とうとうモップの柄を脚の付け根に擦りつける恥ずかしい格好を始めてしまう。
 エプロンをくしゃくしゃに握り、もじもじと腰を揺すり、バタバタと足踏みを繰り返しては、はあはあと息をせき、顔を真っ赤にするサラ。みっともないオシッコ我慢のダンスに、クリス達はくすくすと笑いあった。
「クリス……どうして、こんな……意地悪をしないで……おねがい……」
「ふふ。どうしてですって? 決まってるでしょ。あなたがいつまでお嬢様ぶった顔でいられるか、見てみたいだけよ」
「ああっ、だめ、許して……わたし、もう…本当に……」
 握ったモップの柄を、力いっぱい脚の付け根に食い込ませて、必死のサラは喉を詰まらせる。
「もう駄目、もう本当に、オシッコが……我慢できないの……!! も、漏れちゃう…!!」
 声を振り絞って叫ぶサラの内腿を、つうっと細い雫が伝ってゆく。
 我慢に我慢を重ねた女の子の大事な場所は、すでに耐えきれない尿意を熱くにじませ、下着に大きな染みをつくっているのだ。それを目ざとく見つけ、エリカとシャーロットが囁き合う。。
「メイドのくせに生意気言ってるんじゃないわよ、さっきからなにもしてないじゃない。トイレは掃除が終わってからよ!!」
「そうよ、漏らすなら自分の部屋にしなさいよね。」
「……ひ、酷いわ……!!」
 サラは、自分の味方がもはやどこにもいないことを思い知っていた。
 トイレに行くためには、クリスの言うとおりこの部屋の掃除を終わらせるしかないのだ。サラは唇を噛んで懸命にモップを握り、よろよろと床を拭き始める。
 わずかに身体を動かすだけで腰はヒクつき、膝はきつく交差され、ぐりぐりと前後左右によじられるばかり。
 内腿はぎゅうっと閉じられたままで、覚束ない足取りではモップを支えに立っているのがやっとだった。
「はぁ、はぁ……はぁ…っ……あうぅ……っく…っ」
 か細い声を上げながら、きつく目を閉じて襲い来る尿意の波をこらえながら、サラはモップに縋りつく。もはや尿意は限界寸前。掃除どころではなく、脚の付け根に挟んだ木製の柄に女の子の大事なところを擦りつけながら、サラは部屋の中央を行ったり来たりするばかりだった。
「ほら、手が動いてないわよ!! そんなんじゃいつまでたっても終わらないじゃない」
「ああっ!! だめ、だめ、やめてぇ!!」
 シャーロットがモップを掴み、無理やりにぐいぐいと動かそうとする。不意の刺激に堪え切れず、サラの出口はぷしゅっと飛沫を噴き上げ、下着越しにしゅるるると恥ずかしい液体を溢れさせた。スカートをすり抜け、脚の付け根に食い込ませたエプロンまで、じわじわと染みが広がってゆく。
 黄色い水流は、モップの柄を伝って床にこぼれ、さらにぽた、ぽた、ぱちゃぱちゃと、サラの足元へ飛び散ってゆく。
「いやぁ……っ、だめ、出ちゃだめ、出ないでぇ……!!」
 誤魔化しようのない『オモラシ』に、涙を浮かべながらふるふると首を振るサラ。モップが濡れた床を擦り、女の子の匂いを強く広げてゆく。
 ずっとずっと我慢し続けたせいか、サラのオシッコは色も匂いも強く、エプロンに広がる染みまでもうっすらと黄色く見えるほどだった。
「あ、あっあ、あ……ぁ……」
 じゅじゅうぅ、じゅうううっ、しゅるるるる……
 脚の付け根を突き抜ける水流の解放感が、耐えに耐え続けていた公女のプライドを打ち崩した。もはやおチビりで済む筈もなく、ぱんぱんに膨らんでいた下腹部奥の水風船が弾けるように、サラの足元へ水流が溢れだす。
 サラ自身が身体の中心から噴き出させる恥ずかしい熱湯を吸って、スカートがびちゃびちゃと足に張りつき、お尻を熱く包み込んでゆく。
「はぁぁあ……」
 羞恥や後悔よりも先に、我慢の果ての猛烈な解放感がサラの唇を震わせていた。自分の姿も忘れ、少女はうっとりとした表情まで浮かべて熱い吐息をこぼす。
 本当の勢いで始まってしまったオシッコは、一着しかない使用人服を台無しにしてなお、まったく勢いを衰えさせなかった。
 ぶしゅぅううう……ぢょろろろろろ……
 みるみるうちに足元の床には水たまりが広がり、拭いきれない量のオシッコはモップすらも水浸しにしてゆく。
「はあ……っ」
 ぱちゃぱちゃ……ちょろろろっ……ちょろろ……
 たっぷり1分以上もかけ、すっかりおなかの中を空にするまでオシッコを出しきって、サラはぶるっと背中を震わせた。
 そんなサラに向けて、クリスが悪辣な笑みを覗かせる。
「あらあら、とうとうお漏らしあそばされたのね、公女様」
「……っ!!」
 一気に現実に引き戻されたサラに、クリスは容赦なく笑顔を向け、嫌そうに足元の恥ずかしい水たまりを覗き込んだ。
「すっごい量ね。恥ずかしくないの? こんなに我慢して。それに私のお部屋でオモラシするなんて、よっぽど行儀がなっていないのね。公女様はトイレのしつけもできていないのかしら」
「そ、そんな……」
 理不尽な言いがかりに、しかしサラは言い返すことはできなかった。
 下半身をずぶ濡れにしたオモラシの感触が、少女の心にわずかに残っていた、公女としての最後のプライドまでをも奪い去ってゆく。
 目に涙を浮かべ、俯いてしまったサラを、エリカとシャーロットの囃し声が追い立ててゆく。
「みっともないわねえ。これで本当に公女様なの?」
「本当よ。オモラシ公女さま。あんたなんか一日中濡れたお漏らしパンツのままでいるのがお似合いよ」
「ひ、ひどいわ……そんな、っ、ぜ、全部、あなたたちが……ひっく……」
 心ない言葉に、ついにサラは泣き出してしまう。嗚咽を上げながらへたり込んでしまったサラを見て、クリスはここぞとばかりに元公女の心をえぐってゆく。
「ああら、公女様。どんなときだって泣いたりしないんじゃなかったの? ……ふふ。あなたのお父様に見せてあげたいわね、今のそのみっともない格好。うふふふ」
「…………っ」
 悔しさとみっともなさに、涙が次々と頬を伝ってゆく。あれだけ沢山のオシッコを出してしまってなお、少女の涙は止まらなかった。声を上げて泣き叫ぶことだけは必死に堪えて、サラはオシッコに濡れた手で何度も頬を擦る。
 びしょ濡れのスカートと使用人服で、自分の漏らしたオシッコの水たまりの中央に座り込むサラに、クリスはぴしゃりと言い切った。
「さあ、いい加減に片づけてちょうだい。もちろん、あなたが私の部屋でお漏らしをしたことはマチルダ先生に言いつけてあげるわ」
「……そんな……や、やめて、クリスっ!!」
 サラは声を張り上げてしまう。どんな理不尽な理由があったとしても、クリスの部屋でサラがはしたなくもオモラシをしてしまったことは事実なのだ。マチルダ先生は激怒して更なる罰を与えるに違いない。
 いくら弁明しても無駄だろう。サラの味方はこの学院のどこにもいないのだ。
「お願いクリス、それだけは、それだけは勘弁して……!!」
「クリスじゃない。クリスお嬢様よ」
 縋りつこうとしたサラを、エリカが突き飛ばす。無様に倒れ伏すサラを、シャーロットは汚いものでも見るように見下ろした。
「……うふふ。どうせロクに着替えもないんでしょ。なんでしたら、わたくしの姪のオムツを貸して差し上げてもよくってよ、オモラシ公女様?」
 次々に投げつけられる罵倒の言葉に、サラはただ、徐々に冷えてゆくオモラシの水たまりの中で、涙を流すことしかできなかった。
 (初出:書き下ろし)
 

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