「んぁ……ぅッ!?」
不意打ちのような衝撃だった。ずっと我慢し続けた尿意とは段違いの、猛烈な衝撃が恥骨を激しく震わせる。びくびくびくっ、と少女の背筋がわななき、伊織は大きく身体を仰け反らせた。反射的にドア近くの手摺を握り締め、ぎゅうと細い爪を立てる。
「ぁあっあ、ぁ、あ! あっああ!? や、で、でちゃ、でちゃう、でちゃうう…ッ!?」
熱く湿った砂が詰まったかのように、下腹部の重みがずんと増す。ダムの水門を突き破らんばかりに押し寄せる下品な衝動に、脚を閉じ合わせ膝を擦り合わせるだけでは足りず、伊織はドアにぴったりと身体を寄せ、抑えつけるように突き出した腰をドアに押し付けた。
排泄孔に繋がる細い水路に通水が始まり、膀胱が急速に収縮、脚の付け根の一番底、もっとも脆い部分に凄まじい水圧がかかる。
何でもいい、なにか、支えるものが欲しかった。机の角や、足のかかと――そんなものにば股間をねじ付けて、少しでも尿意を紛らわせる動き。伊織はそれを、ドアのガラス窓にむけてやってしまっているのである。無我夢中とはいえ、この有様は異様であり、同時に、もはやバスの中に残る少女達の我慢が常軌を逸していることを知らせていた。
ぐりぐりと股間をドアガラスに押しつけ、上下させるいやらしい動きは、とても思春期の繊細な少女の物とは思えない程に大胆で下品なものだ。短いスカートがまくれ、少女の下着が露わになる。伊織の下着には既に隠しようもないほどにオシッコの染みが広がり、たっぷり塗れて股間に張り付き、少女の恥ずかしい場所のカタチをくっきりと浮かび上がらせている。
その姿は、ドアガラスの外からもはっきりうかがう事が出来た。
「お、おい!! 見ろよあれ!!」
「……あれ、女の子だよな? 学生か?」
サービスエリアの駐車場には、大渋滞で身動きの取れない高速道路の車線から避難してきた多くの人々がいた。本来は駐車できないエリアまで緊急解放して車を停め、あるいは一時停止して休憩をとっていた大勢の利用客で、普段は閑散としたサービスエリアも、観光シーズンの人気アミューズメントパークのような混雑の様相を呈していたのだ。
従って、普段ならばほぼ無人のサービスエリアの駐車場の端の端まで、人混みが途絶えない。
そう。2年A組28名プラス1人を乗せ、ゆるゆると動くバスの周辺にも。
「ちょっと、何やってんのあの子……!?」
「うっわあ……ねえ、見てよあのカッコ!! パンツまで全部見えちゃってるじゃない……」
顔を背ける会社員らしき女性、眉をひそめながらも、咎めるようにじっと見つめる母親、何かを察したかのように戸惑う初老の夫婦。嬉々として注目するのは若い男性に多い。当然だ。少女が切羽詰まった形相で足を踏み鳴らし、ドアに張り付いて激しく腰をくねらせ、挙句めくれたスカートも直さずに、下着を見せつけているのだ。これで衆目の興味を引かない方がおかしい。
「なあおい、あの子、ひょっとして……」
「ねえママ、あのお姉ちゃんオシッコだよ! オシッコ我慢してるよ!!」
「やめなさい、指差さないの!! お姉ちゃんが可哀そうでしょ」
母親の手を引き、残酷に指差して叫ぶのはまだ小さな少年だ。さっき彼は立派にこのサービスエリアまで失敗せずにオシッコを我慢しきった『経験者』であった。だからこそトイレには敏感で、今まさに間に合わなそうな伊織の様子を見て誇らしげだった。
母親の制止も聞かず、少年は伊織を指差してオシッコだ我慢だと叫ぶ。それはなお注目を呼び、伊織を晒し物にする視線をますます増やしてゆく。
「んぁ、ぁっ、おね、がい、開けて……そ、外に、出して、だして、よぉ……でちゃう、出してくれなきゃ、で、でちゃう、よおぉ……!!」
そして、その視線が飽和に達した瞬間。ついに伊織に限界が訪れた。ばんばんと力なくガラスを叩く手のひらが震え、ぴたりと止まった。外から丸見えの白い下着、その股間の先端、きゅっと食い込んだ股布部分がみるみる色を変える。
「で、でる、ぅ、で、る、でちゃ、ぅ、……ぁ、ああぁあああああ……ッ」
ぶじゅっ、じゅぅ、じゅっ、じゅじゅじゅっ!! じゅぁああっ!!!
ぶじゅばばばばっばばばばっばばば!!!
がくがくと白い膝が上下する。はしたなく腰がくねり、前後する。
伊織が張り付いたドアガラスに向けて、少女の股間から凄まじい水流が迸った。下着越しということも忘れさせるほどに野太く豪快な水流が、まるで噴水のように――ドアガラスに直撃した。
ぶっしゅぅううううううううううううううう!!!
びぢゃびぢゃびちゃじゅばばばばばぁあぁああああ!!!
猛烈な水流はドアガラスを叩き、四方八方に飛び散る。制御できない下半身を持て余し身体をくねらせ、懇願する羞恥に歪む伊織の顔も臨場感たっぷりに、少女のオモラシは、大観衆の眼前で始まった。
「ぁ。あぁあぁ……だめ、だめえ……だめええ……っ」
噴き出す水流は下着を貫通して、容赦なくドアガラスを叩く。長時間にわたる我慢で伊織が小さな下腹部に限界まで溜め込んだ恥ずかしい熱湯が、大量に溢れ出してドアをびしょ濡れにする。羞恥の噴水は、ホースでの水撒きと何ら変わらない程の水量と水圧だった。
女の子がトイレの個室の中でしか見せない、本当の勢いのオシッコが、バスのドアガラスを直撃する。
「あぁ、あっ、やだ、でちゃ、でる、でちゃう、ぅうぅ……っ」
がくがくと膝を震わせながら、伊織はもう股間の水流を押しとどめる手段をもたなかった。
ちょうど、男性用の小用便器をに用を足しているところを、反対側から透視して見ているのと同じ――とでも表現すれば、この光景が少しは説明できるだろうか。ドアのガラスに向けて、我慢に我慢を重ねたオシッコを激しくほとばしらせる、制服姿の少女。徐行するバスはまるで展示場か見世物小屋のように、ガラス一枚に隔てられた伊織の恥辱の姿を観衆に見せつけてゆく。
駐車場は伊織のオモラシを眺める特等席と化した。隣を通り過ぎる車の座席で、カップルらしき二人組が呆然と口を空け、その姿を凝視する。
「ぅ、あ……ぁああ……」
もはや伊織には言葉もない。2年A組28人を乗せた社会見学バスの乗降口に派手にオシッコを噴き出させてマーキングし、『ここには、こんなふうに恥ずかしいオシッコを我慢して、オモラシしちゃう女の子たちが乗っています』と全身で宣伝しているかのよう。
ガラス越しに、景気良くパンツの股布を突き抜けるオシッコ大放水のの一部始終を見せつけながら、伊織が熱いオモラシの雫を滴らせてその場にへたりこんだその時。
ようやく、バスは停車した。
社会見学バスの話・49 麻生伊織その2
