社会見学バスの話・74 黄色いナイアガラの滝

 サービスエリアの女性用公衆トイレ。その前に蛇行する長い長い順番待ちの列は、ゆっくりとゆっくりと進んでゆく。
 もう、これ以上ないくらい我慢を続けているのに――。
 2年A組の少女達にトイレの順番が回ってくるまでのカウントダウンは、時計の針が止まってしまったかのように遅い。何度前を見ても百人近い行列は、高速道路の渋滞の列同様、ほとんど進む気配もない。
 順番待ちの行列の中に、佳奈たちは固まって並んでいた。他の順番待ちの女性達とは明らかに違う様子の、見るからに『もうだめ、限界』と全身で叫んでいるかのような我慢ポーズで、およそ10人余りの少女達が荒い息を繰り返し、しきりに脚をモジ付かせ、腰をくねらせ続けている。同じ制服姿の少女達が、ずらりとオシッコ我慢の見本市のようにトイレに並んでいるのは、いっそ壮観な眺めといって良かった。
 固まって行列に並ぶ少女たちの先頭にいるのは頼子だった。交互にきつく目をつぶり、ピンと背中を反らせてきゅっと口を噤む。
 小さな手のひらは清楚な膝下丈のスカートの前に重ね揃えて押し当てられ、爪先はひっきりなしに地面をたたく。衆目の中でせめて恥ずかしい格好をするまいと必死なのが一目で分かる、躾けられたお行儀のよさを窺わせる我慢だ。が、もはやその小さな腰は小刻みに震えており、乙女の恥ずかしい水門が限界なのがはっきりとわかる。
 きつく両手で支えられた脚の付け根、スカートの奥では、恥ずかしい下腹部の水圧に耐えかねたように、小さなオシッコの出口がヒクつき、ぷくりと膨らむ。小さな出口が緩み、いまにも重ね当てた手のひらの中めがけてじゅじゅじゅしゅわあああと、つつましやかな頼子の外見とは裏腹の、激しくも豪快な水流を迸らせてしまいそうな様子だ。
 すぐ後ろに並ぶ綾は、そんな頼子の肩に捕まるようにして、辛うじて倒れそうになる身体を支えていた。深く「X」の字を描くように交差させれた脚は、ぎゅっと膝を重ねて上下に曲げ伸ばしを繰り返し、尿意に震える女の子の『イケナイ場所』を支えていた。クネクネとよじられる腰は、下腹部のダムの最も脆い場所にのしかかる総水量を少しでも分散させようとひっきりなしに動き続ける。
 しかし、疲れきって言う事を聞かない足は前に歩くどころか、しっかりと地面を踏みしめて立つこともできない。ただただ、太腿を必死になって擦り合わせ、オシッコをせき止めうようとすることだけで精一杯だ。頼子に体重を預け、縋りつくようにして宙をさまよう視線は、ときどき思い出したようにきつく閉じられる。ずん、ずんと乙女の水門を乱暴にノックする身体の内側からの欲望に、綾はぶかぶかの袖を掴むようにして必死に耐えていた。
 スカートの前を握り締め、俯いた頬を長い髪が流れる。熱い吐息が頼子の背中を擦っていた。
 羽衣は、そのすぐ後ろで乃絵と支え合うようにして身体を寄せていた。内股に爪先を曲げ、スカートを持ち上げるような大胆さで、遠慮なく身体の前から深く手のひらを股間へと伸ばす。
 右手を脚の付け根に差しこんで、人差指と中指で下着の上から直接、大事な場所を押さえ込むその様は、思わず好奇の視線を寄せたくなるほど見事な我慢ポーズだ。下着の上からはっきりと『オシッコの出口』ピンポイントで押さえるのは、我慢効率としては最も効果的ながら、それだけ羽衣の状況が切羽詰っていることを知らせていた。めくれたスカートの裾から丸見えの白い下着には、すでにじわじわと黄色い染みが広がっている。
 乃絵もその隣で、おしりを突き出し膝を曲げた前傾姿勢となり、きつく歯を噛み締めていた。身体の内側から膨れ上がる凄まじい水圧に、今にも打ち破られそうな脆い水門へ、ぶるぶると肩を震わせて左手をあてがって耐えている。
 乃絵は羽衣のようにはっきりと『出口』をふさぐのではなく、乃手のひらでおんなのこの大事な部分全体を包み込むようにして覆っていた。きつく抑え込むのではなく、常に動かし、下着の上から『おんなのこ』を撫で、さすり、時には優しく揉みほぐすようにして、押し寄せるに用意を和らげようとしているのだ。
 羽衣も乃絵も、既にその足元には、幾筋もの水流が伝い落ちて、脚元のアスファルトを濡らしている。体内の水圧に負けて噴き出した滴が、下着にぶつかりぷじゅっ、とくぐもった恥ずかしい音を響かせる。膨らみきった羞恥の水風船は、時間の経過とともに激しく収縮を繰り返し、押し寄せる波の激しさはいよいよ強さを増している。懸命にあそこを抑え込むものの、片手だけでは水圧を支えきれないのは明らかで、二人はすぐにでももう一方の手を応援に向かわせるべきだった。
 しかし、寄り添う二人は、その手を指を互い違いに固く繋いで離さなかった。この窮地を乗り切るためには、『おんなのこ』を直接手で押さえ握りしめるよりも、つないだ手でお互いの心の支え逢うことが大切だと理解していたからだ。
 そんな熱々カップルぶりを見せつける二人から視線をそらし、一見、平静を装っているのは千代だ。澄ました横顔をつんとそむけ、『私は他の子たちとは違うの』とばかりに表情を取り繕ってはいるものの、小刻みに震える脚はそれを隠し切れてはいない。革靴の爪先を立てるようにトントンと地面を叩き、制服のスカートのポケットに深く手を差し入れて、そこからぎゅっと下腹部を押さえ込んでいる。
 人前で前押さえなんてするわけないという意志の表れだが、制服の布地にくしゃくしゃに皺を寄せるくらいにきつく下腹部を押さえ込んでいては説得力も薄い。長時間の我慢で張り詰め、少女たちの下腹部を歪めるほどにまあるく身体の外へ向けて「せり出した」乙女のダムを、両手で抱え支えるように。
 あるいは、おなかに宿した大切な命を抱えるように――きちんと背伸びをして、まっすぐ順番の列に並び、けれど千代の頬は赤く、小さく開いた唇からは熱い吐息が漏れていた。彼女もまた限界が近い。
 きちんと背伸びをして待つ千代の後ろで、亜里沙はもはやそれどころの騒ぎではなかった。我慢の限界を超えてしまった彼女の尿意は、既に順番待ちを待つどころの余裕を残していなかったのである。
 亜里沙は水筒代わりに持っていたペットボトルのふたを開け、大きく開いた足の付け根に近づけていた。立て膝にしゃがみ込み、下着を膝までずり下げて股布を大きく引っ張り、ペットボトルの飲み口をオシッコの出口へと押し付ける。
 せっかくバスを降り、公衆トイレまでたどり着いたのに――きちんと『オシッコのできる場所』を目の前にして、亜里沙はペットボトルの中に恥ずかしい排泄をしなければならなかった。
 丸く小さな排泄孔が、白い下腹部の先端にぎゅっと押し当てられる。同時に、中身のぱんぱんに詰まった水風船を針でつついたかのような噴射がはじまった。我慢に我慢を重ね続けたおしっこは量勢い共に半端ではない。透明な容器の中に注ぎこまれる水流の勢いはすさまじく、少女の排泄孔は入り組んだつくりをしているため、小さな飲み口には到底おさまりきらないのだ。熱々のホットレモンティーの多くは小さな飲み口に注ぎ込むことはできず、黄色い水流は溢れて床に飛び散ってしまう。
 小さな容器の中に勢い良く注がれるオシッコは見る間にペットボトルを――亜里沙の『おんなのこ』の代わりされた容器をいっぱいにし、その飲み口から黄色い雫を逆流して噴き出させる。
 女の子がオシッコを途中で止めることはとても難しく、排泄孔をうまく絞って勢いを調節するなんてややこしい芸当は不可能に近い。中途半端に出したおしっこは、却って亜里沙の尿意を加速させる。もういっぱい、もう出すところはないと言っているのに、意地悪なオシッコはたったいま覚えたばかりの女の子の恥ずかしい出口、脚の付け根の水門めがけて押し寄せてくる。
 並ぶ少女達と同じ数だけの、満水状態の乙女のダムが、ずらりと並んで勢ぞろい。しきりに左右に前後に上下に揺れ動きながら、じゅじゅ、じゅううとおまたの間、脚の付け根の奥にある秘密の出口を熱い雫で濡らしてゆく。
 高速道路での悲劇から、何人ものクラスメイト達が、下着を、スカートを、押さえた手のひらを濡らして脱落していった。そんな過酷な道のりを乗り越え、予選とも言える長い我慢を踏破して辿りついた『選抜組』の少女たちに与えられたのは、衆人環視の中、身を隠す事も出来ず、動けず、すぐ目の前の女性用トイレの個室に駆け込むこともできないまま、オシッコ我慢の限界を迎えることだったのだ。
 いまや順番待ちを強いられる2年A組の少女たちの姿は、それぞれ脚の付け根で、1リットル近くの恥ずかしい水を抱え、グラグラ沸騰するティーポットを抱え続ける拷問のようだ。沸き立つ尿意は少女たちの意思を無視して激しく暴れ、股間を押さえ込む手は、揺れ動くポットをひっくり返すまいとして懸命に押さえ持ち上げているのである。しかしその重みに耐えかね、酷使された少女の身体はもはや限界だ。
「あ……ぁ、ぁッ……、だめ……ッッ!!」
 十人いれば、十人分の我慢。お互いを支え合い、励まし合い、それだけ長く我慢できる――なんてことはあり得ない。一つ堰をきれば、それは即座に呼び水となって、左右のダムの崩壊を誘った。行列の中――ずらり並んだダムの奥。もっとも脆い水門が破られ、激しい放水音をぶちまけた。
 ぷしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!
「あっ、あっ、あっ………!!!」
 遂に決壊がはじまったのだ。同時、それは見る間に周囲に伝播し、少女たちはまるでそれを合図にしたかのように、一斉に放水をはじめてしまう。
 連鎖的に水門が押し開かれてゆく。行列のそこかしこで響き始める恥ずかしい水流の音が、高くアスファルトの上に飛び散った。
 一人のオモラシは隣の少女達の尿意を誘い、立て続けにティーポットがひっくり返る。じゅじゅじゅじゅわあああじょわああああああっぶじゅうぅうううぶしゅうっ、びちゃびちゃじゅばばばあ……トイレの順番待ちの列の中で、制服姿の少女たちが一斉に脚元に水たまりを広げてゆく。
 並んだ少女たちの水門が次々にこじ開けられ、大決壊の放水が始まる。制服のスカートの上、股間をきつく握りしめた手のひらを突き破るように、激しい音をアスファルトの地面の上にまき散らし、黄色い滝を出現させてゆく。
 横に広がり飛沫く奔流は、まるでオシッコのナイアガラ。
 恥辱に泣き出す少女達に容赦なく、携帯カメラが向けられた。そう、人混みの中にはじっとこの光景を待ち望んでいた者たちがいた。少女達が『あの』2年A組、『あの』社会見学バスの生徒達だと知って、じっとその後を辛抱強く追いかけてた者たちだ。思春期の少女たちが限界までオシッコを我慢させられ、羞恥と屈辱の中オモラシをする――それを今か今かと待ち望み、渋滞の中、喰らい付くように執拗にその後を追いかけ、少女達が限界を迎え、恥ずかしく脚元をずぶ濡れにさせる瞬間を、固唾をのんで見守っていた不埒者である。
 やめて、やめてよぉ。
 叫ぶ声も届きはしない。フラッシュが焚かれ、シャッター音が刻まれる。揺れ動くレンズは動画の撮影だ。女性用トイレの前の、順番待ちの長蛇の行列という、オシッコ我慢を印象付けるにはこれ以上ない食らう意の格好のロケーション。
 モジモジ、クネクネ、腰を振り足を踏み鳴らし、清楚な制服のスカートの前を握りしめ。遂には顔を真っ赤にして、眼には涙を浮かべ、ついに力尽き果て豪快なオシッコの滝を噴き出させてゆく少女たちの繰り広げる痴態を、一秒も余すところなく永遠に記録に残さんと、下卑た欲望が思春期の少女達をずたずたに切り裂いていく。
「あっオシッコ我慢してるよ! ねえねえママ!! あのお姉ちゃん達、あんなに大きいのにオシッコ我慢してる!! あっあー!! ほら見て、ママ!! お姉ちゃんオモラシ!! オモラシしてるよ!! いけなーいんだー!!」
 親子連れの――おそらくは姉妹なのだろう。幼稚園に通うかどうかのあどけない少女が、佳奈たちを指差して大声を上げる。無邪気な指摘に、少女達の恥じらいは否が応でも加速し、その苦痛は増すばかりだ。2年生にもなってオシッコ――オモラシ。それも、トイレの目の前で。
 ありえないはずの痴態、恥辱。呻き、懸命に足踏みをして下腹部の水門を閉ざそうとしても、もうオシッコは止まらない。永遠に続くかのようにいくつもの豪快なアーチが地面をたたき、初夏の日差しに焼けた黒いアスファルトに、黄色い湖が湯気を上げながら広がってゆく。
 じゅぼぼぼじょぼぼぼぼと出来たばかりのほかほかの黄色い湖面に叩きつけられ、オシッコの『滝壺』の周辺には飛沫と一緒に白い泡まで立ち始めた。
 いっそ女性用トイレを水没させんばかりに、少女たちの身体から噴き出す恥ずかしい水流は、いよいよ激しさを増してゆく――。


 8月の後半あたりから、だいぶ描写も練り込みも粗くなっていてちょっと申し訳ない気分。
 ……お話としてはあと数話残ってるんですが、流石に余裕がなくなってきたので、いったん区切ります。

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