部活動とイジメの話

書くだけ書いてほったらかしになっていたもの。
たぶん二重投稿にはなってないと思いますが……


 学校という特異で閉鎖的なコミュニティでは、いじめはいつも突然始まる。些細な理由とくだらない根拠で選んだ、自分とは“違う”相手を輪の中から彼女を弾くことで、残る多くの安心が得られるからだ。
 いじめの対象に非があるかなんて関係ない。無情で無慈悲なスケープ・ゴート。
 女生徒だけの環境ではさらにその傾向は加速し、より陰湿なものとなる。バスケ部の1年生、碧山愛衣の場合もそうだった。
 さして特別な始まり方をしたわけではないその日の朝。愛衣がいつもの通り学校に向かうと、『放課後、体育館裏まで』とだけ書かれた手紙が一枚、空っぽの上履き入れに入っていた。
「なにこれ。最悪……」
 愛衣はどちらかといえば活発な性格で、部活でもクラスでも皆に溶け込み、上手くやっている自信があったため、自分に嫌われるような要素はほとんど無いと思っていた。だからいじめの被害に遭うなんて想像したこともなく、こんな子供じみた事をする相手の見当もつかなかった。
(誰よ、こんな事するやつ……小学生じゃないんだからさ)
 しかし、現にこうして被害が出ている。やり場のない怒りを抱えながら借りた上履きで一日を過ごし、放課、愛衣は渋々、ひとけのない体育館裏へと向かった。メモに素直に従うのは癪だったが、いったい誰が相手なのかを確かめたいという気持ちもあったからだ。
 そこで愛衣を待っていたのは、バスケ部の先輩達と、同級生が3人。
 ステロタイプな展開に思わず出かけた溜め息を飲み込み、愛衣は彼女たちに声をかける。
「あの、なにか用ですか?」
「用があるから呼んだんじゃない。頭悪いのねぇ」
 先輩の一人が、いかにもな悪役口調で答える。内心爆笑しそうになったのを堪え、愛衣はじっと口をつぐむ。
「生意気なのよ、あんた。1年のくせに部長に口出ししてさ」
「部長も迷惑だって言ってたんだからね!」
「そんなわけだからさ。先輩としてちゃんと指導してあげないとって思ったわけ」
 まるでステレオのように左右で口々に叫ぶ同級生二人の抗議に続いて、先輩がにやにやと笑う。あまりのレベルの低さに愛衣は頭を抱えたくなった。呆れながらじろりと同級生を見、
「あんた達だって1年じゃない。それに、私が誰と話したって勝手でしょ。ガキみたいに嫉妬して、恥ずかしくないの? 先輩までそんな理由でこんな子供みたいなことしたわけ?」
「……そっか。そういう口きくんだ。愛衣ちゃん、反省してくれたらそれで済まそうと思ったんだけどな」
 先輩の一人がそう言うと、いきなり左右の同級生が愛衣の肩を掴む。ちょっと、と声を上げかけた口が無理やり開かされ、そこにプラスチックの飲み口が押し付けられた。
「んぐ、んんぅううっ!?」
 むせかけたところに、ひどく冷たい得体の知れない液体が流れ込んでくる。本能的に危機を察し、咳き込み暴れる愛衣だが、抵抗空しく、液体はみるみるうちに愛の喉奥へと流し込まれてしまう。
「げほっ、ごほ……っ、な、なに、するの、よっ……」
「えらいえらい。全部飲めたじゃない。……さ、もうすぐ部活の時間だし、行きましょ碧山さん」
「ぃ、痛い、放して、っ。ちょっと、やめっ、離してっ」
 極上の笑顔を覗かせながら、からん、と空になった500mLペットボトルを投げ捨てた先輩の指示で、愛衣はそのまま直接、練習場所の体育館へと連れて行かれることになった。
 その後、すぐに練習は始められた。何も知らない他の部活メンバーに混じって、準備運動、基礎練習と、およそ1時間のメニューをこなした頃には、愛衣の様子がおかしくなり始めていた。
「ほら、しっかりしてよ愛衣。まだヘバるには早くない?」
「ねー? 先輩、愛衣ちゃんが真面目にやってませんよー」
「っ、……い、いいから、そんなことより……と、トイレ……っ」
 顧問の教師も不在の中、苦しげに息を荒げる愛衣。有無を言わせずに練習を強いられた愛衣の下腹部の中は、いつの間にか今にも破裂しそうなほどパンパンに恥ずかしい液体が詰め込まれている。
 さっき飲まされたモノが原因なのは明白だった。まるで膀胱を絞り上げるように、びくびくと蠕動する熱い衝動が一気に下腹部を駆け下る。猛烈な尿意を催して前屈みになる愛衣の震える手脚を、先輩達の悪意に満ちた視線が無遠慮に這い回った。
「お、お願いしますっ、トイレに……行かせてくださいっ」
「だーめ。却下。さっきから全然ダメじゃない。碧山さん。真面目に練習しない子には特別メニューよ」
 こんな嫌がらせをする相手に敬語を使うことを強いられる屈辱に、愛衣の顔は耳まで赤くなる。しかし先輩達は取り合おうともせず、強いパスを愛衣めがけて放つ。震える手で上手く捕れるわけもなく、ばしん、と下腹部に響いた衝撃に、じゅわっ、と下着の奥に熱い湿り気が広がる。
「ほら、愛衣ちゃん、ボール取ってきて! 先輩もダメだって言ってるじゃん。ねえ?」
「まだ全然途中なんだから。最後まで終わらせるまでトイレなんか行っちゃダメだよ」
「そ、そんなの……、無理っ、無理よぉ!!」
 今にも崩れ落ちそうな膝を寄せ合い、下腹部を絞り上げるようにして押さえ込む。懸命におしっこを我慢しなければ今にもこの場で漏らしてしまうのだ。そんな愛衣の恥辱の姿に周囲からみっともない、と嘲笑が飛ぶ。じくんとおしっこの出口が熱くなり、込み上げてくる尿意に、愛衣は目の前が暗くなる。
 放たれるボールをほとんど無視するように避けると、愛衣はドアへと背中を向けていた。
「ちょっと、どこ行くつもり?」
「と、トイレ……出ちゃう、おしっこ……っ」
 だが、ふらつく足で、圧倒的多数の先輩達を振り切ることができるわけもない。体育館を出たすぐのところで、愛衣は捕まり、彼女たちに取り囲まれてしまう。
「碧山さんったら、そんなにオシッコ行きたいんだ? 我慢できないんだねぇ、いい歳してさ」
 必死に許可を請う愛衣の下腹部を、先輩がさわさわと撫で上げる。悪意ある優しさをこめ、ことさらに尿意を加速させるその動作に、愛衣は声をあげて身をよじる。
「や、やめっ、出ちゃ、ぅぅ、っやめて、くだ、ぁいっ」
「ん? 何言ってるのかよく聞こえないよ、碧山さん。なぁに?」
 唇が震え、歯の根が合わず、呂律も回らない。限界を超えた尿意が身体のコントロールを奪い去る。閉じ合わせた足の奥にじゅじゅぅ、と熱い雫が滲みだす。目の前に迫る絶望に、愛衣は必死に抗おうとした。
「っっ、離し、てっ!!」
 力を振り絞り、手足を抑えつけようとする少女たちの腕を、強引に跳ね除ける。
「っ、痛っ!?」
 悲鳴を背中に、愛衣は渡り廊下を走る。誰かが突き飛ばされて倒れたかもしれないけれど、あんな強引な手段で愛衣を辱めようとしたのだ、いまさら遠慮なんかしていられない。体育館横のトイレへと一目散に駆け込み、一番手近な個室のドアを掴む愛衣だが、
「え、嘘。なにこれ!?」
 愛衣は悲鳴をあげた。飛び込んだ個室のドアの鍵が、ご丁寧にも壊されていたのだ。慌てて隣の個室を確認するが、状況はまったく同じ。さらに内股で倒れこんだ三つ目の個室、全開のままで固定されたドアの奥で、愛衣の身体を猛烈な震えが襲う。這い降りる熱が腰骨から恥骨を伝い、股間の先端へと集まってゆく。
「ぁ、あ、あっあぁ……」
 下腹部を圧迫して膨らんだ水圧がそのまま、一気に出口へと殺到する。下着と体操着に包まれた足の付け根で、じゅじゅぅ、ぶしゅうっ、と激しい水音が響く。愛衣の股間を見る間に染め上げ、広がったお漏らしの大きな染みから、前屈みになった足の間を押さえていた手のひらに、勢いよくおしっこが注がれる。
 たちまち手のひらを溢れた黄色い雫は、トイレの床のタイルにぱちゃぱちゃと飛び散り、隅の排水口へと流れて大きな川になっていった。
「ふふーん。愛衣ちゃん、どうしたのかなー?」
「愛衣ちゃん、おトイレは間にあったかしら?」
 何もかもを察したような、同級生達の声。皆の前であろうことかオモラシの瞬間を見られ、羞恥にがくがくと身体を震わせながら、愛衣は必死におしっこの出口を締めつけようとする。
 けれど、力の入らない括約筋では押し寄せる濁流の勢いを塞き止めることはできず、排泄孔をひしゃげさせ、ぶしゅ、じゅじゅぅ、と噴き出す熱い水流の勢いを乱すだけだった。愛衣はただ、酸素の足りない金魚のように、言葉にならないまま口を半開きにして動かすばかり。
 トイレの床一面を占領するおしっこの大河の、水源となった愛衣の股間からは、なおも激しく湧き上がっては滝のように流れ落ちる恥辱の水流が、繰り返しタイルを叩いていた。
(了)

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