雨の日のみずたまりおもらし


 ツイッターで書いたお話の加筆修正版です。


 11月の月曜日は午後からあいにくの雨。近付く冬を感じさせる寒さは雨雫の中で一層増しているように感じられた。
 強めの風が吹き付けるたび、薄手のコートに染み通る冷たい雫が少女の身体を冷やしてゆく。
 昼過ぎからの雨は強さを増す一方。ロッカーに置いてあった折り畳み傘は小さくて、斜めに吹き付ける雨風の中に大事なノートの入った鞄が濡れないようにするので精一杯だった。
 朝にテレビで見た天気予報では午後から曇り、ところにより雨。こんなに降るなんて聞いてなかった。アスファルトに広がる水たまりが忙しなく音を立てて雫を跳ねさせる。靴下はすっかり濡れ、革靴の爪先にまでじんわりと水が染み込んでくる。
 降りしきる11月の雨の冷たさに、少女の濡れた足先が、スカートの下の剥き出しのふくらはぎが、しきりに小さく震えていた。
 びゅうと風が吹き付ける。通りの向こうに点る横断歩道の赤信号に、少女は傘を斜めにして立ち止まった。
 二車線の車道を行き交う車が、道路の隅にできた水たまりから飛沫を散らして走ってゆく。
 風に煽られ、ゆらゆらと前後する薄緑の布地はすっかり水に染みていた。小さな折り畳み傘のつくる頼りない雨よけ屋根の中、大事な鞄を抱え、背中を丸めて傘の柄を握り締め、少女は焦るように地面を踏み鳴らす。
 ぱちゃ、ぱしゃ、交互に踏み重ねられる濡れた革靴が、足元の水たまりを叩く。
 白い息の向こうに、赤信号をみつめながら、少女の口元がきゅっと緊張を深めた。変わる様子のない赤信号、速度を緩めず交差点を走り抜ける乗用車の列。ざあと飛び散る水滴。
 吹き付ける風に煽られ、頼りなく骨を震わせる傘の柄にしがみ付くようにして、少女は落ち着きなくその場に身をよじり、震わせた。
 はっ、はっ、はあっ。
 荒い息遣いが、白い吐息になって少女の口元を染める。
 大きな鞄を握る手をもどかしくも伸ばし、押さえ付けたスカートの下。少女の太腿がしきりに擦り合わされていた。
 ぶるりと震え竦む腰の動きは、降りしきる雨風の冷たさと寒さだけが理由ではない。這い寄る冬の足音と共に、少女の下腹部にじぃんと甘い痺れが響く。きつく閉じ合わせた脚の付け根で、刻一刻と存在感を増す重み。下腹部の底、身体の一点に集まるむず痒さ。
 急な雨と、押し寄せる寒さと。
 いくつもの不幸な偶然が重なって、思わぬタイミングでやってきた尿意は、少女の当初の予想をはるかに超えるスピードで、下腹部を占領しつつあった。
 ◆ ◆ ◆
 傘の下、少女の口元からはしきりに白い息がこぼれる。乱れた息遣いは、落ち着かない足踏みと、もじもじと寄せ合わされる太腿と同じ理由のもの。
 ん、くぅ…っ。
 かすかな喘ぎ声が、丸く鳴った少女の背中を震わせた。コートの裾、スカートから覗く脚がよじり合わされ、きゅうっと緊張に強張る。
 冷たい雨に濡れる制服の内側。よじり合わされた足の付け根で、下着の奥の乙女のダムの水門は、急速に高まる内部の水圧に耐えかねて、ひくひくと収縮を繰り返ていた。
 冷え切った手足とは対照的に、少女の下腹部に揺れる熱水の存在感は増す一方だった。まるで身体の一カ所に、全身の熱が吸い上げられていくかのよう。こぽりこぽりと膨らみ集まる、熱い衝動が少女を苦しめる。
 横断歩道の前、落ち着かない足元はなんども濡れた地面を踏みしめ、対して噛み合わされた歯が寒さに震える。ぎゅうっと握り締めた鞄で身体の間を抑えながら、白い息を吐く少女の表情は硬い。
 きゅうんっ。少女の脚の付け根に甘い痺れが走る。これまでよりも強い波が下腹部のダムに押し寄せた。
 内部に高まる水圧にひくりと震えた排泄孔を、膝を交差させてぎゅっと締め付けて。
 少女は唇を噛み、荒い息を懸命に押し殺して歩行者信号を睨む。恐らくは、ほんの数十秒のはずの――しかし、焦り戸惑う意識の中では何時間にも長く感じられる、『止まれ』の赤い光。
 横断歩道を塞ぐ信号は、募る尿意を抱えて苦しむ少女に、なお耐えがたい我慢を強いる。
 雨の中、人通りのない交差点。懸命に身をよじる少女に合わせて、緑の傘が左右に揺れる。ただでさえ小さな折り畳み傘が雫を飛ばして翻れば、吹き付ける雨は容赦なく少女の下半身を打った。
 足元から這い上り、染み込む寒さに、少女の身動ぎはますます激しくなり、足踏みのリズムは乱れて早くなる一方。
 は、はっ、はあっ、と断続的な息遣い。焦りを滲ませ、傘の柄を握る少女の手にぎゅうっと力が籠もる。
 本当なら、今すぐにでも疼き暴れる脚の付け根をぎゅうっと握り締めてしまいたいのに。もう、両手できつく押さえていなければ、おしっこが漏れてしまいそうなのに。
 傘と鞄に塞がれた左右の手は、限界を訴える股間の応援に向かうことは許されなかった。
 切なくも身悶えするおしっこの出口が、ひくひくと震える。
 ぷくりと膨らみ開きそうになるおんなのこの花弁を、ぱんぱんに膨らんだの水袋の口を、唇を噛みしめてぎゅうっと引き絞る。
 おしっこ。おしっこ、したい。おといれ、はやく。
 おしっこ、でちゃう。
 だめ、がまん、がまん。
 だめ、でちゃう。おしっこ、おしっこ、おしっこ!
 切羽詰まった尿意に頭の中にはもうそれしか浮かんでこない。自由にならない手のひらで、脚の付け根の代わりに汗ばむ傘と鞄を握り締め、少女は腰を揺すり、身体をよじって襲い来る尿意の波に耐える。
 ちかり、ちか、ちか。交差点の向こう、別方向を向く歩行者信号が点滅を始める。もうすぐ、もうすぐだ。切り替わる信号をもどかしく見つめながら、少女は傘の柄を握り締め、息を押し殺して信号が変わるのを待った。
 ――ちか、ちか、ちかり。
 赤から青へ。「とまれ」から「すすめ」へ。切り替わる歩行者信号はまるでスタートフラッグだ。少女は足早に交差点を飛び出した。
 震える脚を懸命に伸ばし、横断歩道を精一杯の大股で急ぐ。ぐずぐずしていたらまた信号が変わってしまう。また変わるまで待たなくちゃいけない。
 ぱしゃん、踏み出した足が水飛沫を散らす。冷たい雫が靴下に染み込み、ひやりと足首を、ふくらはぎを撫でる。ぶるりと這い上がってくる冷たさに身を震わせると、下腹部のダムが水面を揺らす。
 踏み出す一歩ごとに、下腹部に響く震動が切ない欲求を際立たせる。刻一刻と増す尿意を必死に堪え、押し殺して、少女は横断歩道を駆け足で渡りきった。
 少女の家は、この交差点を渡って右に曲がった先にある。
 しかし、彼女はそのまま真っ直ぐ、向かう通りの右端の煉瓦塀を回り込むように、濡れたアスファルトを走ってゆく。
 引っ越して間もない少女は、自宅付近の道にも不慣れだ。土地鑑の覚束ないこのあたりの一帯で、唯一彼女が知っているトイレの在り処――小さな市民公園へ。
 白い息が雨の中に消える。
 降りしきる雨の向こうに、小さなクリーム色の屋根が見えた。小さな公園の一隅にある公衆トイレ、お世辞にも綺麗とは言えず、普段なら絶対に使わないような用足し場。
 それでも。限界寸前の尿意を抱え、一刻も早くこの耐えがたい苦痛からの解放を欲する少女にとっては、そこはいまや唯一、手の届く範囲にある『おしっこのできる場所』なのだ。
 逸る心とは対照的に、猛烈な尿意に少女の脚元は覚束ない。タイル張りの公園の足元は滑りやすく、内股に震えるよちよち歩きでは急ぐこともままならなかった。
 きゅん、きゅううんっ。強い波になって押し寄せる尿意が、少女の意識を揺さぶる。胸元に揺れる傘の柄を握り締め、もう一方の手は、乱暴に鞄を服の上から股間へと押し付ける。
 だめ、でちゃだめ、だめ。
 無慈悲に進む限界へのカウントダウン。高まり続ける排泄欲求。
 じゅ、じわ、じゅうっ。閉じ合わせた脚の付け根の奥、押さえきれない熱い湿り気が断続的に吹き出しては、下着の股布にじわじわと広がってゆく。
 少女の揺れる視界は、公園の向こうにあるクリーム色の屋根の下、女性用トイレの赤いマークに張り付いていた。
 もどかしくも自転車除けのポールの間をくぐり――
 そうして、焦る気持ちに、足元がお留守になっていたか。内股に腿を擦り合わせ、覚束ない歩みがいけなかったか。地面の小さな凹凸に、濡れた革靴の爪先がが擦れる。
 ずるり。靴底にとっさに感じた違和感。大きくバランスを崩してつんのめった姿勢に、少女は反射的に反対の足を延ばす。
 濡れたアスファルトを捉えきれず、革靴が滑る。踏ん張ろうとした靴底も、濡れたアスファルトには無力だった。
 ぐるりと回転する視界。緑の傘が宙を舞う。
 ――ずるっ、どしんっ、べちゃんっ!!
 とっさに丸めた腕の中に鞄を抱え、少女はそのまま仰向けに倒れ込んだ。身体を包み込む浮遊感に、息を飲み、ぎゅっと目をつぶる。
 少女の視界は明滅し、音も何も聞こえなくなる。
 雨の中。小さな身体はくるんと回り、大きな水たまりの中へと吸い込まれてゆく。少女が濡れたアスファルトの上に激しく尻餅をつくと同時、びちゃんっ、水たまりの中にひときわ激しい飛沫が飛び散る。
 大事な鞄を庇おうとして、突き出したおしりを水たまりの中に叩きつけてしまった格好だった。倒れ込んだおしりから、突き上げるような落下の衝撃が突きあげる。
 転倒の衝撃で緩んだ手の中から、風に煽られて傘の柄がもぎ取られた。
 びゅうっと風に舞った傘が、くるくると灰色の空を横切り、少し離れた地面に落ちて。
 ざああっと強い雨が、遮るものの無くなった少女の全身へと打ち付けられる。
 っ……!!
 数瞬遅れて。着地の衝撃が少女の全身を貫く。ぐうっと身体の中をせり上がった圧迫感と共に、肺の中の空気が押し出された。
 はあ、っ。
 ぱしゃり。おしりを庇おうとした手が、浅い水たまりの中へ沈み、じんと鈍く痛んだ。髪に、顔に、吹き付けるつめたい雨に、たちまち髪が濡れて首筋に、おでこに張り付く。
 少女が詰めていた息を吐き、目を開ける。スカートのおしりを、ソックスの足元を、剥き出しの腿を。下半身はたちまち水浸しとなり、制服が色を変えてゆく。
 たちまち、少女の腰奥にまで染み込む、11月の冷たい雨。
 身体の芯にまで浸透してくるイケナイ冷たさに。
 ――ぶるりと、少女の腰が震えた。
 あ、あ、だめ、だめっ、
 切羽詰まった声は、足の付け根に響くじんと熱い疼きへのもの。スカートの奥、きゅうんと切なく衝動が震え、ひくんひくんと乙女の部位が収縮する。
 転倒と尻餅の衝撃で、下腹部奥の水袋は激しく揺さぶられ、圧迫されたていた。体を折り曲げた姿勢は一層強く少女のダムを刺激し押し潰す。雨の中。少女が懸命に抱え込んでいた水袋がひしゃげ、たった一つの出口が一気にこじ開けられる。
 だめ、だめ、だめっ!
 酷使された水門は。もはやその水圧を支えきれずに押し破られる。
 股間に張り付く薄い布地が、じわりと溢れる雫にその色を変えてゆく。乙女の部位を守る神聖なる布地は、水たまりに濡れ湿り、もはや水流を遮る役には立たなかった。
 しゅる。しゅう。しゅううーーーっ。
 細い隙間を、勢いよく通り抜ける水流の音。噴射するほとばしりが濡れた布地にぶつかって、染み出し溢れながら外に噴き出す音。
 それは、少女の限界を知らせる合図だった。
 股間を貫く熱く激しい衝撃。堪え続けた内圧が噴き出す瞬間の解放感に、少女は激しく身動ぎする。
 じゅっ、じゅうううっ、ぶしゅうぅうううっ、
 足を滑らせ転ぶ瞬間、濡れたタイルの上に足を踏ん張ろうとしたため、尻餅をついた少女の脚は大きく開かれたままだった。
 スカートはめくれ、少女の太腿までが露わになって。思うように足を閉じることもできないまま、大股開きで丸見えの下着の股布部分から、黄色い奔流が弾け散る。
 濡れぼそった布地の奥で、水門が大きく押し開かれた。
 はち切れんばかりに膨らんだ下腹部のダム。その水圧は凄まじく、宇水布地を貫通し、激しい勢いでほとばしる。
 まるで、その噴射圧で下着の布を突き破り、吹き飛ばしてしまわんばかり。
 野太い水流はそのまま地面の水たまりへと叩きつけられ、水面をかき混ぜ泡立てるはしたない音を響かせる。
 やだ、だめ、とまって、とまってぇ!
 少女は、反射的に脚の付け根へと手を伸ばし、下着の上から股間を握り締めようとした。しかし、いくら外から力を加えようとも、ひとたび開いた亀裂は広がりこそすれ閉じることはなかった。
 慎み深き乙女の理性をかなぐり捨て、少女の下半身は下品な排泄の喜びにうち震え、その制御を脱して下腹部ダムの緊急放水を強行する。
 懸命な抵抗もむなしく濁流の崩壊を押しとどめることはできず、少女の指が押さえ込むその下で、噴き出す水流はなお勢いを増すばかり。押さえた指の隙間から、幾筋もの水流に別れて噴き出し、水たまりへと叩きつけられた。
 ぶじゅうううっ、じゅばばじゃじゅううっ。
 押さえ込んだ手のひらに、痛いほどにぶつかる激しい水流。冷えた指を火傷させそうなほどに熱い温度が、じわじわと、冷たい水たまりに濡れた下半身を浸してゆく。
 ……あ、ぁ、あ……あっ……、だめ、……だめぇ……。
 抵抗の声も弱々しく。放水の解放感に下半身はうち震え。手のひらは噴き出す温かい水流の直撃に包まれて。
 緊張と不安に委縮していた少女の全身が、徐々に弛緩してゆく。
 ぶじゅうっ、ぶじゅじゅぅ、じゅぅ、じゅごぉーーーっ。
 猛烈な排泄は止まらない。乙女の水門は全開となり、激しく黄色い水流を足元へと噴き出させていた。波打つ奔流は少女の白い下着を色濃く染め、水面に激しく波紋を揺らし、迸り、泡を立てて噴き出し続ける。
 あ……ぁ、おしっこ、でちゃう……。ぜんぶ、でちゃう……っ。
 弛緩してゆく全身のなか、辛うじて残る理性が、羞恥の熱水を噴き出す股間を、左右の手で押し包み、押さえ込もうとする。
 両手の指で、手のひらで、激しく噴き出す自分のおしっこを受け止めながら。少女は脚の付け根、桃色の部位に響く熱っぽい刺激に身体の芯を貫かれながら、己の欲望に身を任せてゆく。
 水たまりに浸かった腰が揺すられ、ぱしゃりちゃぷりと音を立て。
 俯いたうなじを雨に濡らし、髪を頬に張り付かせながら、乙女の赤い唇がか細い喘ぎをこぼす。
 いまや少女の下腹部は排泄の快感にうち震え、脚は力なく伸ばされて痺れるばかり。開かれた脚の付け根、股間のダムの水門は全開となって、凄まじい放水の勢いのままに、ほとばしるおしっこを足元の水たまりへと注ぎ込む。
 すぐ目の前には公園のトイレ。
 少女が求め急いだ『おしっこをするための場所』。
 しかしその目前で、もはや無力にも動けず、仰向けになって尻餅をついて。少女は開いた足の間から、地面の水たまりの中へとおしっこを噴射し続ける。下着を貫きじょぼぼと波を打って溢れ泡立つ黄色い奔流が、冷たい水たまりの中にじんわりと温かさを足してゆく。
 乙女の熱水を注がれて、いつしか水たまりは水位を増し。水に浸かった下着の股間部分は、水面下に触れてなおもじゅじゅじゅうと噴射音を響かせる。
 だめ、おしっこ、おしっこ、だめなのに……っ。
 ……おしっこ、あったかい……きもちいい……っ
 びしょ濡れになって足に絡まるスカートに、波打つ水面ががぼりと革靴を沈ませる。すっかり濡れ湿ったソックスに。噴き出す水流が水たまりをみるみる温めてゆく。
 放心する少女の目元から、涙があふれ、零れ落ちる。
 大きな水たまりの中央に。雨に打たれながら座り込んで。
 自分が噴出させた熱いおしっこの温度を直接、感じながら。少女は何度もしゃくりあげて喉を震わせる。
 アスファルトの上へとなお猛烈な勢いで噴出をつづける少女のおしっこは、大きな大きな水たまりの中に、波打ち色濃く広がる黄色い領域をつくりはじめていた。 
 恥ずかしい熱水を注がれ続けて水位を増した水たまりは、雨の中その輪郭を大きく広げ、流れ出して――アスファルトの端にある金属製の排水口へと流れ落ちてゆく。
 ぶじゅじゅじゅうぅ、じゅううううぅ、しゅうううううーーーっ、
 ざぼぼっ、ばちゃばちゃばちゃっ、じょろろろろぉお…
 弱まることもなく、吹き付ける風と雨。冷たい冬の空に打ち付けられながら。少女の排泄はいつまでも終わることなく、大きな大きな水たまりとなって、雨の中を流れてゆく。
 肩を震わせ泣きじゃくる少女の視界の先。
 緑の折り畳み傘は開いたまま空を向き、雨に濡れて揺れていた。
 (了)
 

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