魔法学校のお話。

 
 くす。部屋をうろうろ、もじもじそわそわ、エリザちゃんの足は小刻みに震えて落ち着きがない。いつもはさっそうと箒を乗りこなす脚も、いまはせわしなくステップを踏み続ける。
 だんだん『おしっこなんてしたくないですっ』って態度が辛くなってきたみたい。さりげなくスカートの上からお腹をさすったり、膝を重ねてみたり、くねくね揺れたり、おしっこガマンの限界を教えてくれるサインはどんどん激しくなってきてる。
 もう今すぐにでもおトイレに掛けこんで、スカートをぐぃってたくし上げて、かわいらしい白のしるくぱんつを引き下ろしたくてたまらないんだ。
 ボクが召喚した水精さんの活躍で、エリザちゃんのお腹の中、おんなのこの秘密のティーポットには、今にもあふれだしそうなくらい恥ずかしいホットレモンティーがたぷんたぷんのはず。
 今なら、どんなカッコいい男の子の前だって、ちょんとおなかをつつかれれば地面にいっぱいおしっこを撒き散らしてしまうに違いない。
「そ、その、アリスさんっ……」
「ん? なに?」
「……ぉ……」
「どしたの? よく聞こえないよ?」
「……っ……!!」
 恥ずかしさと怒りに真っ赤に顔を染めるエリザちゃん。
 そりゃあそうだろう。あんなに“できそこない”って馬鹿にしていたボクに、おまたを押さえてもじもじくねくねしながら、おしっこがしたいです、なんて『お願い』しなきゃいけないんだから。
 でも、このままじゃ時間の問題なのはエリザちゃんも分かっている様子。
 ちらちらとボクの方を見ながら、それでも5分くらい必死にガマンを続けて、
「アリス……さんっ……!!」
 ついに、まっかになってエリザちゃんは覚悟を決めた。
 中腰になってつき出したお尻を、前と後ろから両手でぎゅうっとにぎって、むき出しのぱんつが見る影もないくらいにくしゃくしゃにシワだらけ。
「おねがい……お手洗いにっ……いかせてちょうだい……っ!!」
 ちょっと目に涙をにじませながら、エリザちゃんは言った。
 くす。ちょっといいかも。こうやって『お願い』されちゃうのも。
 でもボクは頷いたりしない。“できそこない”なのはほんとうのことだから許してあげるにしても、ボクのことを男の子みたいってバカにした復讐はこれくらいじゃ終わらない。ちょっとくらいで許してあげちゃ意味がないのだ。
 ボクはエリザちゃんに近寄ると、ぷるぷる震えているおなかに手を当てた。
「ふぁっ、ああぁん……っ……」
 なんだかエッチな声。エリザちゃんのおなかは、まるで石みたいにぱんぱんに張っている。スカートもきつく食い込むくらいになっていて、どれだけおしっこをガマンしているのかがすぐにわかった。
「くす。トイレいってどうするのかな? エリザちゃんみたいな綺麗で頭のいい子は、おトイレなんかいかないんでしょ?」
「ち、ちがっ……ダ、メ……も、限界……なのっ……本当に、もぅ、……我慢、できな…っ」
 はぁ、はぁと肩をおおきく上下させて、切なそうに脚をこすり合わせるエリザちゃん。もうじっとしているだけでも辛いんだろう。おなかのなかでおしっこが暴れだして、それをなだめるので精一杯。いつもの強気な目もすっかり垂れ下がって、しゃくりあげるようにボクを見上げる。
 くす。本当に可愛いなぁ。
 エリザちゃんの我慢がとっても気に入ったボクは、精霊語で命令をつぶやいて、エリザちゃんのおなかの中の水精さんにさらに50cc、おしっこを追加してもらった。
「ふぁあああああああっ!!!」
 まるで、頭からつまさきまで一本の棒をつき通されたみたいに、ぴぃんっと全身を硬直させて悲鳴をあげるエリザちゃん。
 エリザちゃんのおなかに触れている手のひらから、おんなのこの秘密のティーポットの中で、おしっこが渦を巻いて暴れるぎゅるぎゅるって音が伝わってくる。
「や、やだぁっ……おねがい……お手洗いに、はや、くっ……」
「ふーん、そんなに手が洗いたいの? くす。エリザちゃんってきれい好きなんだね」
「やめてっ……さわらないでぇっ……でちゃう…でちゃううっ……」
 つんつん、と伸ばした指でエリザちゃんのおなかをつつく。
 それだけでエリザちゃんの脚はふらふらとバランスを崩し、いまにも倒れそうにあっちへもじもじ、こっちへくねくね。恥ずかしいおしっこ我慢のダンスを踊る。ちょこんとつき出されたお尻はまるでアヒルのしっぽみたい。
「おねがいっ……いじわる、しないでっ…………ぉしっ、こが……おしっこが……でちゃいそうなのっ……」
 ついに、そんな恥ずかしい言葉まで口にして、ボクにおトイレをねだるエリザちゃん。もうきっと、エリザちゃんの頭の中はトイレのことでいっぱいだ。
「くす。そんなに限界なんだ? エリザちゃん、そんなにおしっこしたいの?」
「…………っ!!」
 唇を噛み締めまっかになって、小さくコクン、と頷くエリザちゃん。
「くす。それじゃあ仕方ないかなぁ」
「はやっ、早くっ……早くぅっ……」
 もったいぶってみせるボクの前で、エリザちゃんはスカートの上からぎゅうぅうっと股間を握り締めて足を震わせる。もうそれ以外のカッコをしたら、限界ギリギリのバランスが崩れちゃうにちがいない。
 くす、ほっぺもほんのり桜色で、うなじに髪が汗でべったり。はぁはぁ荒い息もなんだかとってもいやらしい。そんなエリザちゃんをまだまだずっと見ていたくて、ボクはことさらにゆっくりと口を開く。
「それじゃあ、つれてってあげる。エリザちゃん、もうひとりじゃあるけないでしょ?」
 くす、と笑顔を浮かべて。
 ボクは震えるエリザちゃんの手を取った。
「あ、ま、待ってぇ……も、もっと、ゆっくり……っ」
 悲鳴を上げるエリザちゃんを引っ張って、一階、五年生のための男子トイレに到着する。階段のすぐ下にあるここは、場所のせいかいつも大混雑する。おとこのこはおんなのこよりもずっとおしっこにかかる時間がみじかいはずなのに、休み時間はいつも行列ができちゃうくらいのとっときの場所なのだ。
 そして、女子トイレは階段の上にあって、場所的にも最適。ここが、ボクがこの魔法の仕上げに用意したさいごの舞台だった。
「はい、ついたよエリザちゃん?」
「え、っ……」
 プレートにきざまれた「おとこのこ用」のマークを見て、思わず言葉を失うエリザちゃん。やっとつれていってもらえると思った場所が、男子トイレじゃそれもしかたないかな。
 そんなエリザちゃんの腰をとんとんと叩き、ボクはエリザちゃんをうながした。
 ひんっ、と叫んだエリザちゃんは、ボクをおそるおそる振りかえる。
「う、うそ……よね…?」
「ううん? 嘘なんかついてないよ? だってエリザちゃん、おしっこしたいんでしょ?」
「で、でも、ここっ」
「ほら、早く行かなきゃ。オモラシしちゃうよ?」
 ここ以外で一番近いトイレまでは、直線距離で400m。おしっこを我慢して死の行進まっさいちゅうのエリザちゃんには地獄よりもとおいとおい距離。
 “オモラシ”の単語に、エリザちゃんがびく! と背中をふるわせる。そりゃあエルヴィンバレーの首席が学校でオモラシなんてとんでもない。ぜったいにぜったいに避けなきゃいけないことだ。
 かたかた震えるエリザちゃんの耳元にそっと唇を寄せて、くす、と囁いた。
「もうすぐ休み時間だけどね?」
「っっ――!!」
 そして、さらにおしっこを50cc追加。
「――――――――!!」
 エリザちゃんの声にならない叫びと同時に、ぱたぱたっ、とちいさな雫が床のタイルに散らばった。とび散る水滴に思いっきり膀胱を刺激されて、エリザちゃんはぎゅぅっと体を縮める。
 きゅきゅっ、と上履きがタイルの上でこすれて、エリザちゃんが歩くのをやめてしまう。
 きっと今、エリザちゃんはとんでもないおしっこの大波と決闘中だ。
「くふふ。ほらほら。急がなきゃダメだよエリザちゃん? せっかくおトイレに来れたんだから、ちゃんとおしっこはおトイレでしないと、さ」
 びく、と背中を伸ばして。それでももう理性の限界なのか、ずり、ずり、とゆっくりゆっくり慎重に足をうごかしはじめるエリザちゃん。そのゆっくりした歩みとは正反対に、時計の針はかちかちと進んでゆくのをやめない。
 あと40秒、30秒、20秒、
「っっ!!」
 目を瞑って男子トイレに飛び込んだエリザちゃんは、まっすぐに個室にとつげきしていった。ドアに手をかけて、ぐいっとひっぱる。
 けれど、
「う、うそっ……なんでっ!? なんでっ!?」
 くす。エリザちゃんちゃんはパニックになって。がこんがこんと必死になって個室のドアを引っ張る。それでももちろん開くわけない。冷静になってさえいれば、ドアに掛けられた『錠前』の呪文の存在にも、それを打ち消す『開錠』の呪文が7年生の必修科目なことにも気付けたんだろうけど。
「くす。あと10秒で授業おしまいだよ? エリザちゃん。男の子がきちゃうけど、いいのかなぁ?」
「いやぁ、ああああああっ!!!」
 もう、エリザちゃんはなりふりかまっていなかった。
 おなかの中であばれるおしっこの思うがまま、おんなのこなら絶対にやっちゃいけないこともおかまいなしだ。
「だめぇ、もうだめえええっ!!!」
 エリザちゃんは壁の反対側、男の子が立っておしっこをする便器に飛びつくように身体をおしつけた。スカートを、まるで引きちぎってしまうんじゃないかってくらいの勢いでひっぱり上げて口にくわえる。
 たおれそうになる身体を支えるため、ぎゅうぅ、と水の流れる管を握り締め、もう一方の手でぱんつをぐいぃいいっと真横に引っ張る。
 引き伸ばされたぱんつの隙間から、エリザちゃんのすべすべつるつるなあそこが覗いた瞬間、
 ついに、今まで積み重ねてきた女の子のプライドも、なにもかもが消え去っちゃったようだった。
「ぃやぁああああっ……」
 はじらいもためらいもなく、ぶじゅうううううううううううううううーーっととんでもない音を立てて吹き出す極太のおしっこが便器にぶつかって、びしゃびしゃと辺りを濡らす。
 ものすごい量だった。ボクが魔法で追加した分のおしっこをさしひいても、エリザちゃんはずいぶんいっぱいのおしっこをガマンしていたらしい。あれだけの量をためておけるなんて、やっぱりお嬢様は違うんだね。
 エリザちゃんみたいに“立派な貴族”の子は、どれだけおしっこがおなかのなかにいっぱいでも、そんなことは少しも顔にだしたりしないで、こっそりこっそりガマンをしてるんだろう。
 でも、ものすごい量のおしっこをおなかにためてるってことを知られちゃうのは、それよりもずっとずっと恥ずかしいコトだってこともわかってもらわないとね?
「え……おい、なにやってんだあの子」
「ちょ、ここ男子トイレだろっ!?」
「うわぁ……」
「や、やだっ、見ないでっ、見ないでぇええ!!!」
 授業を終え、入ってきた男の子達が一斉にどよめいて、エリザちゃんのことに注目してしまう。くふふ。耳まで真っ赤になっていやいやをしても、エリザちゃんのおしっこは全然止まらない。そりゃそうだ。だってボクの水精さんはいまもエリザちゃんのおなかの中で水を作り続けているんだから。おかげでエリザちゃんはこの一瞬を無限に味わい続けられるってわけ。
 エリザちゃんはとっても恥ずかしい立ちションのカッコで、おしっこの孔を全開にして思いっきりおしっこを出し続ける。
 ぶしゅううぅーーーっ!! じょっ、じょじょじょじぼぼぼぼぼぼーーっ!!
「あぁああっ、あああああっ、待って、だめ、だめええっ!!」
 おしっこの孔から吹き出すおしっこは、陶器の中にぶつかって泡立ち、渦を巻いてごぼごぼと流れてゆく。うーん。すごいなぁ。
「……女の子ってあんな風におしっこするんだ……」
「うわ、すげ……」
「どんどん出てくる……全然とまらないよ? すごく我慢してたのかな……」
「いや、いやあっ、いやああああっ……」
 秀才で美人で、学院でも超有名な女の子が、見せ付けるみたいに男子トイレの小用でとんでもない勢いのおしっこをしているんだから。男の子達の中は顔を真っ赤にして、それでもズボンのふくらみを隠せない子もたくさん。
 くす。ひょっとして、これが原因でボクと同じ趣味に目覚めちゃった子もいるのかもしれない。ちょっと罪つくりだったかな。
(初出:おもらし千夜一夜 882-887 2005/9/29)
 

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