公園の前で

 たんっ、たたんっ、左右に踏み交わされる羞恥のステップ。
 スカートを思い切り握り締めて、噛み締めた唇。前屈みの姿勢で後ろに突き出された腰は艶めかしくくねり、タイツに包まれた太腿は一時も休まることなくすりすりと擦り合わされている。
(はやく、はやくっ、早く早くはやく、はやくしてぇッ……!!)
 切なげな表情を浮かべ、息も荒くぎゅうぎゅうと身体をよじりながら、和美はじっと横断歩道の先へと視線を凝らす。もう何十回確認し直したかもわからない、歩行者信号の色はやはり赤のまま。
 脚の付け根で、酷使され続けた括約筋が限界を訴えている。ぱんぱんに張り詰めた下腹部の奥、はち切れんばかりに膨らんだ乙女の水風船が、ぶるりと震えた。
「っ……ぁ……」
 じゅんっ、と下着の奥に滲む感触が見る間に湿り気を広げてゆく。断続的に収縮と弛緩を繰り返す排泄孔に伴って、恥骨に走る甘い痺れが耐え難い排泄の誘惑を繰り返す。
(だ、だめ、だめ、我慢っ、我慢っ、っが、まん、しなきゃ……っ!!)
 その場にしゃがみ込んでしまいたくなるのを和美は歯を食いしばり、耐えた。
 形振り構わず排泄の出口を押さえこみ、ありったけの力を込めて握り締める。行き場を失くしてなお暴れまわる尿意を、なんとか身体の中へと押しとどめようと、残りわずかな気力を振り絞る。
 おなかの中で、もうこれ以上膨らみようのない場所が、むりやり引き伸ばされていくような寒気と不快感――そしてそれを遥かに上回る、猛烈な排泄欲求が押し寄せる。
「ん、ぁ……っ」
 中腰、前屈みの前傾姿勢のまま、交差させた膝を小刻みに震わせて。
 津波のような尿意を、奇跡的な集中力で乗り越えることができた。
(っは、はやく、はやく、っ、はやく、トイレ……っ!!)
 和美は切り替わった信号と共に、横断歩道を走り出した。全速力とはお世辞にも言えない、内股へっぴり腰のよちよち歩き。一歩ごとに揺れる身体と共に、たぷんたぷんと下腹部の中身が揺れて波打ち、脆く弱り果てた水門へ危険な振動を響かせる。それでも、和美は前へ前へと一心に目的地を目指した。
 ここから一番近い『オシッコの場所』――市民公園の公衆トイレへと。
 よろめく足で何度も立ち止まり、スカートをぐいぐいとねじり上げ、時にはたまらずしゃがみ込んでしまい、踵をタイツの上から直接股間に押し付けて。じゅっ、じゅぅう、と溢れだした熱い雫で、黒タイツ奥の下着を湿らせながら。
(と、トイレ……トイレ、はやくッ、トイレ……ッ)
 股間にちりちりとむず痒い痺れが走る。じわじわと容赦なく押し寄せる尿意は果てしなく、覚束ない脚がもつれそうになる。スカートの中の被害は甚大なもので、和美の足元には点々と、歩いてきた方向を指し示すように、水滴の痕が続いていた。
 タイツの色合いが黒だったことで、その被害は辛うじて人目に止まらないものではあったが――
「は、はっ、ぁっっ……くぅ、ぁ……んんっ……」
 もじもじ、くねくね、まるで子供のように全身で尿意を訴えながらの、おしっこを我慢の行進。気の遠くなるほどの間、もう駄目とくじけそうになる心を必死に奮い立たせて、懸命の我慢を続けてきた和美だったが――
 ついにその目的地、市民公園の入り口へと辿り着いたところで限界が来た。
「ぁ、っあ、あ……!!」
 待望の、おしっこのできる場所――公園の公衆トイレ。
 しかし、その建物まではまだ遥か遠い、公園の入り口で。堪え続けてきた尿意は、限界を迎えてしまった。
(だ、ダメ、まだダメっ、トイレじゃ…っ、……ここ、トイレじゃないのに……っ!! )
 しかし、そんな叫びも空しく、少女の股間はもはや辛抱できずにじゅぅ、じゅじゅじゅぅ、と熱い雫を噴き上げる。
 和美は鬼気迫る形相で、公園入り口のすぐ横にある、茂みの中へと駆けこんだ。
「ッ、~~~……っ!!」
 周りを見回している余裕などない。スカートの前裾を絞りあげるように捲ると、もう一方の手でタイツの上から下着の股布部分を掴んで強引に下へ引っ張った。
 深く下ろした腰の下、わずかに少女の肌が覗くと同時、和美の秘所から猛烈な勢いで水流が迸る。
「っあ、……っ」
 しゃがむ暇すらなく始まってしまったオシッコは、地面に大きく孔を穿つ勢いで放たれた。
 蛇のようにくねる水流は、膝のあたりに引っかかった下着にまで飛沫を飛ばし、じゅじゅじゅぅうと焼けた鉄に水を掛けるような音を響かせながら地面に叩きつけられる。
 身体の底、一番大事な場所に開いた、恥ずかしい女の子の孔から、溜まりに溜まった熱水が噴き上がる。
「はぁああ……ぁあ……」
 大きな溜息と共に和美の背筋を、尿意から解き放たれた解放感が駆けあがってゆく。
 (初出:書き下ろし)

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