社会見学バスの話・01 井澤佳奈

 一度やってみたかったシチュエーション。
 ……影響を受けたり参考にさせて頂いた作品が多数あります。
#2013/7/10追記
 おもらし特区 イエローフィッシュ様作品 「帰りのバスの中で・・・・・」シリーズ
 おもらし特区 printfu様作品 「飲料工場見学後の大渋滞」
 おもらし特区 セブンスウェル様作品 「遠足のバスで…」
 くすぐり失禁キャットハウス HIROSHI様作品 「子供の目の前で」「生徒の目の前で」
 特にこちらの4作はシチュエーション、展開、キャラ造形その他まで多く参考にさせて頂きました。
 曖昧な記述で済ませてしまっていたことをお詫びいたします。


(うぅ……あんな事しなきゃよかった……)
 高速道路を進むバスの中で、井澤佳奈は深く後悔していた。
 見学場所を出てからすでに3時間近く。時間つぶしにと流されていた映画もとっくにスタッフロールを終え、車内には気だるい雰囲気が満ちている。時計は間もなく午後5時を過ぎようとしているが、窓の外に落ちる陽射しは初夏という季節もあって、夕日というにはまだまだ早い。
 だが、長時間に渡ってバスの中に閉じ込められた生徒達は、皆すっかり疲れた様子で言葉少なだった。
(……んぅ……っ)
 冷房の音だけが聞こえる静寂のバスの中、窓側の席の上で、佳奈は小さく身をよじる。
 先程から落ち着きなくもぞもぞと座る位置を直し、遮光用のカーテンの隙間からちらちらと外の様子を覗き込む。その表情は余裕なく強張り、小柄な全身にはかすかな緊張も見て取れる。
「っ……」
 形の良い唇が小さく噛み締められ、小さな吐息が漏れ聞こえる。少女の手のひらが紺の夏服のスカートをきつく掴んだ。
 窓の外には延々と続く、車道を埋め尽くす赤いテールランプの行列。びっしりと並ぶ車が、片側三車線の高速道路をどこまでも占領し、長い長い列を作っていた。
 佳奈を含む2年A組の28人をを乗せた専用バスは、社会見学の帰りの高速の中で、後ろへも前へも進むこの出来ない渋滞の中に閉じ込められていたのである。
(……ぅう……っ)
 1時間近く前から全く変わることのない窓の外の光景に、否が応でも佳奈の気は逸り、苛立ちと困惑はその密度を増してゆく。じりじりと焦燥を覚えながら見上げるバスのデジタル時計は、本来ならもうとっくに学校についているであろう時刻を過ぎていた。
(こんななら、出発前にトイレ行っておけばよかったよぉ……っ)
 縋るような少女の願いは、下腹部を占領する切実な生理的欲求に起因していた。
 制服のスカートの上からそっと下腹部をさする手のひらにも、強張った感触がはっきりと感じられる。硬く張りつめた乙女の下腹部は、佳奈の尿意がいよいよ切羽詰まってきていることを知らせていた。
 もう1時間も前から、佳奈はずっと、トイレを我慢し続けているのである。
 椅子の上で揃えた太腿をぴったりと閉じ、膝下のソックスを交互に擦り合わせる。しかし乙女の貯水池になみなみと蓄えられた恥ずかしい熱湯は、そろそろそんなささやかな行為では堪え切れない状態になりつつあった。
(うぅぅ……、まだ着かないの?)
 焦れば焦るほど、佳奈の尿意は強まってゆく。
 午前中に走ったのと同じ高速道路とは思えないほどのノロノロ運転で、バスはびっしりと並んだ車の列の中に囲まれている。1時間ほど前にはそれでも、休み休みではあれど少しずつ前に進んでいたが、もう三十分近く、バスはほとんど動いていない。
 なにしろ、往路はわずか1時間ほどで到着した道程なのだ。まさか、こんなにも長時間バスの中に閉じ込められることになるとは思っていなかった。
 かなり前に通過した道路標識が正しければ、恐ろしいことにまだ帰途のうち半分も進んでいないことになる。
(……どうしよう……我慢…、できるかな……)
 言いしれぬ不安が胸をよぎる。
 渋滞についてはかなり前に一度、担任の清水先生からアナウンスがあっただけで、一体何が原因で、どれくらい続いているのかは全く分からない。ほんの5分もしたらあっという間に解消して、元通りの速さで高速道路を走れるようになるかもしれない。
 それなら良いが、もし――このまままだしばらく、バスが動かないままだったら。
(トイレ……っ)
 自分の想像で、強い尿意の波を呼び起こしてしまい、佳奈はぶるるっ、と強く身を震わせる。足の付け根の大事な部分を守るようにきつく脚を閉じ合わせ、小刻みに息を整える。
 おそらく、後者のほうの可能性がずっと高いことは、佳奈もなんとなく予想できていた。
 佳奈の尿意はすでにかなりのものに達しつつある。三十分も前から、脚を何度もすり合わせたり、おしりをモジモジと揺すったり、スカートの間に手を差し入れて大事な部分に添えたりといった動作を繰り返しており、じっとしていることは出来なくなっていた。
(はやく……早く……)
 少女の切実な願いに反して、しかしバスの窓外の光景はまるで変わる気配がない。
 まるでタイヤに根が生えてしまったように、バスの動きは停まっていた。

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