社会見学バスの話・38 都築朝香その2

 朝香はその時、汗ばんで脚に絡みつく下着を膝下まで下ろし、座席シートの上に浅く腰かけ、腰を突き出して、スカートをおヘソの上まで捲り上げていた。
 下半身は肌もあらわ、女の子の大事なところを露出させ、硬く握り締めたペットボトルの小さな飲み口を、オシッコの出口にきつく押し当て、いままさにオシッコを出そうとしていた瞬間だったのである。
 朝香も多くの少女達と同様、市立公園を出てからの長い時間の我慢を強いられ、バス内のほとんど身動きの適わない自分の席で、少女の敏感な排泄孔を執拗な尿意に延々と責め嬲られていた生徒だった。クラスの中でもいたって普通、成績も背の高さも真ん中くらいという、特段目立つことのない彼女が、まさにその瞬間、蓉子に見つかったのは、不幸な偶然としか言いようがない。
 この時点で、何らかの方法によってバスの中でオシッコを済ませようとしていた、あるいは済まさざるを得ない状況に追い込まれていた生徒達は朝香のほかにも複数存在していた。その中で彼女だけがその行為を見咎められ、不必要なまでにあげつらわれる謂われは無かっただろう。
 けれど。
 サービスエリアでの緊急トイレ休憩を告知し、あと少しの我慢でちゃんとしたトイレに行ける、と、それを心の支えに己を鼓舞していた女教師にとって、目の前でオシッコを始めようとしている朝香は、自分の懸命の我慢を突き崩しかねない危険な存在であり、クラスの規範となるべき教師である自分を差し置いて、卑劣な抜け駆けをしようとした反逆者としか映らなかったのだ。
「都築さんっ、あ、あっあなた、なっ、なんてことしてるのッッ!?」
 ほとんど悲鳴のような金切り声に、少女達は目をつぶった。授業中に騒いでいたのを怒られた時にも聞いたことのない、清水先生の本気の怒声だった。
 蓉子は肩を怒らせ、目を吊り上げて、ずかずかと大股で朝香の元に駆け寄る。
「え、あ、せ、せんせ……」
「やっ、やめなさいっ!! なにしてるの、はしたないッッ!!」
 バスの中の視線が一斉に朝香へと注がれる。隣の席のクラスメイトにも気付かれぬよう、こっそりと進めていたオシッコの準備が、白日のもとに暴露されてしまったのだ。
 下着をずりおろし、恥ずかしい場所にペットボトルを押し付けた姿勢のまま、呆然として硬直する朝香のすぐ傍に、仁王立ちになって。蓉子は更なる大声を張り上げる。
「こっ、ここっ、こんな所で、オシッコなんて!! 都築さんっ、は、恥ずかしいとっ、思わないのっ!? だっ、だだ、ダメじゃないのっ、もうすぐ、と、っととっ、トイレ、行けるのよ!? な、なんで我慢できないのっ!?」
 理不尽極まりない叱責だった。何故も何も、もうどうにも我慢できないからこそ朝香はバスの中でペットボトルにトイレを済ませようなどという、はしたない行為に及ぼうとしているのである。
「ん、ぁ、だ、で、でも、先生、わたし、もう、ずっと、オシッコ……」
「い、いいからやめなさいッッ!!!」
 蓉子は振り上げた手を素早く動かし、朝香が握り締めていたペットボトルを奪い取った。いまにも噴出する朝香のオシッコを受け止めるはずだったペットボトルは、緊急用トイレの役目を果たすこともできず、バスの床に転がる。
「こ、こんな所でオシッコだなんて、絶対にダメよ!! 都築さんっ、あ、あなたもっ、女の子でしょ!? ダメ、絶対にダメなのよ!? ねえ、分かってるのッッ!?」
 叫ぶ女教師の叱責が、哀れな少女を打ち据える。クラス担任の立場を借りて投げつけられる冷酷で卑劣な言葉が、乙女の羞恥を踏みにじる行為であるとは、当の蓉子には思い至らない。
(んぁあああ!! ダメ、出ちゃう、出ちゃう、でっでで、でちゃううウウゥんん~~っッッ!?)
 なにしろこの時。蓉子は、己の恥ずかしい女性の部分を突き破らんと荒れ狂う鉄砲水のような尿意に耐える事だけで精いっぱいだったのだ。女教師の下腹部に溜まった1リットル半ものオシッコは、時間の経過と共になおその水圧を増している。
 もし朝香がペットボトルにオシッコを始めれば、それに連動して女教師の下腹部でもダムの猛烈な放水を始めてしまう事は確実であった。それゆえに蓉子は何が何でも朝香の卑劣な暴挙を阻止せねばならなかったのである。
 自身の生徒に投げつける、理不尽で無茶苦茶な言葉の大半は、蓉子自身に向けられたものでもあった。
「せ、せんせえ……っ」
「と、とにかくっ、ダメよ!! はっ、はやく、パンツをあげなさいっ!! そんな格好してたら、お、おもッ、オモラシしちゃうでしょうっ!! ほ、ほらっ!!」
 あろうことか、蓉子は朝香の膝に絡まった下着を掴み、思い切り上に引きずりあげた。ハイレグめいて引き伸ばされた下着の股布がぐいいいっ、と朝香の幼い股間に食い込み、きつく締め付ける。
「んっ、ッ、ぃ、いやぁ……ッッ!?」
 異常な光景であった。執念めいた女教師の視線は異様なまでに濁り、血走ってすらいる。脚の付け根を覆う布地を強引かつ無理矢理に元に戻され、たまらず身をよじる朝香。その股間の股布には、じゅぅっと黄色い染みが広がり始める。
 下着を無理やり引っ張り上げられ、股間を圧迫されたせいで、朝香がこれまでの必死の我慢でなんとか回避していたおチビりが強制発生し、少女の下着を濡らしてしまったのだ。
「ぁああっ……ッ」
 少女の本能で、剥き出しの下着の上から股間を押さえ込み、激しく揉みしだく朝香。前押さえは、猛烈な尿意を押さえ込むための反射的な動作だ。しかしそれでも、出せるはずだったオシッコはなおなお朝香の下腹部にとどまり続けることを強いられ、激しく暴れ回る。中身をぱんぱんに詰め込んだ水風船が少女の意志を無視して収縮し、じゅっ、じゅううっっと断続的に熱い雫を噴き上げる。
 ぴゅっ、しゅるるっ、と、少女の股間から水流が噴き出す。しかしそれを受け止めるはずだった朝香の緊急用トイレ、350mlのペットボトルは床の上を転がってゆく。距離にして数メートル。けれどそれは身動きできない朝香には絶望的なまでに遠い。
 漏れ出すオシッコは少女の全身を使った我慢でもなお足りず、じわじわと噴き出しては無残に床を、座席シートを濡らすばかり。
「い、いいわね、都築さんっ、ダメよ!? 絶対に、漏らしちゃ駄目だからね!? ほ、ほかの、皆もよっ!? もっ、もう少しで、おトイレ行けるんだからねッッ!!」
 傲慢に言い捨て、蓉子はバスの中をじろりと睥睨する。
 がくがくと震える膝を擦り合わせ、下腹部をぱんぱんに膨らませる1リットル半ものオシッコを、蓉子は驚異的な精神力で堪え続ける。苦しむ生徒達のようにタイトスカートの上から下腹部をぎゅうぎゅうと押し揉んで、この地獄のような尿意を少しでも和らげたい――女教師の惨めなプライドに縋って、切なる欲望に耐えながら。
 そんなクラス担任をよそに、朝香は悲痛に身をよじり、なおも断続的に噴き出すおチビりに、制服と下着を汚していくのだった。

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