「そこのキミ、これを早く持ってって!!」
「せ、先生!!」
異状事態にようやく我に返り、運転手が声を上げる。指示を受けた前部座席の少女が、運転席のすぐ近くにあったポリ製のバケツを掴み、バスの中を走った。
不安定な足場の中、彼女は蓉子のすぐ後ろにたどりつく。その頃には彼女の足先にちゃぷんと水がぶつかるほどに、涼子が溢れさせたオシッコは床を流れはじめていた。
蓉子を押しのけるように差し出されたバケツを跨がされ、涼子はオシッコを始める。
しかし、もはや彼女に下着を脱ぐ余裕もなく、スカートをまくることすらも叶わなかった。着衣のまま、トイレ代わりのバケツを跨いだだけだった。
潔癖な彼女に良く似合う白のワンポイントの下着は、涼子の大事なところをしっかりと隠したまま――それでも股間の排水孔からはっきりとオシッコが噴き出す瞬間を見ることができた。白い下着がびっしょりと濡れ透けた女の子の大切な場所が、バケツの上を跨ぐと同時、猛烈な勢いで噴射する水流が思い切りバケツの底へと叩き付けられる。
ぶじゅぅっ、ぶじゅじゅじゅじゅううううううううぅうじゅじゅば
じゅぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼおびちゃびちびちゃじゅぼぼぼぉぼおおおぉ!!
一体、どんな偶然の重なりか。あろうことか。押しのけられた蓉子の手からマイクが落ち、ちょうどバケツの底へと転がりおちていた。
こうした学生の遠足では定番となる貸切バス。長時間の移動に伴って車内で飲食をすることも考慮されたため、バスのマイクには防菌・防水加工が施されていた。誤ってジュースなどがこぼれたりしても問題ないようにとの配慮である。
まさにそのマイクめがけて、涼子のオシッコは噴射されていた。
水流の直撃は8つのスピーカーで増幅され、本当の滝のような轟音となって車内に響き渡った。一人の少女が我慢に我慢を重ね、ついに限界を迎えてバケツにオモラシをするその様を、完全生中継の大迫力で、2年A組の全員に伝えてしまったのである。
見る見る水位を増すバケツの中で、マイクがオシッコの海に水没し、なおじょぼじょぼと猛烈な水圧で威勢よく水面を掻き回すおしっこの噴射音を臨時生中継。
「はぁああああああ……ッッ」
途方もない、快楽とすら思えるような喘ぎ声。
我慢に我慢を重ねたオシッコを、クラスのだれよりも先に思い切り迸らせる快感に、涼子はうっとりとした声をなんども上げていた。その吐息と喘ぎもまた、滝のようなおしっこの音に混じって放送される。
目の前で始まった盛大なオモラシと、バケツをトイレ代わりにした盛大なオシッコ。
バスの中の少女たちは、誰もそこから視線を外すことができなかった。
涼子の握り締める女の子の大事な部分から、猛烈な勢いで黄色い熱湯が噴き出し、一直線にバケツの中へと叩き付けられてゆく。すでに涼子のスカートは見るも無残なほどに濡れ汚れ、ソックスから革靴に至るまでがびしょ濡れである。周囲に水たまりをまき散らしながらバケツの底を叩くオシッコは、ほんのりと湯気を伴って、その音を響かせる。
じょぼじょぼじょじゅじゅじゅじゅぶじゅじゅじゅううううッッ!!!
まるで、ひとりであの大きなバケツを占領してしまわんばかり。耐えに耐え続けた排泄器官は、いったんその限界を迎えるたが最後、もはや容赦なくその本性を剥き出しにして、欲望の詰まった中身を残らず絞り出そうと、乙女の秘められた水門をはしたなくも大胆に全開にしてしまっている。
個室の中であってもまず見せることのないような――本当の勢いのオシッコ。下着の股布など突き破らんばかりに噴出してゆく。たった一人、家のトイレで心を許した時に始まるような、安心しきった放水は、同性のものであっても目を見張るほどに爽快ですらあった。
バスの中の少女達は、皆涼子のオシッコから目を離せずにいた。
あまりにも恥ずかしい音を立て、終わる気配のない猛烈な放水――それは、渋滞に巻き込まれ、我慢に我慢を重ね続けた涼子が、いち早く皆に先駆けて尿意に屈し、限界を迎えた結果の最悪の姿なのだ。
みんなの前でスカートを握り締め、制服をびしょびしょに濡らし、バケツを跨いでおしっこする惨め極まりない姿。およそ、女の子にとって死よりも屈辱的な姿を、涼子はお手本のような『オシッコオモラシ』として衆目にさらしてしまったのである。
だがそれは同時に、この耐えがたいほどの尿意との、果ての見えない戦いからの解放という側面も持ち合わせていた。バスの中の少女達が一様に抱く『早くオシッコしたい』という思い。涼子はそれを一足先に成し遂げているのだ。
下着どころか制服のスカートをたくし上げる事すらできず、バケツの上に座り込んで、猛烈な放水が下着の直撃を受ける。暴風の中で旗が風に煽られるような、ばたばたという音。皆の前、バケツの中という、羞恥極まりない状況は言え、耐えに耐え続けたオシッコを、いっそ済ませてしまいたい――そう思う少女は少なくなかった。
まるで信仰を一身に受ける女神のように。
あるいは、皆の代弁者として罰をおう聖者のように。
恥辱の極みであるオモラシをする涼子に、奇妙な羨望の視線が向けられていた。
社会見学バスの話・43 花藤涼子その3
