「そっ、そんな、そんなッ、なにこれ、なんなの、っ、やだ、もう我慢、できな、っ、あぁ、っんも、漏れ、ちゃうのにっ……ぁ、ああっあ、あ!! あ!!! っだ、ダメぇえええええええ……ッ!?」
激しく脚を踏み鳴らし始めてしまった蓉子の股間、きつく押さえた指の間で、ぷしゅっ……と熱い飛沫が吹き上がる。下着を超えてタイツにまで染み出す女教師の恥ずかしいオシッコ。
いくら叫ぼうとも現実は変わらない。蓉子がオシッコできる順番が回ってくるのは、この行列の一番後ろの101番目だ。そうして悶えている間にも、列の後ろには続々と女性達が並び、行列はなお伸びていく。
そう、驚くべきことにこの大蛇めいたトイレ順場待ち行列はいまだに成長の途上なのだ。
「ぁ、あっあ……ま、まって、な、並ばなきゃ……わ、わたし、っ、私が先、さきなの、先ぃ、さきに、いくのぉ、いかせてぇえ!! トイレ行かせてえええ!! んぁああ、っだ、だめえええ……!!」
何度もおチビりを繰り返してぐっしょりと濡れた下着に、またぶじゅじゅじゅうっ、とたっぷり漏らしたてのオシッコが染み込んでゆく。
蓉子はまだ執拗に、自分が立派な『オトナ』の女として、つつましくオシッコを我慢しきれていると思い込んでいたが――すでにおチビりの回数は2ケタを超え、下着に溢れ出したオシッコは既に保水力の限界を超え、タイツにしみ出し、タイトスカートのおしりにまでみっともない染みを広げていた。
今のおチビりでおしりに広がるオシッコの染みを二回りは大きくしてしまいながら、蓉子は羞恥のオシッコの我慢ダンスを始めてしまう。
「んぁあぁ、くぅあはぁあああんんっ……んぁっ、ぁあぁっ…ぁあっ、はぁあ、ぁあっぁあぅう………っで、出ちゃうう、でちゃぅうっ、出る、出る、もるもるもぅう!!!」
ぐりぐりと脚を交差させ、強く脚を踏み鳴らして、タイトスカートの上からストッキングの股間を鷲掴みにして塞ぎ止める。押し当てられた手のひらの奥では、断続的にぶじゅっ、しゅるるるぅ、と熱い雫が噴き出して押さえ込まれた出口へめがけ殺到、激しく水音を響かせた。
その勢い、量、温度共に、女教師の下腹部に溜まった1リットル半のオシッコが迸る限界放水の予兆を感じさせるものだ。
もはや蓉子に猶予はない。今から悠長に順番待ちの行列に並んでいる余裕はなかった。
「んあぁあっ、あっあああ、っ、で、でちゃ、でちゃう、駄目、も、っ、もるもれもっ、漏っちゃう、オシッコ……オシッコ、んぁああ……ダメ、だめぇえええ!!!」
どこからどう見ても『限界』の女教師を前に、行列に並ぼうとしていた大学生らしき少女達がぎょっとする。おおよそいい歳をした大人が、人前であそこまで堂々とオシッコを我慢し、悶えて半狂乱になっている姿は、普通目にできるものではない。
「あ、あの……」
鬼気迫るその形相は、嫌でも悪目立ちしていた。しかし当の蓉子はそれどころではない。今まさに、オトナの矜持が地に落ちるか否かの大勝負の最中なのである。
その姿に見かねたのだろうか。列の中程に行儀よく並んでいた小学生と思しき幼い少女が、列を抜け出して蓉子の方へと歩み寄った。顔を紅くし歯を食いしばり、内股になって股間に手を挟みこみ、激しく腰を揺らす蓉子に、だいぶ気押された様子で声をかける。
「――あの、お姉さん……あたし、まだ大丈夫だから……代わっても、いいですよ?」
「は、はあ!? 別にそんな、っ、へ、平気よ!! 放っておいて!!」
「え、で、でも……」
「イイって言ってるでしょ!?」
自分の倍近い年齢の女教師が、襲い来る猛烈な尿意に身悶えするのを見かねてのものだったのだろう。しかし、蓉子は自分の歳の半分にも満たない少女からの温情にすら、理不尽な応答を返してしまう。
(ゆ、譲るって、ま、まだ列の真ん中くらいじゃないのっ……まだ、50人も待たなきゃいけないなんて……い、意味ないわよッ!! そんなんで恩着せられたってしょうがないの!! わ、わたしは、今!! おトイレ!! 入りたいのっ…!! い、いますぐ、オシッコがしたいのよおおぉ!!! あーーーんっ!! オシッコ、オシッコ、オシッコおしっこオシッコ!! も、漏れッ、漏れるゥうぅうう!!!)
蓉子は呆気にとられる少女のを押し退けるように走り出した。せっかくの好意を見せた少女は、半分押しのけられて数歩たたらを踏む。
「っ、あっ、あああっ……んっ、はぁあ……んっ……!!」
ぞわぞわと背中を這い上る『イケナイ感覚』。じいんと股間の先端から恥骨を伝わって腰骨の奥にまで響く、大きな大きな『大波』の予兆。蓉子の意識は危機的状況に引き伸ばされ、加速し、高速で回転を始める。
17、16、15……蓉子の耳には、我慢の限界を告げる無慈悲なカウントダウンが聞こえていた。
「んぁぁああああ、出る、出るぅ、出るうぅ!!!」
ガニ股になって大きく開いた脚の根元を、まるで猛禽の爪のように力を込めた指が握り締め――女教師ははしたなく尿意を連呼しはじめた。
(と、トイレ、トイレ……おトイレぇええ!! あっああ、駄目、もう駄目、こっ、こんなの並んでられないぃいい……ッ!! も、もう駄目もう出るもう出ちゃうオシッコ、オシッコでるぅう!! んぁぁあ、っ、あ、あっ、……あ、あっ、あ、駄目、どっ、どこか、どこか、おとっ、とっ、トイレ、おトイレええ!!)
だんだんと靴のかかとを踏み鳴らし、周囲を目まぐるしく巡る蓉子の視線が、公衆トイレから少し離れた植え込みの陰を目ざとく見つけ出した。自販機とゴミ捨て場の陰、ちょうど雑踏の途切れたエアポケットのような空間は、周囲からの視線も遮ることもできる場所だった。
(あ、あそこ、あそこで……っ、あそこで、おっ、おしっ、オシッコ……する、しちゃう、するぅう!! だっ、誰もみてないものっ!! 生徒の子達もいないしっ、しょ、しょうがないの、しょうがないのっ、わ、わたし、先生だけど、大人だけどォ!! もっ、もももう、が、我慢っ、オシッコ我慢できないんだからぁ……っ!!)
自分は教師なのだから――
立派な大人なのだから――
だから、用を足すのはちゃんとした『トイレ』でなければならない。しかし大人のはずの自分はあっさりと尿意に屈し、これまで言い訳として何度も繰り返してきたその持論を翻してまで茂みの中へと駆け込もうとする。
(そっ、そんなこと、はぁああんっ……い言ってる暇なんか、も、もうっ、な、ない、っ、ない、わよ……っくぅうううう!!! ぼ、膀胱、破裂しちゃうっ、オシッコ、オシッコが漏れちゃうう!!! 漏れちゃうのぉおおお……っ!!!!)
下腹部で膨らみ切っていた水風船が、蓉子の意識を離れて勝手に収縮を始める。1リットル半ものオシッコが、それ自身の重さに猛烈な水圧を加え、股間の尖端の一番もろい部分を突き破ろうと押し寄せる。
……9、8、7、6……
いつしか、女教師のオシッコ開始まで、カウントダウンはひとケタを切っていた。
蓉子の身体は自然、女の欲望を剥き出しに、スカートをたくし上げ、濡れぼそったタイツと下着に指をかけてしまう。
「あ、あっあああぁああぁあっ!!」
じょわ、じゅじょわあと押さえこんだタイトスカートに恥ずかしいオモラシ染みが広がってゆく。それでも――最後に残った蓉子のプライドは、植え込みの茂みでの、むき出しの地面の上でのオシッコに待ったをかけていた。オトナのプライドと、限界寸前の尿意。大混雑のトイレと一刻の猶予もない排泄欲求。二律背反の中、妥協も屈することもできない蓉子は、ついにその場にへたりこんでオモラシを始めてしまうかに見えた。
……4、3、2……――
そうして――
蓉子は最後の最後で、とんでもない行為に出た。
社会見学バスの話・58 清水蓉子その10
