社会見学バスの話・68 バスの中、羞恥のバケツ排泄

 バスの中には、いまだ数名の生徒達の影があった。動く密室のドアが解放されてなお、募る尿意に席から動くことができずに『静』の我慢を強いられていた少女達である。
 俯き、息を殺し、じっと動きを停めた少女たち。しかしその表情は先程までとは少し違っている。堪えているのは内側からの尿だけではなく、外からの刺激も加わっていた。見たくないものから顔を背け、耳を塞いで必死に意識を逸らそうとしている。
 ぶじゅうぅうううっっ、じょぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ、
 ぶじゅぅ、じゅごぉおおおおお――――ッ!!
 そう。バスの中にはそんなはしたない、耳を塞ぎたくなるような恥ずかしい音がずっと響き続けていた。バスの通路、真ん中に誰の視線を遮る事もなくおかれたバケツ。涼子が一番最初にオシッコを済ませたそこに跨って、クラスメイトの一人がオシッコを始めているのである。
 破裂寸前の膀胱を抱え、バスから降りることもできなくなった少女達は、涼子のオシッコがなみなみと注がれたバケツを使うことを余儀なくされていた。既に追加で2人の少女がバケツでオシッコを終え、今は3人目――涼子から数えて4人の少女が、バケツを跨いで、クラスメイトの目の前でのオシッコを強いられているのだった。
 外のトイレに向かおうとする余裕すらない彼女達に、下着を下ろしている暇などない。そのほとんどがバケツの上でスカートと捲り、下着の股布部分をひっぱり掴んで横にずらす――いわゆる『ハミずらし』の体勢でオシッコをしていた。
 男性諸氏には理解しがたい事かも知れないが、この股布ずらしはおおよそ、女の子であるのなら、幼稚園を過ぎればまず普通はすることのない、あまりにもみっともないオシッコの済ませかたである。
 ――誤解を恐れず、あえて男性のトイレで喩えるならば……小便器に向かい、下着とズボンを足首まで降ろして下半身丸裸で用を足しているようなものだろうか。同年代のクラスメイトがいるすぐ前で、それを強制されることの恥辱たるや、想像を絶するものがあった。
 しかし、たとえそれでも一応は下着をずらし、バケツを跨いで形の上だけでもきちんとオシッコの体勢を整えることが出来た生徒はまだマシな方だ。もはや数歩を歩くことすら間に合わず、バスの廊下にしゃがみ込んで、あるいは中腰のまま座席にもたれかかるようにして、その場にオシッコを始めてしまう子もいたのである。
 何度も繰り返されたおチビりとオモラシで、バスの床に濡れていない場所はない。ゆっくりと傾斜する通路を、ちょろちょろと小川のようにオシッコが流れてゆく。立ち込めたオシッコの匂いを撹拌するように、バケツの中に叩きつけられる羞恥の噴射音がじゅごごごごと激しい泡を立てて黄色い水面をかき混ぜる。
 今もなお少女の一人が用を足すバケツ内側の水面は、気付けば容器の内側の半分を超えていた。たった4人分のオシッコで、バケツは早くも一杯になろうとしていたのだ。少女達の噴き出させたオシッコの底深く沈んだマイクが、小さな泡を立てて揺れている。バスに備え付けられたバケツは小さなものであるとは言え、最大容量で5リットル近い。
 様々な悪条件が重なり、長時間に及ぶバス内の我慢によるものとは言え、マイクを水没させ壊すほどのオシッコがこの短時間でバケツに注がれている事は驚異、驚嘆の一言であろう。
「はぁああ……っ」
 じょぼぼぼと激しい音を響かせていた少女が、うっとりと眼を細め、バケツに跨ったまま大きく息を付く。熱い吐息は、彼女が快感すら覚えていることを教えている。少女としてあり得ない、屈辱的なまでの姿勢であったとしても、これまで自分を苦しめていた悪魔の熱水を、なみなみ注がれたバケツの中に叩きつけ、尿意から解放されることは、少女にたとえようもないほどの快感をもたらしているのだ。
 その後ろでは、早くも次の少女が、中腰になって激しく足踏みし、バケツの空く順番を待っていた。バスの真ん中に置かれたただのバケツ、トイレとはとても呼べないただの空き容器ですら、いまの2年A組バスの居残り組生徒達には、オシッコを済ませるための焦がれ求める場所たりうるのである。
 ――はやく、はやく、はやく!!
 下腹部を激しく押さえながら、「次」の順番を待つの少女はバケツの中にオシッコをする順番を待ちわびている。彼女の足元にはすでにぱちゃぱちゃとオモラシが始まっていた。
 果たして今、用を足しているクラスメイトがオシッコを終えるまで、全部漏らしきらずにいられるかは怪しいところだろう。そしてどうにかバケツにたどり着いたところで、余裕なく切羽詰まった表情からはもうスカートを上げている余裕すらなさそうな事は明白だった。
 下着を下ろすどころか、横にずらす暇すら皆無。『おんなのこ』を押さえこむ以外の動作をしたその瞬間から、激しく恥ずかしい熱水が噴き出してしまう。
 折角、足元にはオシッコを受け止めるための容器、オモラシを防ぐためのバケツがあるのに――。
 少女に許されているのは、バケツをまたいでオモラシをするか、このまま床にオモラシをするかのどうしようもない二択だけだった。

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