昨日から降り続く雨は、午後になってようやく弱まり始めていた。
灰色の空の下、ちらほらと見える学校帰りの生徒たちに混じって、風香は精一杯の早足で帰り道を急いでいた。
けれどその足取りはおぼつかないままで、黄色い傘は右に左にふらふらと揺れている。
「んんぅ……っ、ん…っ」
(だめっ……も、漏れちゃうっ……)
プラスチックの柄をぎゅっと握り締めて、風香は喉の奥に悲鳴を飲み込む。
小さな風香のおなかの中で、ぱんぱんに膨らんだ膀胱がきゅんっと疼く。おなかの下のほうから始まったむず痒い尿意はどんどんと勢いを増して、いまや足の付け根の一番脆い部分まで達しようとしていた。
ぴったりと膝をくっつけ合わせ、はぁはぁと息を荒げながら少女は歩道をふらふらと進んでゆく。
さっきまでの強い雨の中でも、風香のスカートは傘とレインコートで守られていた。だが、その完全防水の布地の下で、すでに少女の下着は染みだしてきたおしっこにぐちゃぐちゃになっていた。
(出ちゃダメっ……出ないでぇ……)
しゅしゅっ、しゅるるっ……
風香の願いもむなしく、オシッコの孔は我慢の壁を突き破ってぷくりと膨らんでしまう。熱い雫がたっぷりと股布に吹き付けられ、排泄の甘い快感がぞくぞくと少女の背筋を震わせた。
むき出しの腿と膝を、ひと筋、ふた筋と漏れ出したおしっこが伝い落ちてゆく。
(やだっ、しないのっ……オシッコしないのっ、しないのぉっ……!! トイレまでがまんっ、トイレ、トイレもうちょっと…なんだからぁっ……)
言う事を聞かない自分の身体に癇癪を起こした長靴が水たまりを乱暴に蹴散らす。ばしゃっ、という水の音は、それだけで風香のおなかのなかのおしっこに共鳴して、じんじんとお尻に響く逆効果をもたらした。
「んんぅううっ…!!、くぅんっ、……ゅうぅうっ……っ!!」
こみ上げてきた猛烈な尿意に、風香はびくんっと背筋を伸ばした姿勢のまま固まってしまった。おなかのなかを占領したおしっこと、必死の我慢で前にも後ろにも進めない、綱引き状態だ。少しでも余計な身動きをすれば、最後の一線が破られてしまう。
「ふぅぅーーっ、はぁっ、はあっ……っ!!」
(だめ、オシッコ、オシッコでるオシッコおしっこおしっこっ……)
じゅ、じゅ……じゅわっ…
白い下着につつまれた股間が上下するたびに、少しずつ熱い雫が滲み出して風香の脚を濡らした。レインコートをぎゅっと引っ張り、おまたをきゅうぅっと引き締めて、風香は吹き出してしまいそうなおしっこを押さえこむ。
またちょっとだけ漏れてしまったおしっこが下着にぶつかってじゅじゅじゅじゅっと音を立て、あしもとの水たまりにぽたぽたとこぼれ落ちた。
「んぅうっ、ふぅうっううっ……」
ほっぺを真っ赤にして、ふらふらとおぼつかない足取り。
傘が揺れて大きく傾き、レインコートからはみ出したスカートの裾が雨に濡れてゆく。
空模様はそろそろ小降りになろうとしているのに、風香のスカートの中はおしっこの大洪水だった。
(初出:おもらし特区 住民登録審査板)
雨あめ降れふれ
