「いらっしゃいませー」
ガラスの自動ドアが左右に開き、ひやりとした空気が流れ出してくる。店員の挨拶に訳もなく視線を反らしながら、佐奈はコンビニの入り口をくぐった。ヒクつく腰。たぷたぷと膀胱を満たすおしっこが、切羽詰った尿意を訴えて恥骨から背筋へと響いてゆく。
エプロンの前をシワが寄るほどぎゅっと押さえ、膝を擦り合わせている佐奈の不自然な姿勢に、店員の一人がはっきりと眉をひそめる。佐奈が客としてではなく別の用事で入店してきたことに気付いたのだ。
(やだ……見ないでくださいっ……ちがうの、ちがうんですっ……ぅあ……っ、わたし、っ……)
隠し切れない尿意をはっきりと悟られてしまったことに耳まで赤くなりながら、佐奈はできる限りの早足で店内を横切る。店の奥、雑誌売り場のそばの小さな扉。このコンビニのトイレはそこにある。
あまり清潔とは言えないが、もう贅沢を言っている場合ではなかった。破裂寸前の膀胱を抱えた佐奈に選り好みする余地など残されていない。
(ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、あとで、ちゃんとお買い物しますからっ……!!)
胸の中で店員に何度も頭を下げ、佐奈はトイレのドアに走り寄った。ノックももどかしくノブを引く。しかし帰ってきたのは無常な硬い手応え。
「え……」
そして佐奈はドア前の張り紙に大きく書かれた赤文字に気付いた。その内容が一瞬理解できず、佐奈は呆然となる。
『従業員専用 トイレはお貸しできません』
「う、嘘……っ、そんなぁ……っ!!」
待望のトイレを目の前にしながら使用を禁止された少女の体奥で、激しい疼きが沸き起こった。危険水域に達した膀胱がきゅうんと収縮し、猛烈な尿意が下腹部から股間の先端までを駆け下りる。
きゅきゅっと佐奈の両足が床の上で鳴る。我慢のダンスは最高潮となり、佐奈の下半身はあっという間に尿意に屈してしまった。
「や、ぁあああっ、っ……~~っ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁあっ、」
か細い悲鳴を上げながら、佐奈はエプロンの股間をぐぎゅぅうっと握り締めた。布地の奥で熱く湿った部分がひくひくと震え、必死の我慢のスキを付いては熱い雫が漏れ出し、下着にぶつかるじゅじゅっ、じゅっとくぐもった音を鳴らす。
とうとう始まってしまった“お漏らし”の予兆。わずかずつおしっこを漏らすたびに、焼け焦げるような快放感が排泄器官を支配し、少女の理性を蕩かしてゆく。
「ぁ、ぅ、ぁ、、ぁあっ、ぅ、、…ああっ、ぁ……っ!!」
必死に悲鳴を噛み締め、空を掻く佐奈の右手が壁を掴む。
オモラシを始めてしまいながらも、佐奈は健気に最悪の事態だけは回避しようと、ありったけの力を疲弊した括約筋に送り込んだ。ちょこん、と滑稽に突き出しされたおしりが左右に揺れるたび、少女の下腹部にたまったおしっこをたぷたぷと波打たせて刺激する。
(はやく、はやくはやくはやくっ、トイレ、トイレ、おトイレぇええっ!!)
こんなところで漏らしてしまった情けなさに胸が締めつけられ、佐奈の瞳がじわりと滲む。
それでもどうにか心を奮い立たせ、猛烈な尿意の波の合間を縫いながら佐奈はずるずると足を引きずってカウンターに引き返した。明らかに挙動不審な少女に、伝票を整理していた女性の店員が不機嫌そうに眉をよじる。
「なにか? 何か用ですか?」
「そ、その……っ、……ぉ、……れっ……」
(でちゃう、でちゃう、でちゃううぅうっ!!!)
頭の中で排泄本能が絶叫している。ぱくぱくと言葉にならない声で口を動かす佐奈だが、店員はますます鬱陶しそうに視線を強めた。
「あ? なんです? もっとはっきり言ってください。聞こえないから」
くねくねと腰をよじらせる佐奈に、容赦のない視線が注がれる。不快な表情を隠そうともしない店員の前で、羞恥に耳までを赤く染めながら佐奈は股間に走る甘い刺激に耐えて腰をもじつかせる。
「……ぅあっ……っくぅ………っ す、すいま、せんっ・……お、おトイレ……おトイレ、貸してくださいっ……」
エプロンの股間を握り締め、脚を小刻みに踏み鳴らしながら、佐奈は俯いたまま必死に声を絞り出した。いい年をして、まるで幼稚園の子供のようにおしっこを我慢していることを自ら告白してしまうという恥辱の極みに、少女のプライドはずたずたになる。
だが、店員は小さく鼻を鳴らして、無慈悲に告げた。
「ダメです。張り紙見たでしょう? 他で済ませてください」
「……そ、そんなぁっ…っ、あっ。…お、お願いしますっ……わ、わたしっ、もう、我慢っ、できなくてっ……ほんとに、本当にっ……」
「ダメなもんはダメなんです。前にニュースであったですよね? 異臭騒ぎとか。知らない人間に貸したりして事件になったりしたら、責任取るの私なんですよ」
「ぁぁあっ……そんな、そんなぁっ……お願いしますっ……もう、本当に……わたし、限界なんですっ……」
せわしないステップが、きしきしとコンビニの床を軋ませる。店員はため息をついて作業の手を止め、佐奈に蔑みの混じった視線を向けた。
「あんた、中学生? いい年してトイレトイレ騒がないでよ。ホントに我慢できないの?」
「はっ……はいっ、はい、はいぃっ」
「ったく……マジ? 信じらんない」
なんとかトイレの許可をもらおうと必死に首を動かす佐奈だが、店員は煩しげに手を振るだけだった。
「あーもう。うるっさいな。この前も女の子だからって甘く見てたら、盗撮用の隠しカメラなんか仕込まれたんだから。……悪いけどもう騙されないからね」
冷たく言い捨てて作業に戻る店員。追い討ちをかけるように襲い来る大津波に佐奈の腰が竦む。
「ま、まってください……おねがいですっ…あ、あのっ……うぁぅぅぅうっ!!」
(ぁ、だめ、だめ、今はだめっ、だめっ、だめえっ!!)
股間を握り締め左右の足を大きく足踏みし、恥もなく我慢のステップを繰り返す。入り口のすぐ前で繰り広げられる少女の痴態に、コンビニの前を通り過ぎる人々が何事かと足を止めている。
「あぅうぅっ……や、約束しますっ……ちゃんと…ぅぅっ、くっうっ……ちゃんとっ、ぉ、おトイレ、ヘンなことに使ったりしませんからっ……ちゃんと使いますからぁっ……おしっこ、おしっこするのにだけつかいますからぁあっ」
「ダメだって言ってるだろ。しつこい……」
取りつく島もない店員の態度に、佐奈の下腹部はさらに猛烈な切なさを募らせる。佐奈は溜まらず腰を引き、股間に当てた手のひらをエプロンごと脚の間に挟む。
くしゃくしゃになったエプロンは、まるでオムツのように足の間に挟まれて、佐奈の股間の爆発を守るために存在しているかのような惨めな姿になっていた。
「そ、その、わたしっ…き、きのうから、ぁ、あ、っ……ずっと……はぁっ……おトイレ、いけてないんですっ……ずっと、おしっこ、が、がまんしてるんです……っ」
トイレに入るために、おしっこを済ますために、佐奈は必死になって尿意の説明を始める。
「も、もう、おなか、おしっこが、ぱんぱんでっ……あ、あそこがじんじんしちゃてっ、……げ、んかい、なんですっ……もれちゃう、もれちゃいそうなんですっ……おしっこ、おしっこがっ……・」
一言を口にするたびに、膀胱が断続的に収縮する。少女の本能の命ずるまま排泄器官がびくびくと痙攣して、溜めこんだ中身を絞りだすことを命じてくる。最悪の事態を回避するため、佐奈は必死に股間を握り締めて“おしっこさせてください”と訴え続けた。
「……う、うちも、カギわすれて、しめだされちゃって、……ぁ、ぁ、あっ、だめっ!! ……ひぅっ……ちゃ、ちゃんとおトイレ、おトイレつかいますからっ…よ、よごさないようにっ……しますっ……、おわったら、ちゃ、ちゃんとおそうじもして、きれいにしますからっ……へ、ヘンなこともしませんからっ……おねがいしますっ…ぅぅ、…おねがいしますっ、おトイレ、おトイレさせてくださいっ……わたしに、おといれさせてくださいっ……」
びくびくと震える下半身と、こんな場所で粗相をしてしまうのに比べればと焦る気持ちが、佐奈の正常な判断力を奪ってゆく。
かつて一度も体験したことのない激烈な尿意に下半身を蹂躙され、佐奈は腰をクネらせ、息を荒くして見ず知らずの相手に切々と尿意を訴え、排泄を求めて媚びる。
だがそんな少女の願いも空しく、佐奈の要望はもっとも無残な形で遮られることとなった。
「ちょっとねえあんた、ここどこだかわかってんの? さっきからトイレトイレって……ダメって言ったでしょ!? あんまりしつこいと警察呼ぶからね!?」
「や、だ、だめ、……ぁ、く、ぅ、ぁ、あ、ぁ……~~っっ!!!」
痺れを切らした店員は佐奈を押しのけるように肩を突き飛ばした。膝をくっつけ辛うじて均衡を保っていた我慢の天秤が大きく傾く。
「ぁ、ぁ・……っ、~~~~っ!! ……っ!!!!」
佐奈は両手を股間にねじ込んで、声にならない悲鳴を上げた。
じゅん、じゅじゅっ、じゅぶっ、じゅじゅじゅじゅっ、
エプロンの下で佐奈の股間が痙攣する。少女の下腹が痙攣し、自然の摂理に支配を明け渡した膀胱が容赦なく収縮してゆく。
一番脆い部分を突破したおしっこが下着の股布にぶつかり、濡れたハンカチを蛇口にかぶせたようなはしたない音を立てた。何重にも重ねられた布を貫通して、我慢していたものが一気に噴き出してゆく。
一瞬で股間を水浸ししたおしっこがあっという間におしりまで広がり、滝口からあふれるように床に叩きつけられた。
「あっ、ちょっとあんた、マジっ!? 何やってんのよっ!?」
「はぁっ……っうぅ~~~っ!!」
佐奈がどれだけ排水孔を締めつけても、一度決壊したダムはもう止まらない。
クリーム色のタイルに大きく広がったおしっこの海が、がくがくと腰を震わせる佐奈の足元を流れてゆく。エプロンに染みたおしっこは佐奈の下半身を蹂躙し、足を伝って靴までもぐしゃぐしゃに濡らしてゆく。
(初出:おもらし特区 住民登録審査板)
コンビニでの懇願
