月壬月辰のススメ3

「あはぁ……ぁああっ、あぅ、あっ、あああぁ……」
 耳までを赤く染め、顔を覆い、小さく唇を噛み締めて。
 びくびくと前後に腰を揺すりながら、少女の放水は止まらなかった。
 かなり濃い目の色のついた奔流は、皺の寄ったシーツの上に大きな水たまりを作ってなお激しく打ちつけられ、琥珀色の水面にじゃぼじゃぼと激しく波打ち、白い泡を掻きたててゆく。
 これほどの我慢になると、たとえ限界失禁になっても放水は一度で終わらない。酷使され続けてすっかり充血した排泄孔は熱く腫れぼったくなってしまい、パスタ一本が通るかどうかまで狭く細くなるのだ。肉の管は充血し疼いて、激しい水流を間断的に何度も吐き出す。
 鈍くはあるが圧倒的な尿意がいつまでも収まらず、何度も何度も熱い雫を弾けさせる。下半身は痺れ、腰が抜け、自分の意志とは無関係に、敏感になったあそこを貫くほどの刺激で排泄が続いてしまうのだ。
 長い時は、そのまま30分近くもオシッコが続くことを、私は経験として知っていた。
「ぁう……だ、だめ……止まらな……っ」
 ベッドの上にできたぬかるみに続けて叩き付けられ、泡を立ててゆく少女のおしっこ。
 長い期間で抽出され濃縮された、色も匂いも濃い琥珀色の液体が、少女の下半身をぐしゃぐしゃに汚してゆく。ぱちゃぱちゃと飛び散る飛沫は私の下半身まで濡らし、少女特有の匂いを際立たせていた。
 すでに少女の排泄器官は独立した生き物のように、溜めこんだ恥ずかしい熱湯を吐き出す、ぬめる肉の管に成り果てている。
「お、お姉さん……やだ……おしっこ止まらないのっ……やだ、やぁあ……わ、わたしのあそこ……おしっこ、でるところ……壊れちゃったよぅ……っ」
「ん……大丈夫。我慢しないで、力抜いて……。ほら、全部出しちゃっていいからね……」
「ぁ、あっ、あっ!!」
 私の言葉に反応するように、少女が腰を浮かせてがくがく震え、か細い悲鳴と共に背中を反らせる。
 敏感すぎるほど敏感になった排泄孔から、高らかに琥珀色の飛沫を吹き上げて、まるで金色の鎖が降り注ぐかのように放出が続く。
「ぁふぁ……」
 とろん、と蕩けた少女の腰が持ち上がり、びくびくと痙攣を繰り返した。いつまでも終わらない解放感は、女性が知るオーガズムと同じものだ。
 腰を浮かせながら口を半開きにして、わずかに唾液すらこぼし、少女は何度も何度も熱く濃いオシッコを吹き出す。そのたびに少女は快楽の頂きに押し上げられる。
 頼りない足元を確かめるかのように、ベッドにぐりぐりと押し付けられる少女の股間から、じゅぶじゅぶと熱い音がこぼれた。
「ふわぁ……ぁ……っ」
 またも少女の喘ぎの語尾が高く跳ね上がる。それは彼女がまた、快楽の頂きへと押し上げられたことを知らせていた。
 まるで禁じられた魔薬のように、排泄の快楽が少女を包んでゆく。既婚の女性でも、一度これを知ってしまえばふつうのありきたりなセックスなんてどうでもよくなってしまいだろう。
 これは、本当の最後の最後まで“月壬月辰”を遣り遂げたものにだけ許される、至高の瞬間。
 天井知らずの快楽。底知れぬ陶酔。私だって始めての経験のときは、凄すぎて気絶してしまったくらいだ。
「ぁあ、んぅ、っんむっ……」
「んぅ……ふ、ちゅ……」
 喘ぐ少女を見ているうち、私もたまらなくなって、強引に彼女にキスをしていた。
 重ねあった唇を深く交わらせながら、熱い雫を放ち続ける少女を押し付け、ベッドの上に押し倒す。
「ぁあ、あっ、あ…、や、ま、また……ヘンになっちゃう…っ!!」
 普通のセックスどころか、自慰だって十分に経験のないだろう少女には、あまりに強烈なインパクトだろう。
 私と肢体を絡めあったまま、焼けついてしまいそうな敏感な快楽神経を持て余し、少女は何度も何度も絶頂に達し、甘くか細い喘ぎを繰り返し、同時にその脚の付け根から激しくおしっこを撒き散らし続けた。
 いったい都合何リットルに及ぶ、途方もない量だったのだろう。
 少女のその小さな身体の中で抽出された天使の雫――それを惜しむことなく丹念に撒き散らしたシーツの上で、白い身体をずぶ濡れにし、彼女は物悲しげにおなかを撫でている。
「………おなか、からっぽになっちゃいました……」
 まだ、いくらか快感の余韻があるのだろう。どこかとろん、と蕩けた表情で時々小さく背筋を震わせながらも、彼女は目じりに涙を滲ませ、小さくつぶやく。
 歳相応の幼い身体を取り戻した少女は、長い長い排泄の衝撃と解放感、そして疼くような痛みに弱々しく身体を痙攣させていた。今もなお感じている鈍く甘い幸福感と、どこか身体の奥が抜け落ちたような虚脱感。
 それが、女性の1割も経験することの叶わない本当の性的絶頂の余韻だと、少女本人は恐らく知らないままに。
「頑張ったね……」
「はい……」
 そっと少女の身体を抱き寄せる。あまりにも激しい少女の排泄によって、もうお互いにずぶ濡れではあるものの、そんなものを気にすることはしない。最後の決壊の瞬間という、あまりにも神秘的で感動的な一瞬に揃って立ち合った二人だ。いまさら触れ合うことを嫌がる訳もないのだ。
 おなかの中の熱量をごっそりと失って、彼女の印象は酷く華奢でほっそりとしたものになっていた。肉付きも薄く、発育もあまりよろしくない小さな胸が、それでもほんのりと柔らかく私のおなかに触れる。
 色気とはほとんど無縁の幼児体系ではあったけれど、月壬月辰でおなかを膨らませていた時とのギャップは、かえってその魅力を引き立たせているようにも思えた。
「……ごめんなさい、…っく…なんだか、わ、分からないんですけど……っ ぐすっ」
「ん」
 よしよし、とぐずりだした少女の髪を撫でてやる。
 つまらない言い方をすれば、所詮、月壬月辰は排泄器官を擬似的な生殖器に見たて、妊娠の真似をするだけのものだ。いまの出来事だって、客観的に見ればただ少女がオシッコを我慢できなくなってオモラシしてしまった、それだけのことに過ぎない。
 けれど、たとえほんの一週間という短かな期間であっても、おなかを膨らませて自分と共にあったものが身体から抜け落ちることは――どうしようもないほどに大きな喪失感に繋がるのだ。
 これも、生命を宿しはぐくみ育てる女性ならではの感情なのかもしれない。想像妊娠なんて言葉があるように、私も、たぶん彼女も。その相手となる男性――異性のパートナーを忌避したまま、心のどこかで自分の遺伝子を繋ぐ生命をおなかのなかに宿すことに憧れているのだろうか。
 だとしたら、酷く歪んだ想像だ。あまり楽しい推論ではなかったので、私は首を振ってその思考を頭の中から追いだした。
「お姉さん――は、しないんですか?」
 いつの間にか、少女は私のおなかに手を沿えている。
 彼女ほどには及ばなくても、やっぱりその内側に抽出されたおしっこを蓄え、たっぷりとまあるく膨らんだ私のおなかを撫で、少女はどこか蕩けた色っぽい表情をあらわにしていた。
 困ったものだ。まだ2日目なのに――少女は、今度は私にその“最期”を見せろとねだっている。
「見たいの?」
「………っ」
 はっきりと聞いてみると、びくり、と身体を硬直させ――それでもごまかすことなく、少女は頷いたのだった。
「えっち、だねぇ」
「……うぅっ」
 そう言えば――
 こんなにも濃密な時間を一緒に過ごしておきながら、まだ名前も聞いていなかった。そのことに思い当たり、私は小さく舌を出して、告げる。
「見たいなら、まずは――お友達からはじめようか。また明日、一緒に遊んであげるから、それまで我慢。いい?」
「……は、はいっ」
「さて、じゃあ遅ればせながら、私はね……」
 ずぶ濡れのベッドの上、溢れるほどの雫に身体全体を浸し、私は自己紹介をはじめることにした。
(初出:書き下ろし)

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