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お姉さまと一緒のお話。

「夢みたいです……お姉さまの別荘にお招きいただけるなんて……」「ふふ。有難う、結衣。……お食事はお気に召したかしら?」「はいっ……とっても、美味しかったです……」 お姉さまとふたりきりで夜をすごせるなんて、それだけでももう死んでしまっても構...
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遠い異国でのお話。

「あ、あのっ……すいませんっ」「■@■*$×●?」「っ、……そ、その、お、お手洗い……どこにありますかっ……?」「*#▼@&、%■&#!」「ぁ、ぁあぅっ……くうぅうっ……」 東欧のとある小国。中世の趣を残す風光明媚な往来で腰をクネらせ、こつ...
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電話ボックスを巡るお話。

「ぁぅうっ……出ちゃううっ」 少女の眉が切なげによじられ、唇がきつくかみしめられる。 ニーソックスに包まれた足がひょこんと跳ねるたびに、野次馬たちのざわめきが高まった。 電話ボックスに閉じ込められ、衆人環視の中迫りくる尿意と必死に戦う少女。...
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魔法学校のお話。

くす。部屋をうろうろ、もじもじそわそわ、エリザちゃんの足は小刻みに震えて落ち着きがない。いつもはさっそうと箒を乗りこなす脚も、いまはせわしなくステップを踏み続ける。 だんだん『おしっこなんてしたくないですっ』って態度が辛くなってきたみたい。...
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全校放送のお話。

「ねえ、まだやってるの? 今日の放送、坂崎さんの番でしょ?」「あ、は、はいっ……」 同じ放送委員の加奈が、口を尖らせて理穂を睨んだ。黒板いっぱいに書かれていた板書をやっと写し終えると、理穂は慌てて席を立つ。もうすっかり給食の準備は終わってお...
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犬と飼い主のお話。

遠く、チャイムの音が聞こえてくる。 ゆるやかに傾いたお日様が窓から差し込み、少し湿った風が吹き込んで机の上で開きっぱなしの算数のノートをぱらぱらとめくった。 リビングからは5時のニュースを読み上げるアナウンサーの声。 鬱陶しい空が久しぶりに...
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イジメのお話。(full.ver)

「はぁっ、はぁっ……」 放課後のチャイムが鳴り響く夕暮れの校舎。午後5時の廊下を、高坂エリは足早に進む。 荒い息、赤い顔。上気した頬の上でメガネが揺れる。彼女の足取りはおぼつかないままで、その右手はおなかにぴったりと添えられている。小刻みに...
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ジョギングのお話。

「……っ、と、終わりーっ」 目標としているサイクリングロードの三周目。たん、と最後の一歩を刻んで、理沙は公園入り口の石畳の上に立った。ゆっくりと両足を曲げ伸ばし、整理運動を開始する。 田辺理沙。中学二年、14歳。 どことなく猫を思わせるショ...
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デパートを巡るお話。

「もう、早くしなさいっ」「あ、ま、待ってぇっ……」 舞子おばさんに手を引かれて、香苗は必死の声を上げる。 香苗の母よりも4歳年上の姉で、いまだ独身である舞子は少し潔癖症なところがあり、周囲にもそれを強制する事が多い。そのため、親戚一同を含め...
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プールを巡るお話。

燦々と日の照らすプールサイド。まだ少し肌寒い風は残るが、プール開きとしては絶好の日和である。けれどその中でたった一人、須崎未果は楽しげにはしゃぐ6年3組34人から離れ、ひとりプールサイドに座って体を小刻みに震わせていた。 調子が悪くて見学し...